旅の続きで、またいつか
みさきさんに感想を送る
「……ったく、今日もあっついよなぁー……そう思わないか?グラエナ」
「グルルル……」
俺はモンスターボールから出して一緒に歩いているグラエナに話し掛けながら、歩いていた。
俺はユウキ。ポケモントレーナー。トレーナー暦は……今年で1年だろうか?
隣を歩いているグラエナも含めて、手持ちのポケモンはバトルの実績もあり、三ヶ月前にはホウエンリーグのチャンピオンを破って、優勝したばかりだ。
でも、まだまだこの地方には知らないポケモンやトレーナーが沢山いる。
俺は1度故郷のミシロタウンに戻った後、再び旅に出て、現在キンセツシティからヒマワキシティまでの道のりを歩いているところだ。
……と、俺はぴたりと足を止めた。前方に、見覚えのある人影を二つ見つけた。
二人とも、俺の同期のトレーナーだった。
「おーい!ハルカ!ミナミー!」
「……あ!!!ユウキ!ハルカ、ユウキが来たぞ!!!」
「あ、ホントだ。久しぶりー!」
……ここで二人の説明。
ハルカは、親父さんがトウカシティでジムリーダーをやってる奴。そのせいか、バトルの腕っ節もなかなかのもんなんだけど、残念な事に手持ちは外見重視で、タイプの被ったポケモンを持っていることもしばしばだったりする。
ちなみに極度の方向オンチだ。
ミナミは、ポケモンの知識が豊富で、バトルさせたら無敵。俺より5ヶ月も前にポケモンリーグを制覇している。
外見は長い黒髪をポニーテールにしてる、いかにも女の子な奴だけど、口調は男っぽい。
……そしてここが重要。
実は、俺はミナミが好きだ(告白)。
「ほんっと久しぶりだなー!あたしが実家に帰ってから会ってなかったから……一ヶ月ぶりか?」
「あ、ああ。そうだろうな。ポケモン、強くなったか?」
「もちろん。な、ライチュウ」
「ライッ!」
ミナミの肩にのっているライチュウが当然というように、自分の胸をぽんと叩いた。
「そういうユウキは、強くなったのか?」
「当然。その証拠、見てみるか?」
俺の挑発的な言い方で気配を察したらしく、グラエナがフーッと息を荒げる。
ミナミのライチュウも、肩から飛び降りて負けじと頬の電気袋から火花を散らしている。
「……決まりだな」
そう言うと、ミナミは俺から距離をとり、戦闘態勢に入った。
「行け!ライチュウ!!!」
「グラエナ!返り打ちだ!!!」
こうして、俺とミナミのポケモンバトルが始まった。
―――その日の夜、俺とミナミとハルカは森で野宿することになった。
ミナミとのバトルは俺の惨敗。一ヶ月前にようやく互角の戦いを繰り広げることができたんだけど、やっぱりミナミとしばらく逢ってなかったせいで気が抜けてたみたいだ。
ハルカがお先にと言って寝てしまった後、俺とミナミは焚き火をしながら思い出話をしていた。
「一年前だっけ?あたし達がミシロタウンから旅立ったの」
「そうなんだよなー。確かその時から強かったよな、ミナミ」
「そうだったっけ?」
「殺人的だったぞ」
俺が心底恐ろしげに言うと、ミナミはクスクスと笑った。
「あっという間だったよなー。ユウキももう、ポケモンリーグ制覇だし、ハルカはポケモンコンテストの覇者だしな……」
ミナミの言葉に、俺ははっとした。
そう、俺達はトレーナーとなって、ポケモンリーグを制覇した。ハルカは、もともとの目標だったコンテストで、多くの成績を残した。
俺達が今旅をしているのは、ポケモンの研究者である父さんに頼まれた、ポケモン図鑑の完成のためだ。
でももしも―――本当にもしもなんだけど―――その役割も終えてしまったら。
そうしたら、旅に出る意味が無くなってしまう。
その時、俺はどうしたらいいんだろう―――……
「……なあ、ミナミ」
「何?」
俺は、ミナミに聞いた。
「もしも―――旅に出る理由が無くなったら、どうしたらいいかって考えたこと……あるか?」
ミナミは一瞬驚いた顔をして、それから聞いた。
「ユウキは、考えたことあるのか?」
「俺達、ポケモンリーグや、コンテストで、自分達の夢を叶えたよな?今、俺達が旅をしているのは、ポケモン図鑑の完成のため。でも、もしその理由も失ったら―――……」
怖い。
今までのように、当たり前だった旅ができなくなるのが。
ただ、意味もなく歩き続けることになるのが。
何かを追いかける、そんな旅ができなくなるのが。
すると、ミナミはふうとため息をついて言った。
「バーカ」
「なっ!?バカって何だよ!!!」
「バカはバカだ。ユウキは大バカだよ」
バカと連呼されまくって、俺は言葉を失ってしまう。
「旅の理由なんか、無くなるもんか。お前、何か勘違いしてない?ポケモンが居るのは、この地方だけじゃないでしょーが」
ミナミはさらに続ける。
「この世界中、いろんなとこにポケモンは居る。ポケモンが居るところには、ポケモンと共存する人間がいる。そん中には、今まで会った中の誰よりも強いトレーナーが居るかもしれないんだぞ?」
「今までの……誰よりも……」
俺の声に、ミナミはふっと笑って言った。
「こんなちっこい地方に、夢縛られててどうすんの。お前の夢は『世界一のポケモンマスター』なんでしょ?」
俺は「あ……」と声を出していた。
そうだった。俺の夢。
俺が見失ってた夢を、こいつはちゃんと覚えてたんだ。
すると、ミナミは星空を見上げながら言った。
「あたし、シンオウ地方に行くつもりなんだ」
……え?
「し、シンオウ地方!?って……あの……」
「そう。あの。マスキッパって言う可愛いポケモンの居る所」
「は?」
マスキッパって……あの?(あれって可愛いのか……?;)
まあ人の好みによるとは思うが。
「いや、そうじゃなくて……シンオウ地方って、遠いだろ?」
「ああ。それに、シンオウのリーグ制覇したら帰りにカントーやジョウトにも寄ろうかなって思ってる」
「それじゃあ……」
『もう逢えないのか』
そう聞こうとした俺の言葉を、ミナミは遮った。
「だーいじょうぶだって。たまにはホウエン地方にも帰ってくるし。それに、お前もいずれは行くんだろ?他の地方」
「あ、ああ……」
「じゃ、また逢える。それは間違いないな」
ミナミはそう言って笑った。
そんな笑顔を見ていると、俺の不安は吹き飛んでいた。
その翌日、俺が目を覚ました時、そこにミナミの姿はなかった。
ただ一つ、ミナミが居た証は、俺のリュックの上に置いてあったアイツの置手紙。
「おはよーユウキ……あれ?ミナミは?」
後から目を覚ましてきたハルカは、俺にミナミの居る場所を問う。
俺は答えた。
「アイツは旅に出たんだよ。夢を追う、旅の続きに―――……」
そう言って、俺はアイツの残した手紙から、手を放した。
ミナミの手紙が、空に舞う。
『シンオウリーグで逢おうな ミナミ』
「ああ、もちろん」
手紙が消えた青空を見上げると緑色の巨体を持つポケモンが、
視界を横切っていくのが見えた―――……
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