二人の想い 繋がる想い
ポケマニ(1175)さんに感想を送る
ホウエンリーグでの戦いを終えてサトシ・ハルカ・タケシ・マサトの4人とピカチュウはサトシの故郷マサラタウンに帰ってきた。
サトシとピカチュウは他の3人を置いてけぼりにして町の中を駆けていく。
「おーい、サトシ。待てよー。」
タケシの注意も聞かずにサトシは駆けていき家に到着した。外で玄関先を掃除していたバリヤードを見つけて声をかける。
「バリヤード久しぶり。ママは中かい?」
「バリバーリ。」
うなずくバリヤードを見てサトシとピカチュウは玄関を開ける。
「ママ、ただいまー。・・・ってあれ?この靴は確か・・・」
そう、そこにあった一組の靴はあまりに見覚えがある物だった。サトシがその人物の名前を出す間もなくハナコと靴の主が声を上げる。
「あーら、お帰り、サトシ。ピカチュウも相変わらず元気そうねぇー。」
「お帰りー、サトシ。」
キッチンから顔を出したのはサトシの母親ハナコと・・・
「カスミ!?こっち来ているってメールにも書いて無かったじゃん。」
「少し前からサトシのママさんにお料理教えてもらっているのよ。サトシには秘密でねー。」
そう言ってカスミはいたずらっぽく笑った。そうこうしている内に遅れていたタケシ、ハルカ、マサト到着した。タケシはハナコを見た瞬間、例の悪癖を出す。
「おぉ〜。ハナコさん。又貴方に逢えて光栄です。自分とお茶でも・・・イテテテテ。」
「はいはい、又後でねぇー。」
「うーん。相変わらずの早さだね。」
「やっぱりカスミってすごいかも・・・。」
そう、皆さんにはおなじみマサトとハルカも舌を巻くカスミの耳つかみ引っぺがし(仮)がタケシに炸裂したのだ。
「さあさあ、皆さん上がって。ちょうどお昼時だからご飯にしましょう。来るのはわかっていたからご飯はたっぷりありますよー。」
「・・・。これカスミが作ったの・・・?」
サトシとタケシは出てきた料理にしばし絶句する。出てきたそれは・・・ご飯に緑と言うより黒いソースをかけたものだった。
「そうよ、何か悪い?一応これでも前より腕を上げたつもりなんだけど?」
半ばむくれたようにカスミが答える。前にカスミの料理を食べたことがあるサトシとタケシは言わずもがな、ハルカとマサトまでしりごみしている。皆が席に着きハナコはためらいも無くその料理を食べていた。それに釣られ、他の4人も恐る恐るその料理を口にする。
「・・・!?美味しい!これってカレーだったの?」
意外な美味しさに声を上げるサトシにカスミが自慢げに答える。
「そうよ、印度にあるほうれん草を入れたカレーよ。レシピ見て作ったんだからまずいわけないでしょうが。他にもママさんからいろいろ教わったんだから。」
楽しい昼飯の時間が終わりサトシ達は皆でオーキド博士のところに向かった。
「博士ー。居ますかー?」
「やあ、サトシくん達か。久しぶり。博士はジョウト地方にラジオの収録に行っていて居ないよ。今日はぼくがお留守番なんだ。預けている皆を見に来たんだよね?外にいるから案内するよ。」
そう言って出てきたのはケンジだった。
「ケンジも元気そうだね。博士の手伝い頑張ってる?」
「うん、博士の手伝いにスケッチに頑張っているよ。ただ博士はどうもポケモンに接すると決まって怪我しちゃうんだけどね。」
皆を連れて外に出たケンジが口笛を吹いた。っと、彼方草原の向こうからものすごい土煙とともにケンタロスの群れが走ってきた。遅れてフシギダネ、キングラー、ベトベトン、ワニノコ、ヒノアラシ、ベイリーフが走って来て・・・、抱きつき癖のあるベトベトンとベイリーフがサトシにのしかかってきた。
「皆、久しぶり。って、わぁー、皆重いからやめろよぉ・・・。」
「ったく、大丈夫?サトシ。」
押しつぶされかかったサトシの腕をつかんでカスミが無理やり助けだした。
「あ・・・ありがとう。カスミ。」
少し顔を赤らめながらサトシがカスミにお礼を言った。カスミの方はなぜか答えずにそっぽを向いた。サトシはやれやれといった感じだったが他のポケモンに向かって声を上げる。
