ある桜の木の下の話

電子鼠さんに感想を送る

「ずぅっと前から・・・・・好きでした」







―ある桜の木の下の話―






その少女は顔を赤らめた
視線は足元
柔らかい春風に吹かれて、少女の黄色の髪がなびく
少女の後ろから吹く風は、真っ赤な頬を隠すように髪を前にやる


「・・・・へ・・・?えっ・・・えっ!?」
少年の頭はすでにパンク状態
俗に言うあれだ・・・“フリーズ
少年の1キロバイド程度の頭は、たった数バイドの言葉で、フリーズに陥った
「・・・・・・・・・・・」
目には見えぬが、耳からは煙
それまでのことをゆっくり思い出しながら状況を整理する





〜〜〜数分前のこと〜〜〜

「レッド〜?居る〜?」
というブルーの声

ここはトキワジム
グリーンは、協会から言い渡された長期任務により不在である
現在レッドが代理でジムリーダーを勤め、次々と迫るリーグ挑戦者を次々と倒している
故に、この最近十日程は、『トキワジム=攻略できたらチャンピオン級』の方程式が成り立つ
レッドも手を抜いているようだが・・・駄目らしい
そんなレッドは、実力とは相反して資料の整頓がまったく出来ないようだ
届けられる資料を次々と机に重ね、「助けてくれ〜」とブルーに救援の電話がかかったのはついさっきのこと
来てみると、大量の紙・ファイルに埋まったレッドがじたばたもがいた
(・・・ほかっておこうかな・・・)
ブルーがそう思ったのは内緒のこと
レッドを紙の山から引っ張り出し、帰ろうとしたブルーも必死で整頓の手伝いを頼み込み、(机から2mほど紙の山)今に至る

「何〜」
部屋の奥から声がする
声の主はレッド
ブルーは、まだ落ちている紙をそろりそろりと避けながら、その声の元へ近づく
「レッド・・・何やってんの・・・・?」
「ん・・・資料分けてるんだけど・・・これ、どこ?」
レッドが出した紙には、『タマムシデパート、大売出し祭り』と大きく書かれていた
「・・・・・・・・はぁ・・・」
ブルーは無言で紙を掴むと、くしゃくしゃにしてダストシュート
「あぁ!!それ捨てたら・・・「アホかい」
短くそう突っ込むと、
「レッド・・・あんた・・・今まで何枚片付けた?」
「ん・・・よん・・・いや、ごか・・・五枚」
「はぁぁ・・・」
ブルーは大きくため息をつく
「あんたが居ても大して変わらないわね・・・もういいわ、休んでらっしゃい」
「ふぇ?何で?」
「邪魔」




そう、ブルーにこう言われ、しぶしぶ外に出ると、ジムのすぐそこの桜が、満開になっているのに気が付いた
「今年は早いなぁ〜」
そう思いながら木に近づくと、木の陰にイエローが居た
声をかけようと近づくと、突然振り返って―





「・・・・・・・・・・・」
状況が飲み込め、レッドの耳からはさらに大量の煙が
「だめ・・・・・・・ですか・・・?」
イエローが俯いたまま言う
「う・・・えっ・・・と・・・」
レッドが反応に戸惑う
誰だっていきなり・・・サプライズ的なものはキツイだろう
レッドが耳から煙をもくもくと出していると、イエローの目から涙が
俯いた顔からは、頬を伝うことなく涙が流れ落ちる
「うっ・・・ちょ、イエ・・・」
イエローは振り向いて走り去っていく
そのとき初めて泣いていることに気付くと、追いかけるべく駆け出すが
「イテッ・・・・・・」
桜の幹に足を取られ、すっころぶ
起き上がって前を見るが、もうイエローは見えなくなっていた
「・・・・・・・・・・」
呆然と立ち尽くすレッド
その後レッドがダッシュで立ち寄った場所は―





「ブルー!!」
「わっ!何!?」

・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・

「という訳で・・・」
「・・・か・・・」
「?」

「レッドの・・・ド馬鹿ァ!!!キヅツクにキマッテルデショ!!」
「うっ・・・」
「てゆうか・・・アンタずっとイエローの気持ち知らなかったの!?」
「えっ・・・そうなの・・・?」
「アンタって奴は・・・今すぐ行きなさい!イマスグ!!!」
「わ、分かったよ。今行く・・・」

・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・


「うっ・・・うっ・・・」
イエローはトキワの森で泣いていた
「(レッドさんは・・・キライだったんだ・・・)」
そんな言葉ばかりか頭をよぎる
イエローは相当緊張していたのか、レッドが戸惑いに戸惑っているところを見て、「NO」と思ってしまったのだろうか
イエローの後ろ、数メートル先には、スピアーが居るのにも気付かずに・・・

ブゥゥン!!

スピアーが大きく羽を羽ばたかせ、イエローに迫る
「!」
イエローもそこで初めて気付いたようだ
でも、遅かった









「・・・・・・・・?」
痛みを感じない
硬く閉じた目をゆっくりと開く
そこには、真っ赤な物が流れているのが分かる
それは、『血』
出元は、ヒトの手
その人は、大きく伸ばした右手の激痛に耐えながら、左手でモンスターボールを取り出し、スピアーに押し付ける
スピアーは、ボールに吸い込まれるように消えた
レッドはそのボールを、遠くのほうに投げつける
ボールはかなり遠くで割れ、そこからはスピアーが現れた
「くっ・・・」
痛みに耐えかね、崩れ落ちる
その人は・・・


「レッドさん!?レッドさん!!」
右手からはドクドクと血が流れ落ちる
「イエ・・・ロ・・・ォ・・・」
消え行く意識の中、レッドも応じる
「大丈夫ですか!?今病院に運びますからね!!」
自分よりかなり大きいレッドの体を担ぎ、歩き出すイエロー
その数歩のところで、レッドは意識を失った










「・・・・・・・・・ぅ・・・・うぅ・・・」
「レッドさん!大丈夫ですか!!?」

レッドの目の前に広がったのは、病院の天井・・・よりも大きい面積を取るのが、イエローの顔
「近い・・・」
「あ・・・・」
イエローは顔を赤らめ・・・といってもすでに涙で真っ赤だが、ゆっくりと顔を引く

「レッドさ・・・」「イエロー・・・」
イエローの言葉をさえぎってレッドが話す

「さっきは・・・ごめん・・・すぐ返事出来なくて・・・オレも・・・好きだ・・・いや・・・いきなりで返事できなくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・!!!!!??」







―ある桜の木の下の話―
   ―桜は冬の中栄養を溜め込んで、春に花を咲かせます―
     ―この少女の恋のように―

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