海と藍色の珠

すずしろさんに感想を送る

「ポケモン達は取りかえすから。俺が見つけるから、心配すんな。」
マグマ団のあの装置、ポケモンを奪う装置。あっという間に奪われ、ハルカが倒れる。偶然にユウキが通りかからなければ・・・。直後こそ錯乱状態だったのに、今では大分回復し、座れるくらいになってきた。もう少しすれば、日常生活に支障はない。
「うん・・・無理しないで。別にいいから。」
何か違う。おかしい。具体的にあげろといわれても分からない。ただ、ハルカがおかしい、としか。ユウキの知っているハルカは違う。
「ハルカ?」
「なに?」
「どうしたんだ?・・・お前らしくない。」
「・・・放っといて。私なんてどうだっていいじゃない。」
その言葉にユウキの中で何かがキレた。ハルカの襟刳りを掴むとそのまま床に押し倒す。胸にユウキの体重が乗る。
「お前ふざけるのもいい加減にしろ。なんでそんな弱気なんだ。お前がお前じゃない。俺の知ってるハルカは逆境でも諦めない強いやつだ。絶対に悲観しねー。なのに今のお前はなんだ。悲観して、自分だけが辛いわけじゃねえ。お前のことが心配なのは俺も、ミツルも一緒なんだよ。何の為にミツルが病気押さえてマグマ団の追撃をかわしてくれたと思ってる。
 お前が勝手に独りだと思うのは勝手だ。だけどな、まわりにお前を思ってるやつがいるのに、それを無視して引きこもって、自分勝手も大概にしろ!」
視線が定まらない。
「・・・ごめん、ちょっと言い過ぎた。」
ユウキは手を放した。気まずそうに立ち上がる。その足をハルカの手が掴んだ。
「・・・行かないで。怒鳴っても怒ってもいいから・・・一人にしないで。」
手は震えてる。いつものような、明るさと強さは無い。しゃがむとその手を握る。
「今のお前に何するか分からん。」
「・・・バカ。ユウキはいつもそうやって、私を抱こうとしてくれない。なんで、抱いてくれないの?私に、魅力がないの?ねえ、なんで!?」
「なんとでも言え。お前こそ俺に近付かないくせに。」
「え?」
「お前の方こそダイゴのがいいんだろ!ダイゴのほうが・・・。」
「かっこいいから?」
「そうだろ。だから・・・」
「ユウキは、ダイゴさんにないものいっぱい持ってる。本音で叱ってくれるのも、ユウキだけなんだよ?だからユウキのこと、一度も・・・。」
「ああ、もういい!」
目をそらす。これ以上、ハルカを見ていることができない。体が震えた。押さえることができない。
「・・・ごめんね。寂しい思いしてたの・・・気付かなくて。」
ゆっくりとハルカの体温が伝わる。その力がないことが悲しかった。力強くいつもなら飛びついてくるのに。
「・・・お願いだから私を抱き締めて。独りにしないで。」
「・・・お前分かって言ってるのか?」
「うん。」
「・・・俺を落とすなって・・・。」
その意味を聞くことが無駄だった。一秒でも我慢できない。フェアじゃないと思う。ハルカはユウキに全てに任せると言った。その時、親から離れられない子どものように素直になる。ユウキに甘え、離れず、抱き締めあう。その視線、仕草、声、全てが欲しい。時間を追うごとにそれは激しくなる。
「もっと、欲しいか?」
「え?」
「物足りなそうな顔してる。何が欲しい?」
「・・・ユウキが、欲しい。もう待たせないで。焦らさないで。私を置いていかないでよ・・・。」
「置いてくものか。どうしておいていくんだよ。俺は連れていく」
震える手と手がからみ合う。閉じた目を見つめ、唇に触れる。くると思っていなかったから、思わずハルカはユウキを見つめる。
「俺を見て。ハルカはいつも俺を見てくれてない。俺が嫌いか?」
「そんなことない。」
「じゃあ俺を受け止めてくれ。全部。」
さらに深く抱き合う。苦しいほどに。二人の距離は縮まっていく。なぜそこまで許しあう関係なのに、これほどまでに苦しいのだろう。分からなかった。ただ気持ちいいから、とか、やりたいから、という関係じゃないからなのか。違う。お互いにそれ以上のものを求めてる。これだけじゃいくら重ねても足りない。何が足りないのかは分からない。

「ハルカ大丈夫そうだな。」
茶色の髪を撫でる。まだ足りないようなそんな顔をして。
「なんなら、もう一発やるか?」
「ユウキが・・・それでいいなら。」
「そうしたらやること決まるぞ。」
「・・・うん。」

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