地球の片隅で

木兆さんに感想を送る


地球規模の戦争。

それは全てを破壊し、全てを「無」にする。




地球の片隅、二匹のスリープがいた。

二匹は愛し合っていた。これからもそうしているつもりだった。

外を見れば枯れ木の嵐。

遠い先には赤く輝く光。


「もう嫌よ、こんな世界。」


少々キツイ口調の彼女の言葉。

それでも僕は幸せだった。


こんなに世界は広いのに、この小さな洞穴で僕たちは身を寄せている。

音を立てて震え、時に涙し、食す物もない。

平和だった数日前に息を吐き、ゴロリと寝そべった。


ゴツゴツとした岩の天井。

遠くから破壊の音が聞こえてくる。





「人間って愚かね。」





彼女の口癖。





「ポケモンは道具なのか。」





最近の、僕の口癖。




二人でほぅ、とため息を。



人間は愚かだ、道具であるポケモンを使って炎を上げる。


ポケモンは道具、愚かな人間たちに思いのままに使われて叫びつづける。

小さな機械に閉じ込められて命令のままに動くポケモン。







「私たち、ポケモンかしら?」







…ポケモンなのか?僕たちは。

自由に生きている。機械に触れたことはない。

人間に使われたこともない。







「僕たちは、ポケモンだよ。」


そう、僕たちはポケモン。

だって、

「こんなにも無力なものは道具以外ないじゃないか。」

この小さな洞穴で身を寄せる。

人間からもポケモンからも逃げている。

誰も助けられない、こんな無力な生き物なんて…







「…寝ましょうか。」

ポツリと彼女の言葉。

今にも消えてなくなってしまうようなか細い声。

飲むもの、食べるもの、何もないせいで…







「…なぁ、」

僕は彼女を愛している。





「何?」

僕に背を向けて寝仕度をする彼女を愛している。




だから僕は









彼女を助けたいんだ。













「夢を食べてくれ。」













僕たち特有のあの技で。








「え?」








夢を食う技、「ゆめくい」。








「無力な道具にはなりたくないんだ。」




逃げていることはわかっている。


「でも………!!」


「おやすみ。」





僕は愛しているから。

素敵な夢を見るよ、君の好きなお菓子の夢。




愛する君の夢を。














地球規模の戦争。

それは全てを破壊し、全てを「無」にする。


一匹のポケモンが死んだ。

外傷はなく、器官を残して吸い尽くされたような死体。

笑ったまま。

ぴくりとも動かずに。

一匹の男が死んだ。








一匹のポケモンが死んだ。

外傷はなく、器官を残して吸い尽くされたような死体。

その横で。

何故だか湿ったままの地面に顔を埋めて。

一匹の女が死んだ。






濡れた地に技の跡が残る。

二つの技。




ゆめくい。















呪い。















死体は自らを呪った。

涙を流しながら。夢を食いながら。

自分の中心に釘を刺し、体力を半分まで減らす。

自らを呪い、相手を呪う技。








死体は、言われるがままの自分を呪った。

死体は、自分を愛した相手を呪った。










地球規模の戦争。

それは全てを破壊し、全てを「無」にする。





地球の片隅で、二匹のポケモンが死んだ。

笑った死体、泣いた死体。





地球の片隅で、大量の人間が死んだ。

ポケモンを道具として使い、血を浴びて死んだ。






地球の片隅で、大量のポケモンが死んだ。

人間に思いのままに使われ、自身を忘れて戦って死んだ。







戦争。

そこで戦った消えた英雄達は思うだろう、













「笑って死ねたら幸せだ」と。















地球の片隅で、二匹のポケモンが死んだ。

笑った死体、泣いた死体。



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