あなたの砂時計
シフォンさんに感想を送る
砂漠。
風が吹くたび砂が舞い、暑い太陽が体力を奪う。
「ゼェ、ゼェ・・。」
広い砂漠をぽつんと一匹、誰かが歩いている。
ボロボロのマントは風でなびき、汗を流して息を切らせて。
よく見るとラッタのようだ。
時にとまっては水とうの水を飲み、再び歩き出す。
「なんだ?」
ラッタがふと前を向いてみると、黒い影が近づいてくる。
かなり大きく、羽がある。
羽ばたくたびに風が起こり砂が舞い上がる。
気がつくともう影は目の前にいた。
「どうしたんですか?こんな砂漠の中で。」
影はフライゴンだった。
「故郷をこわされて、旅に出ているんです。」
「なぜこんな場所にまで?」
「ゴールが無いんです。だからここにいるんです。」
「そうですか・・。なぜ故郷を壊されたのですか?」
ラッタは深いため息をつくと過去を話し出した。
前、ボクがコラッタだった頃は平和な森でした。
ですが ラッタになってしばらくたってから、よそ者が突然
森にやってきて、森のリーダーを傷つけたんです。
怒った森の者たちはよそ者に向かっていきました。
しかし、よそ者が強すぎたあまりにみんなやられてしまい、
森を破壊してよそ者たちは去っていきました。
ボクはそうして故郷を失い、
とどまれる場所も無く旅をしているんです。
「悲しい事件だったんですね。」
しばらく間を空けてフライゴンが口を開いた
「こわかったです。木は折られ炎が燃え上がり、仲間はボロボロ。」
「あなたは大丈夫だったんですか?」
寂しそうにラッタは答えた。
「怖くて隠れていたんです。戦う力もなく見るしかなかった・・。」
「悔しかったでしょうね。」
「悔しくてたまりません。」
ラッタは笑っていたが、その奥には怒りと悲しみがあった。
時がたっても、時がたっている事が分からないほど悔やんでいた。
フライゴンは木の実を取り出して、ラッタにさしだして言う。
「ゴールがない理由、分かりました。」
フライゴンがさしだした木の実をもらってラッタは答えた。
「そうですか。あなたの故郷はここなんですか?」
話を変えて今度はラッタが聞いてみる。
「ここじゃなくて、もっと向こうの砂漠です。」
ラッタはさらに聞いた。
「あなたはなぜここに?」
「突然旅に出たくなったんですよ。」
フライゴンは微笑んだ。優しい顔だった。
ラッタは木の実を一口かじって感想。
「渋いし苦い。」
「ボクの故郷の木の実はどれもそうですよ。」
「・・。あなたの故郷には行きたくないですね。」
その言葉にフライゴンは苦笑する。
「言うと思いました。」
その後二人は歩き出した。二人とも何も言わずに。
砂漠は広くて、どこも同じ風景に見える。
だから進んでいるのか回っているのかもわからない。
でも足は二人とも前に進ませているつもりだ。
しばらくしてフライゴンがラッタに問いかける。
「あなたのところではどうやって時刻を知っていたのですか?」
「木の棒を地面に突き刺して1〜12の数字を地面に書いて、
影がある数字が今の時刻、と言うわけです。」
フライゴンはしばらく間をおき口を開いた。
「ボクのところでは砂時計を使いました。」
「でも今は何時かは分かりませんよ?」
「ボクのところは、何時かなんて分からなくてもいいんです。」
不思議に思ったラッタは問いかける。
「分からなくてもいい、と?」
「空を見上げて朝か昼か夜か、それだけ分かればよかったんです。
それに、」
「それに?」
「時に縛り付けられず、自分なりに暮らしています。
時は自分の心で刻むんですよ。」
ラッタは微笑む。
「時に縛り付けられない生活ですか。いいですね。」
「はい。ただ1分、流れる砂を見続けるんです。」
「そうですか。」
その後しばらく歩いてラッタは言った。
「ここでお別れです。」
「そうですか。できればずっと一緒にたかったんですがね。」
「進み続ければそのうち出会えますよ。かならず。」
「そうですね。」
そうして二人は別の方向に進んだ。
ラッタとの距離が開いてから、フライゴンがラッタに叫ぶ。
「時は捨てて、自分を信じて歩いてみてもいいんじゃないですかー!」
ラッタも答える。
「あなたも、自分を信じて進み続けてくださいねーー!!」
そうして二人は広い砂漠でわかれた。
今度はどんな人に出会えるだろう。
また会える日はいつだろう。
そんな気持ちを抱き、二人はひたすら歩き続けた。
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