兄妹

桃奈さんに感想を送る

「君…人間?」

唐突に言われた言葉に私は驚いた。





私と私の兄のラティオスは昔から人間化けることができた。
…ただ一度だって見破られる事はなかった。
今、私の目の前にいる人間を除いては。



「…どうしてそんな事聞くんですか…?」
私はやっとのことで声をふりしぼっていった。

「だって君からはポケモンの臭いがするんだもん」
そう言って彼はケラケラ笑った。

「別にそんなに震えなくったっていいじゃん!僕は何もしないよ?」

でもいくら優しく言われても怖いものは怖い。
私が何とか震えをおさえようと四苦八苦していると彼は言った。

「君…人間が怖いの?」

私は軽く頷いた。

「…何で?」

「……私…たちを捕まえようとする…から…」

「…なら大丈夫!僕は君を捕まえたりはしないから」

彼はそう言うと微笑みながら私に手を差し出した。

「これからは僕が君を守ってあげる」


…その時私は生まれてはじめて人間も悪くないな、と思った。







ただすぐに彼を信用するわけにはいかなかった。
でも彼は私が他の人間に危害を加えられそうになると必ず助けてくれた。
だから私は少しずつだけど彼に心を開いていった。



「…どうして私を守ってくれるの?」

不思議だった。
目の前に突然現れて私の正体を見破った彼が。


「…君が好きだからだよ」

私は目を見開いて彼を見た。

「…あはは!別にそういう意味じゃなくて…何だろう?家族愛…みたいな感じ」

「それだけの理由で…?」

「…それだけじゃだめ?」

「だめじゃないけど…貴方みたいな人間ははじめてなの…じゃあ私の正体がわかったのはどうして?」

「…君のお兄さんに聞いた…」

「ラティオスが!?…嘘…」

「本当」


しかし彼はそれ以上何も言わなかった。
私もそれ以上問いただそうとはしなかった。







ある日彼は私に言った。

「もし僕がいなくなったら君は自分で自分を守ることができる?」

「…貴方はずっと私を守ってくれるんじゃなかったの?」


今では私は彼を失う事は考えられそうになかったからそう言った。


「…君が自分で身を守れるならもう僕は必要ないだろ?」

「そんなことない!」

「今僕が君を捕まえるって言っても?」

「…別に貴方になら捕まえられてもかまわない…」

彼がなぜそんな事をいうのかわからなかったから私はほとんど涙声になりながら言った。


「…わかった。じゃあ今、僕は君をモンスターボールで捕まえる。…それでも?」

「…やってみれば…?」


私は彼が本当にできるわけない、と思ったので言った。
しかし彼は本当に私に向かってボールを投げた。
私は反射的にそれをはね返し彼を睨んだ。


「…他の人間にも今みたいなことができる?」

「…他の人間だったら反撃してる…貴方だからしないのよ?」


「じゃあ大丈夫」

そういうと彼は私の頭を撫でた。
次の瞬間、彼の姿は崩れ私が最も愛している人の姿になった。

「……さよなら……ラティアス…」

私の兄はそういうと消えてしまった。






後日、仲間が兄は人間に捕まったと私に知らせに来た。
捕まる直前まで心配していたのは私のことだったらしい。

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