「おーい、皆ー。こいつらが俺たちの新しい仲間だぜ。」
そう言ってサトシが投げたボールからジュカイン・コータス・オオスバメ・シザリガーが出てきた。
「じゃあ私も。」
「俺もだな。」
そう言ってタケシやハルカも次々とポケモンを出した。そこでカスミが突っ込みを入れる。
「あれ?タケシ、水ポケばっかりだけど。」
「気にするなよ。ブリーダーとしてはどのポケモンも関係ないだろう?」
「まあ確かにそうだけどね。」
皆が皆新しい仲間と和気藹々と触れ合っていたがそれを破るように遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
『・・・火事!?』
「煙が上がっている!あの方向は家が密集しているところだ!皆行くぞ!」
サトシが言ったとおり火事の現場は家が密集していてマサラタウンの自警団の水ポケだけでは足りなかった。火の勢いは強まるばかりだ。そこにサトシ達が到着した。
「ワニノコ、君に決めた!」
「ニョロトノ、ヒトデマン、お願い!」
「ミズゴロウ、ハスボー、頼むぞ!」
「マリル、行ってくれ!」
『みずでっぽう!!』
4人の掛け声とともにポケモン達からいっせいに水が放出された。ハスボーだけチョロチョロとしか出していなかったが。だんだん火の勢いは弱まってきたがまだ家は燃えている。っと、家が耐え切れずに倒壊を始め、よりによってハスボーの方に崩れてきた!!とっさにタケシが叫ぶ。
「ハスボー!危ない!!」
っが、タケシの声と崩落に気づいたハスボーはあわててものすごい勢いの水鉄砲を放出した!!
「・・・すごい水鉄砲ね。タケシのハスボー。」
カスミが半ば呆れたように言った。
「ははは、のんびり屋だもんなぁ。こいつは。」
火事は鎮火したが結局家は全焼してしまった。黒焦げてひしゃげてしまった自転車や使い物にならなくなった冷蔵庫が運び出されていった。サトシ達も自警団の人達に混じってあと片付けを手伝った。後片付けが終った頃には夕暮れ時になってしまっていた。
「はあ、結局かなり時間かかっちゃったなぁ。俺の家でご飯にしようか。」
『賛せーい。』
夕飯はハナコが作ったグレン風火山ハンバーグとご飯、味噌汁だった。
「・・・でさ。あの時はどうなるかと思ったよ。」
「・・・サトシ。」
食事の最中珍しく食事が進んでいないカスミが突然思いつめたような表情で声をかけてきた。
「どうした?カスミ。・・・具合、悪いのか?」
さすがに心配そうになってサトシが答える。食事が進んでいないカスミをサトシはあまり見たことがなかった。
「ううん、なんでもない。・・・気にしないで。」
「そうか。」
安心したサトシは食事に戻った。だが相変わらずカスミは思いつめた表情だった。
サトシの家はマサラタウンで一軒しかない宿屋兼食堂だった。田舎町という場所柄部屋の数には余裕があり、皆を泊めるには事欠かなかった。ポケモンセンターが無いというのも理由に入っていたが。
皆が寝付いた頃ある部屋で一つ動く影があった。カスミだ。一人でそっと部屋を出て行く。同じ頃サトシは不思議な夢を見ていた。
(・・・サトシ・・・。・・・サトシ・・・。)
真っ暗な中に一人取り残されどこからともなく自分を呼ぶ声が聞こえてくる、しかも声はだんだん小さくなっていく、そんな夢だった。
「・・・カスミ!!」
そう、その声はカスミの声だった。っが、肝心のカスミは・・・
「・・・居ない!?どこに行ったんだ!?」
ピカチュウがその声に目を覚ます。そして微かに家のドアが閉まる音が聞こえてきた。サトシは部屋の窓を急いで開けた。とたんに夜の冷気が部屋に吹き込んでくる。空には雲ひとつ無く満月のみがこうこうと輝いていた。その下をサトシの家から影が一つ走り出て駆けていった。カスミのようだ。
「行くぞ、ピカチュウ。皆を起こさないように気をつけてな。」
