あなた色。

空真さんに感想を送る


僕の心はあなた色。







ゆーっくり、町を歩くのが好き。

すでに顔見知りのおじいさんに笑顔で挨拶、ベルを鳴らしてドアをくぐる。
町を歩き回って最後にいつも、このcaf?でティータイム。
たまにブルーさんがいたり、たまにクリスさんやゴールドさんがいたり。
誰がいても楽しいけど、幸せだと感じるけれど。
一番幸せなのはやっぱり。

カランコロン♪

「いらっしゃい・・・おや、久しぶりだね、彼女ならいつもの席だよ」
「ありがとうじいさん。えーっと・・・・お、いたいた!」

彼の瞳は赤い色。
どんな夕焼けよりも綺麗な瞳。
見つめて、微笑む。

「よっ、イエロー!元気してたか?」
「レッドさんこそ、無茶してませんか?」

やわらかくて優しい笑顔は変わらない。
彼を見るとき大好きだという気持ちが顔に溢れているなんて言われたけど、それだって構わない。
優しい笑顔に返す表情を、僕はそれ以外に知らないから。



二人で、ゆっくり、ゆーっくり、町を歩く。
夕焼けの帰り道。遠くでヤミカラスの声が聞こえた。もうすぐ、夜が来る。

「んーっ、やっぱり此処はいいなぁ。あったけー」
「それは、シロガネ山に比べたら温かいですよ?どこだって」

クスクスと笑顔がこぼれて、心幸せ色。
町は朱に染まっている。夕焼けの色。綺麗。

「なぁ、イエロー」
「はい?なんですか?」
「・・・・・ん・・・・・や、なんでもない」
「えー?気になるじゃないですか」
「気にするなよー大したことじゃない大したことじゃない」
「二回も繰り返さなくても」

苦笑とともに寂しくなる。
何でも言ってほしいのだけれど。
やっぱり僕は、その程度?



心はいつでもあなた色。
真っ赤に染まった心で、いつもたくさんの気持ちにゆれる。
あなたの心は何色ですか?



「おっ、あれもうすぐ完成するんだなっ」

ふと、声が聞こえて自分が考え込んでいた事に気づく。
いけない、いつもこうしてぼんやりする僕の癖。
視線を上げると、ソコには、純白のドレスに身を包まれた美しい女性・・・・の描かれた看板。
その人の髪は綺麗な金色。僕の髪に少し似てて、でもぜんぜん違う。
きれいだなぁ。あなたがそういう彼女は、本当に綺麗。
でも、か な し い 。

少し前を歩き出す。
彼はまだ看板を見上げている。
まだ、まだ、まだ、追いかけてこない。
気がつけば看板の真下、あなたはまだ純白に心を奪われている。
僕の色は、白に奪われて。

下を向いた瞬間に、何か声が聞こえた。
僕は気づいて、気づかない。
かなしいかなしい・・・・・・ううん、悔しい。
僕の色に染まってよ。僕ばっかりだよ。

「イエローっ!」

ばしゃあっと液体の音、驚きに声も出ないまま、頭にバケツを被ったあなたが見えた。

「・・・・・れ、レッドさん?!ちょ、だいじょうぶですか?!」
「だ、大丈夫だいじょう・・・・・・って、意味ねー・・・・」
「へっ?な、何がですか?」
「・・・・・イエロー、看板の真下は危ないから。ぼんやりしてたらだめだって」

全く、そう言ってため息を吐いたあなたの漆黒の髪も、服も、頬にまで、ペンキが付着している。
ああそうか、守ってくれたんだ。
そう思ってやっと、申し訳ないという気持ちがこみ上げた。

「ごめんなさい・・・」
「あ、いや、謝ることは・・・それに、俺守りきれなかったしなぁ」
「?」

ふと彼の手が伸びて、僕の鼻をこすった。
驚いて身を縮めて、自分の体が目に入る。
肩から太ももにかけて、見事に別の色に染まっていた。

「おーい、気をつけろよおじさん!イエローが怪我したら俺は許さないぞ!!」
「わるかったー!お嬢ちゃん、大丈夫かい?!」
「え、あ、僕ですか?大丈夫ですー!」
「そりゃ良かったー!ゴメンなー!そこのあんちゃんに許してくれって言っといてくれー!」

だそうですよ、と視線で合図。
少し文句を言いながら、彼は仕方ないと溜息を吐いて、上に向かってプテ、と呼んだ。
驚く暇もなく、翼竜が舞い降りてきて、彼の掌に収まった。
赤白のボールを腰に戻すのと同時に、町に明かりが灯る。
白い街灯に照らされてあなたを見上げて・・・・・・・笑った。

「え、な、なんだよイエロー」
「えっ・・・・・いえ、何でも!」

あなたは全身黄色に染まっていた。
やっぱりあなたは僕の色?
そうだと嬉しい。



そして僕はやっぱりあなた色。



お互いの名前を交換した色に染まって、僕はあなたと家路に着いた。

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