[ネイティオの優雅かつ凄絶な一日]
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はじめまして。ネイティオと呼ばれている鳥です。
一応、女の子です。
私、ある冒険家の男の人と日々をすごしています。その人の『相方』として。
“あの人”との出会いはそれはそれは昔のこと。私がまだ人間を知らないころでした。
『大きい生き物ですね。危ないでしょうか? それとも?』
「ふむ? これはそこのネイティオの声か? 面妖な。しかし興味深い。
ちょうど仲間に逃げられて困っていたところだ。キサマ、我輩の相方になれ」
なまじ念力が使えたから、なまじテレパシーなんか使えたから。
・・・・・・気づいたときには私はあの人の『相方』となっていました。
[ネイティオの 優雅 かつ 凄絶な 一日]
朝。あの人の朝は日が上ると同時に始まります。
寝起きにはシェイクです。中々変わった趣味ですが・・・。
「起きろッ! それともキサマの脳はたかだか9時間眠った程度で寝ぼけるものなのか!? ならばこうしてくれる!!」
『おぉお起きますッ! 起きますッから揺らさないッでぇえぇえぇえぇ!!』
毎朝 上下に揺さぶられる私としては「変わった」程度の言葉では片付けられません。
運が良ければすぐに放してもらえますが、うっかりグッタリとしようものなら今度は・・・・・・あぁ、今日も・・・。
「朝焼けの空は清々しいぞ! 眠気覚ましに羽ばたいてみろッ! キサマも鳥であろう!!」
『ぅっひゃぁあああああぁ・・・ぁあああああぁぁぁ!!!』
確かに清々しいのですが、飛べないことも無いのですが、揺さぶられてぼやけた頭では重力に任せて落下するのが関の山です。落ちてもちゃんと受け止めてくれるのですが、頭がハッキリするまでのしばらくは空中遊泳です。
目が覚めたなら朝食です。しかし家というものを持たず、旅を続けるあの人の食事はなかなか手の込んだものとなってます。
昨日の晩に取った木の実ややわらかい草をとにかくすり潰して、ムリヤリ団子にして器で煮込んで、
「食え」
『お味のほうは・・・?』
「食えば判ろう」
美味しいときもあるんですが・・・いえ、美味しいことのほうが多いんですが、今回の団子も美味しかったんですが・・・、時々 毒が混じっていて身体が痺れることがあるんですよね・・・。
毎朝、こんなことが続くんですよね・・・・・・ハァ。
こんな人の相方でいるなんておかしいと思う方もいることでしょう。ですが私も私であの人に興味があるんです。
私、ネイティオと呼ばれるようになってから自分の未来や誰かの未来が見えるようになりました。せいぜいで1分先を理解する程度ですが、それでもズバリと的中するんです。
驚きましたよ。見知った相手も見知らぬ相手も関係なく、その後どうなるかが判ったんですから。
・・・・・・しかしどうでしょう。“あの人”と出会ってから自分の未来がまるで見えなくなったんです。この未来予知、なぜかあの人が関係すると途端に未来が見えなくなるんです。
あの人の一挙一動は予測不能。おかげで毎日がドキドキです。
前にも言いましたがあの人の職業は冒険家です。冒険とは危険と紙一重なことです。ですから、相方との意思疎通はとても重要なことなんですが・・・。
『マスター』
「“主殿”と呼べ」
『え・・・?』
「“マスター”ではない。我輩のことは“主殿”と呼ぶんだ」
『あ、主殿・・・』
「何事か?」
『お昼なんですが』
「うむ、日も高いな。それだけか?」
『お腹すいたんですが・・・』
「良かったな! 近くに川があるぞ!」
『あの・・・?』
「食べるものは川にある。取りに行くぞ」
『あー・・・・・・』
「キサマも鳥ならば魚の一匹ぐらい己で捕まえて来いッ!!」
『あ・・・―――っわあああああああ!!』
こうして川に投げ込まれ、その時は大量の水を飲んでお腹いっぱいになりました・・・。
あの人の考えていることはまったく理解できないんです。こんな調子だったらいつか命を落としてしまいます。幸か不幸か、その日を予知することはできませんけど。
もちろん、冒険を続けていれば危険な生き物と遭遇することもあります。
ついこの間も岩のように硬い皮膚と螺旋状の角を持つ、サイドンと呼ばれる生き物と遭遇しました。
大きさも力も違いすぎます。どこかでやり過ごすべきです。
そんなときにあの人は、いつも背負っている大金槌を手に持って、
「残せば危険の種となる。今、ここで出会ったのを好機と見、撃退することにした!
行くぞ! 無手勝流の金槌捌きをとくと見よ!!」
あぁあ。この人はなんと命知らずなんでしょうか。
その金槌は杭を打ったり硬いものを砕くためにあるんですよ。間違った使い方をすると保障してもらえないんですよ。それに『無手勝流』ってつまり『我流』ってことじゃないですか。それで大丈夫なわけ無いでしょう。
「ぐォッ!?」
案の定、相手の足に一撃与えましたが腕によって弾き飛ばされてしまいました。
『主殿、やはりここは逃げるべきですよ』
「引かぬ! 媚びぬ! 負けはせぬ! ここで逃げては『七転び八起き』の二つ名が廃る!」
負けっぱなしってことですね、その二つ名。
「キサマも念力が使えるなら、我輩の相方なら少しは立ち向かう勇気を見せてみろ!! キサマも男であったよな!?」
女の子なんですが・・・。
言って聞く相手ではありません。今もサイドンに突撃してますし。あぁもう、ここまで宣戦布告したら私も戦うしかないじゃないですか。
念力を使ってイロイロ操って、サイドンがひるんだところをあの人が殴る。そんな戦い方でなんとか撃退することができました。
『ホントにもう・・・、主殿ったら無茶しすぎるんですから・・・』
「生きて立っていられるのだから良いではないか! しかし疲れたな。今日はここで寝るぞ」
ここはサイドンとの戦いですっかり土地が荒れてしまっているんですが・・・。
「では夕食の用意だ! 探すぞ!」
『あぁあ、また行き当たりばったりな・・・』
その日の終わりはドロドロに汚れたまま木の根元で眠りこけるあの人を見つけて、呆れてロクに物も食べずにその場で眠ってしまいました。
1日の終わりは度々こんな風に終わります。
あの人の1日は日没と共に終わるんです。ですから日が落ちるまでに夕食をとらないと本当にそのまま眠ってしまうんです。夕食を食べたばかりだというのに、火の始末もロクにせずに寝てしまうこともありました。
私はそこまですばやく寝ることはできません。ですから薄暗い中であの人の無防備な寝顔を眺めながら、いつも物思いにふけるんです。
私が傷ついたり病にかかったときは直るまで私を抱えて歩いてくれる。
入手した食べ物は一人で食べきらず、必ず私の分も残してくれる。
なんだかんだで本当に危ないときは私の盾になってくれる。
私のあの人・・・主殿は、荒っぽいけど、何を考えているのか判らないけど、未来が予知できないけど、悪い人じゃないんですよね。
面白い人なんです。興味深い人なんです。
だから私も、この人から逃げ出さないで傍にいるんです。
私は鳥ですからあくまで信頼関係の域を出ませんが、これだけは言えます。
『一緒にいるといつもすっごぉ〜く疲れますけど、私、なかなか楽しんでいるんですよ。
だから・・・、これからも傍にいさせてくださいね。
ダイスキな、私のアルジドノ』
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