サトシは着替えて上着をはおり、もう一枚上着を持ってカスミの後を追った。ピカチュウもついてくる。予備の上着はカスミのためのものだった。この気温ではどうやらいつもの格好で出て行ったカスミの服装では明らかに寒すぎた。だが、サトシにはカスミがこの時間に何のために、そしてどこに行ったのか、まるで見当がつかなかった。手当たり次第に探すしかない。マサラタウンは小さな田舎町だ。カスミが居そうなところは数えるほどしかなかった。町の中心部の広場、コンビニ、小さな公園と回ってみたがどこにも姿が無い。何か、重要なところを見落としている、カスミが見つからないたびにサトシはそんな気がしてならなかった。
「ピカチュウ、お前にもどこか心当たりは無いか?」
「ピーカー。」
ピカチュウは首を横に振った。
「無いか・・・。参ったなぁ。あいつどこに行っちゃったんだろう。・・・!」
何気なく辺りを見回したサトシの目にある物が入った。公園脇にあるゴミ捨て場。その中にある、夕方の火事で壊れてしまった自転車が。とたんにサトシの脳裏にある光景が思い浮かび、それは確信に変わった。
「行くぞ!ピカチュウ!」
ピカチュウにも見当がついたらしい。サトシとピカチュウはマサラタウン郊外に向かった。カスミとの出会いの場所、ナモナシ湖へと。
マサラタウン郊外のとある湖のほとり。一人の少女が座ったまま泣き崩れていた。カスミだった。いつもは気丈で、苦手な虫に囲まれた時でもここまで泣いたことが無かった。だが、彼女は今いままでに無いほど泣き崩れていた。サトシが息を切らして走って来たのにも気づかないほどに。
「ハァ、ハァ。・・・ここに居たのか。結構探したんだぞ。」
「サ、サトシ!?な、何でこんなところにいるのよ?」
「・・・泣いていたのか?」
慌てて涙をふき取るカスミ。顔を真っ赤にしながら答える。
「な、泣いてないわよ。」
「どう見たって泣いてるよ。ほら、上着持ってきたから。風邪ひくぞ。」
「あ、ありがとう。」
サトシが横に座り、カスミが上着を着た。二人はしばらく湖を見ていたが、カスミがサトシに声をかけた。
「サトシ。一つ聞いていい?」
「何だよ?」
「どうして私が居ないって気づいたの?」
「夢でさ。カスミが俺を呼んでいるっていう夢があってさ。目が覚めたらカスミが居なくって、窓から外を見たらカスミが走って出て行くところだったんだよ。ヨーギラスの時みたいだなぁ。俺ってそっちの方面に才能があるのかも。」
笑いながらサトシが答えた。カスミも釣られて笑った。
「・・・覚えていてくれたんだ。この場所。」
「忘れるかよ。旅立ちの日に初めてカスミに出会ったこの場所を。」
それを聞いてカスミが意外そうに答えた。
「え?あの日ってサトシが旅立った日だったんだ。」
「え?言ったことなかったっけ?」
サトシも意外そうに尋ねた。カスミが微笑みながら答えた。
「そういえば聞いたことがあったかも。」
湖にまたしばらく沈黙が落ちた。っと、カスミがさっきとは違う顔でサトシに声をかけた。
「サトシ。」
「何?」
「私ね、ずっと前から怖くてサトシに言えなかった事があるの。」
「どうしたんだよ。今日のカスミなんか・・・!!・・・カ、カスミ?!」
サトシの顔が一気に赤くなった。カスミがサトシの手をそっと握ったのだ。
「ごめん。でも私、サトシのことが・・・好きなの。」
サトシは言葉も忘れてただカスミの顔を見るばかりだ。ピカチュウも目を丸くして二人の会話を聞いていた。
「・・・ずっと前から言いたかったの。でも、怖かった。あなたに『嫌いだ』って言われるのが怖かったの!」
「お、俺は・・・。」
三度沈黙が落ちた。二人とも顔を赤らめ、湖を見ていた。
「・・・ごめん。今の俺には・・・カスミが、カスミが好きかが・・・わからない・・・。」
カスミが寂しげな表情で声をかける。
「・・・ううん、いいのよ。サトシ。」
だが、サトシはカスミを振り返り逆にカスミの手を握り、何かを振り切るように声を上げる。
「でも、カスミ。これだけは信じてくれ!俺は、俺は決して君のことが嫌いだとか、嫌だとか、そういう風には思っていないって、・・・それに・・・ジョウトリーグが終って・・・君と別れた時、もう、君に会えないんじゃないかって思ったら、俺・・・すごく・・・涙が出そうになる程、悲しかった。本当は、これからもずっと一緒にいたい。メールのやりとりとかじゃなくて、君のそばにいたいんだ!それが俺の、本当の気持ちなんだ!」
