この出会い・別れ、オー・ルヴォワール

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全ての物に命があり、存在する力がある。

見上げると、其処には白い月があり、

真下には、黒い世界がある。

黒と白。それは繋ぎ、そして矛盾。

私も、この世界の矛盾…それとも、繋ぎ…ですか?

この出会い・別れ、オー・ルヴォワール

 一匹の白い物の怪は、白く輝く月の下で、下界を見下ろしていた。下界は、いまだ明るく、時折、他種のポケモンと人間の声が明るく木霊していた。
 まぁ、自分は野生の身で、ましてや災いを呼ぶと呼ばれている存在だ。黒い皮膚を矛盾させるかのように繋げる白い毛。白い悪魔…そう呼ばれてもいた。
自分で望んだ訳でもない。ただ生まれ、命を持ち、存在しているだけ。ただそれだけだ…。
「でも、生きてるんでしょ?」
 不意に澄んだ声がした。
 白い物の怪は驚いたようで、また何かの好奇心があったのか、フイっと振り返った。自分がいる小さな崖の下に、これはまた小さな赤銅色の物の怪がいた。六つの尾を持ち、真っ直ぐなこげ茶色の瞳を持った、小さな小さな命が…。
「貴様は、誰だ?」
 白い物の怪が赤銅色の物の怪に問い掛けると、赤銅色の物の怪は、無邪気に笑った。
「私はロコンだよ。あなたは?」
「私は…アブソルという……物の怪だ。」
 そう躊躇いがちに白い物の怪――アブソルが言うと、ロコンはクスクス笑った。気に障ったのか、アブソルは眉間にしわを寄せた。
「何が可笑しい。」
 ロコンは澄んだ目を綺麗に細めた。
「だって、自分で物の怪なんていうんだもの。驚いた。」
「何故、驚く必要がある?私はポケモンや人間からも災いの物の怪と言われている。黒に矛盾する白。まさに物の怪ではないか。」
 そう言うとアブソルは、白銀の牙をロコンに向けた。深紅に輝く瞳をぎらつかせた。
 しかし、そんな威嚇にも動じず、ロコンはアブソルに近づいた。そこには、なんらかの威厳が込められていた。そう、まるで自分の心が見られているような…。
「でもね。あなたがどう世界に対抗しようと、あなたは存在している。生きている。月が何年も輝きを消さないのと同じ様に、あなたの命の輝きも、尽きるまで永遠に輝き続ける。死ぬ、その日まで…永遠に。」
 そう言うとロコンは漆黒の中、朧に輝く月を見上げた。
「あなたは生きていられる。矛盾があるから世界があり、また繋ぎがあるから私たちが存在する。小さい私たちが、この広大な世界で生きて行く。まるでそれは小さな旅。命が存在するから、私たちは出会い、別れていく。」
 ロコンは悲しげにそうアブソルに言った。
 アブソルはロコンを軽く見た後、同じ様に白い月を見上げた。
 照らされているのは自分。できるものは影。それもまた矛盾。でも、それがあるから自分は存在する、繋ぎ。
「では貴様は、私の存在も生きていて良いと言うのか?」
「ええ。だってあなたは、生きているんだもの。」

そう言って、ロコンの言葉も気配も消えた。

あるのは自分。そして月、影。

自分は存在している。だから、生きてていい。命尽きるまで。

ありがとう。ありがとう。きっと自分はその言葉が欲しかったんだ。
どう言われようと、存在を否定されても、ただ生きてていいと、言って欲しかった。
 そう思ったアブソルの頬には、綺麗な涙が伝った。
 月はただ、輝いていた。

 その翌日、アブソルは山の中を散歩していると、小さな鳥居を祠を見つけた。その祠に顔を覗かせると、丈夫な石でできたお稲荷様が置かれていた。
 そうか…あなたはここにずっといたのか。ずっと、世界を感じていたのか。
 その晩、アブソルはお稲荷様の隣で寝ようとした。今日も同じ、あの月が輝いていた。

小さな出会いに別れ。

世界の矛盾、そして繋ぎ。

存在している。
生きている。

小さな命を、今認めよう。
儚くとも、脆くとも。

オー・ルヴォワール―――

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