clear free〜不透明
すずしろさんに感想を送る
なんで負けるんだ?
トレーナー暦1日目。そんなあまあまのひよっこ、しかも女に。
いや、あれは運だ。だって、あそこで俺のキモリがひっかくを外したのが悪い。
そう、あいつに負けたのは運だ。
「ユウキく〜ん!」
大声でおいついてくる。俺に運勝ちしたハルカ。今さっき勝負して、やっぱりあいつは運勝ちしやがった。さっきだって俺のホエルコの最後の転がるが外れてなければ勝ったのに。どこまでも運がいいやつ。
「待ってよー!ねえ、どうして行っちゃうの!」
「うるさい!ついてくんな!なんでお前と一緒じゃなきゃいけねえんだよ!」
怒鳴ってしまった。ハルカの目が潤む。
「だって、だって・・・ユウキ君お友達だもん・・・。」
「はっ、友達?誰がいった?お前なんか友達じゃねえよ!」
言ってしまった。昔からこの怒ってる時に言い過ぎる性格には悩んでいたが、また出てしまった。ハルカはそのまま泣き出した。でも、度胸があるのか、はたまた迷惑知らずなだけか、それでも俺を友達だと言い張る。
「違うもん・・・ユウキ君は友達だもん・・・。引っ越してきて不安だったのにユウキ君がポケモン教えてくれて、私すっごく嬉しかったんだよ?」
「は?誰が教えたよ。とにかく俺についてくるんじゃねえ!」
「やだ!なんでユウキ君そうやって会ってもすぐにどっかいっちゃうの!?どうして?なんで?」
「近付くなよ!くんな!」
ハルカを突き飛ばした。やってしまった。
なんでハルカには負けたくないんだ?
その前になんでハルカは俺に懐いてるんだ?
ハルカ?ずっと運勝ちのやつなのに?
気付けば俺はハルカの手を引いてポケモンセンターに向かってる。一方のハルカといえば、さっきまで泣いてたのに、もう笑ってやがる。本当に理解ができない。
「えへへっ、ユウキ君と一緒〜。」
「はぁ?お前何考えてるんだよ。」
「一緒にいたいって思ってるよ。」
反射でまた悪態をつくところだった。ハルカの笑顔を見ていなければ。さっきよりも手を強くにぎってさらに早く歩いた。
「ほら早く行くぞ。」
俺はハルカの好きな人を知っている。
前に聞いた。
凄く強い人だと。
でも、それは俺じゃない。
いつか強くなれば、ハルカを振り向かせることができると思っていた。
違う。ハルカは強いことが好きなのじゃない。その人が持っている一部がたまたま強いということだけだった。
「うん。」
ハルカが俺のことを友達くらいにしか思ってないことも。
それ以下でもそれ以上でもないことも。
考えれば考えるほど、悔しくなってくる。
なんで俺はこんなにハルカに構うんだ?
「ポケモンセンターについたら俺は先に行くからな。」
いやだ、先になんて本当は行きたくない。
このまま道迷ったフリしてまだ歩くか。
なんで俺はこんなことしてるんだ。
「あ、あのね、ユウキ君、あのね、も、もうちょっといいかな?」
「なんだよ?」
「あのね・・・前にユウキ君に話したよね?好きな人がいるって。」
「言ってたな。」
「私、失恋しちゃた。その人にも、好きな人がいるんだって・・・。」
「で?」
「ユウキ君つめたい!バカ!」
「じゃあなんて言って欲しいんだ?」
「・・・大変だったね、とか辛かったね、とかいろいろあるでしょ!ユウキ君は好きな人いないからそんなことも解らないんだよ!」
「・・・好きな人は・・・いる。」
「え?」
「いるけど言わない。お前には絶対言うものか。」
「なんで?なんで私には教えてくれないの?みんな私には内緒で、他の人には言うの?」
ハルカの歩みが止まる。
「お前にだけ内緒ってわけじゃないだろ。言わないんじゃなくて言えないんだろ。」
そうだ。
俺は言わないんじゃない。言えない。
言えるわけがない。
言ったら世界が変わってしまう、そのことは目に見えてる。
今のように、ハルカが近付いてくることがなくなるだろう。
だから今のまま、言わないでおいた方がいい。
「嘘!誰だって内緒にして、私のことなんて・・・。」
「じゃあ、解らせてやろうか?」
何考えてるんだろ俺。
気付けばハルカを抱き締めてた。
ハルカだけなのか、女の子がそうなのか、凄いやわらかかった。
なんつーの、男がごつごつしすぎなのか?
「バカ!」
ハルカの反応はそれだけだった。正しいといえば正しい反応だった。好きでもない男にそんなことされて、ありがとうなんて言う女はいない。去って行くハルカの後ろ姿を見て、追い掛ける気にもならなかった。
俺のまわりには負のオーラが出ていたに違いない。ポケモンセンターの一角にいたが、俺からある一定の距離を誰もが取ろうとしていたのは解る。
これが世に言う失恋ってやつ。ついこの前までこんなことになるなんて思ってなかった。
そもそもハルカをそういう対象として知らず知らずに見ていたことが解らない。
負けるから・・・?
強くなればいいのか・・・?
俺は立ち上がる。こんなところにいても意味がない。
またあいつに、ハルカにあった時に今度は負けない。
運負けなどしない。
そのために。
「・・・ハルカ?」
「あ、あのユウキ君・・・さっきはごめんね。」
「別に・・・悪いのは俺だし。」
「でも、嬉しかったよ・・・。ありがとう。」
「そうか。」
「これからも、ずっとよろしくね。あ、でもそうするとユウキ君をずっと頼っちゃうなあ・・・。」
「俺は構わない。」
「そう?じゃあ、ユウキ君、一緒に行こうよ。」
「・・・俺に勝てたらな。」
「バトル?負けないよ!だって一緒に行きたいから!」
やっぱり俺って世界最大のバカかもしれない。本気が出せない。というより、ポケモン達が出さないようにしてるようにしか見えない。ポケモンに気を使ってもらってるなんて、俺ってまだまだ・・・いや、そうだから負けるのか。
「ね?いいよね?一緒にいっても。」
「ああ、別にハルカが俺の行くところに付き合うなら。」
「いいけど、ねえ、それと・・・。」
「なんだよ?」
「いいっ!やっぱりいわない!」
「なんだそれ。ないなら俺はもう行く。」
「あ、待ってユウキ!」
・・・はい?
俺呼び捨てにされてません?
「えへへ、私のこと呼び捨てにするから私もユウキって呼ぶからね!」
「いやそんなこと構わないんだが別に・・・。」
恋人みたいだ。
いやもう、違和感はたっぷりなんだけど、なんか嬉しかったような気がした。
「じゃあ行こうユウキ!ね?」
「行くか。」
俺はハルカに勝てない。
ハルカは俺を追いこしたくてしょうがないようだ。
それはポケモンにも伝わる。
あいつのポケモンは一生懸命、俺のポケモン達を倒そうとする。
それを全部運のせいにして、俺はハルカより弱いことを隠そうとしていた。
でもそれは違った。
俺はハルカに勝てっこない。
永遠に。
だから、こうして一緒にいられる。
もし、俺が勝てたら、終わるような気がした。
俺はハルカが好きだから。
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