二人はしばらく見つめ合った。カスミが残った手をサトシの手に重ねる。
「・・・わかってるわ。」
「え・・・?」
「・・・あなたの気持ち。」
そう、なんとなくだがカスミにはわかっていた。1年以上ずっと一緒に旅を続けていくうちに・・・。サトシが恋愛に鈍感なのも、自分への気持ちをうまく言葉に出来ないだけなんだということも・・・。そして、サトシはまったく変わっていないんだということも・・・。
「だから・・・今日あなたのその返事が聞けただけでいいから。その答えだけで充分だから。」
「・・・ありがとう。」
二人は手を離し、湖に向き直った。っと、二人の間にピカチュウが入ってきて二人を見てうれしそうに声を上げた。
「ピカピ、ピカチュピ、ピカピカチュー。」
「なんて言っているの?」
カスミがサトシに問いかけた。
「『おめでとう』って言っているんだろ?ピカチュウ。」
「ピッカー!」
サトシの問いにピカチュウは元気よく首を縦に振って答える。
サトシが立ち上がった。
「・・・帰ろうぜ、カスミ。」
「・・・ええ。」
カスミも立ち上がる。ピカチュウも後に続いた。翌朝、サトシとカスミは寝坊した。朝ご飯が済んだ後、タケシが訳知り顔でカスミに聞いてきた。
「サトシはともかくカスミまで寝坊するなんて珍しいなぁ。何かあったのか?」
「何も無いわよ。」
ぶっきらぼうにカスミが答えた。っが、サトシを見る目が前と少し変わっているのを見て微笑して言った。
「そういえば、今朝お姉さん達からメールがあったぞ。来週帰ってくるそうだ。」
「え?それ本当!?」
カスミが驚いて聞き返す。それを聞いてサトシもカスミに向かって言った。
「ああ、今メール見て来いよ。それとサトシ、オーキド博士が七島列島へのレインボーパスを持ってきたぞ。今度新しくクチバシティから連絡船がでるようになったそうだ。次に開催されるポケモンリーグは七島列島で行われるらしいぞ。」
「本当か、タケシ。よかったな、カスミ。どうする?また一緒に来るか?」
それはカスミにとっては悩むまでも無いことだった。
「行くわよ。当たり前でしょう。私がいないとまたサトシ突っ走るでしょうが。」
当のサトシも笑って返した。
「ははは、そうかもね。ハルカとマサトはどうする?二人も来るか?」
「はーい、僕は行くよ。ホウエン地方にいないポケモンとかがいっぱいいるんでしょう?」
「うーん、ちょっと微妙かも。タケシ、七島列島でコンテストはあるの?」
元気よく答えたマサトと対照的にハルカはあまり乗り気ではなかった。
「ああ、ホウエン地方と同じルールで行われているそうだ。場所は4箇所だね。」
タケシがガイドブックを見て答えるとハルカも元気よく答えた。
「なら私も行くわ。もっとコーディネイターとしての腕をもっと磨きたいし。」
「じゃあ決まりだな。カスミがジムリーダーの仕事をお姉さん達に引き継いで戻ってきてから出発ってことでいいな?」
『賛せーい。』
カスミがマサラタウンを離れる時が近づいてきた。4人とピカチュウが見送りに出た。サトシがカスミに声をかける。
「じゃあカスミ、ここで待っているから。」
「うん、1週間で戻ってくるね。それまで落ち込むんじゃないわよ。」
「大丈夫だよ。久しぶりに皆でトレーニングしているよ。」
「待っているからな。」
「私も。後でいろいろ教えてください。」
「ぼくもー。」
「ピカチュピ、ピカピカー。」
それぞれとの別れが終った後、サトシとカスミはしばらく見つめあい、カスミはマサラタウンを後にした。
「また後でなー。待っているからなー。」
サトシの叫び声にカスミは自転車に乗りながら振り返り、手を振って答える。サトシはカスミの姿が見えなくなるまで手を振るのを止めることはなかった。
一晩の出来事がサトシとカスミの間により一層の絆をもたらし、二人の想いは繋がった。ポケモンマスターを目指すサトシ達の旅はまだまだ続く。続くったら続く。
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