名も知らぬ人間へ 〜野生のラフレシアより〜
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ごめんなさい。
何よりも、謝りたいのです。
あなたは優しい人でした。
誰からも嫌われて、避けられて。そんな私に微笑みかけてくれた。
深い森の中、ただただ歩いてばかりの私に、あなたは手を伸ばしてくれた。
―――おや、ラフレシアかい・・・。手向けの花には少々大きすぎるかな・・・。
あなたは私を見ても怖がらなかった。
あなたは私が近づいても逃げ出さなかった。
それがとてもうれしかった。
―――よく見れば、なかなかカワイイじゃないか・・・。
―――怖がることは無い。もっと近くへおいで・・・。
私を傷つけようとしなかった。
私を追い払おうとしなかった。
どころか、私を優しく撫でてくれた。
―――おやおや、何を泣いているんだい・・・?
―――誰よりも弱くなった私に、どうして涙を見せるんだい・・・?
それから、私は何度となくあなたに会いに行きましたね。
あなたはいつだって、私を迎えてくれましたね。
私が来るたびに、微笑みかけてくれましたね。
―――また来たのかい・・・? 私のどこが楽しいんだろう・・・。
あなたのそばにいるだけで、私は幸せになれたんです。
ずっとそばにいさせてください。
私に微笑みかけてください。
優しく私を撫でてください。
時には強く、私を抱きしめてください。
この願いを、叶えてください。
でも、いつからか、あなたは動かなくなってしまいました。
いつも目を閉じて、
私が来ても微笑まず、
私が触っても何もしなかった。
いったいどうしてしまったのですか!?
何があったのですか!?
私が悪いのですか!?
私が何かしてしまったのですか!?
気づきました。
気づいてしまいました。
あなたは、
死んでしまったのだと。
―――あぁ、良い香りだ・・・。
―――ラフレシア、これは君のかい・・・?
―――良い夢が見れそうだ・・・。
―――ラフレシア・・・。
―――最後に、美しい花が見れたよ・・・。
深い々々森の中、木の幹にもたれかかったあなた。
あなたは私に微笑みかけてくれた。
私を優しく撫でてくれた。
私はあなたのそばにいたかった。
でも、あなたは私を置いていってしまった。
あなたはもう微笑んでくれない。
もう撫でてくれない。
私には、何もできない。
冷たくなったあなたを、ただただ抱きしめるばかり。
微笑んでください。
優しく撫でてください。
私を、抱きしめてください。
それは、叶わなかった。
日を追うごとに、あなたは朽ちていった。
あなたは朽ち果ててしまった。
ごめんなさい。
何よりも、謝りたいのです。
朽ち果ててしまったあなた。
そこに泣き崩れる私。
自分が枯れてしまうのではないか。
それほどまでに泣き続けました。
もはやそれしか言えなくなったのか。
そう考えるまでに謝り続けました。
そして、次の言葉を口にしました。
「オイシカッタノ」と。
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