思弁的な数

あきはばら博士さんに感想を送る

 「数は宇宙を支配する。万物の根源は数とその秩序であって、数なくして何一つ思惟させる事も、認識される事も出来ない」
   byピタゴラス (自然哲学者:前570?〜前490?)



  思弁的な数



私の彼はなによりも数が好きだった。

「図鑑ナンバーって知っている? この世界に数多く存在するポケモンたちを分類する際に、人間達が勝手に種族ごとに分類した時に付けられた番号なんだけど。
……そう、その通り、やっぱり知っていたんだね。
ところで、ネピアの図鑑ナンバーは26番なんだけど、実は26と言う数字にはたくさんの素晴らしさが秘められているんだ。
例えば、26の前後にある25と27は5の二乗数と3の三乗数。
世界に数は無限にあろうとも、二乗数と三乗数に挟まれた数は26のたった一つしかない、分かる? 世界にたった一つしかないんだよ。これは本当に美しいことだと思うんだ。
さらに、25と27の前後にあたる、24と28もまた素晴らしい。24は4の階乗だし、28は完全数だ。もっと言ってしまえば、さらに前後にあたる23と29は素数だったりする。
何も、26という数の素晴らしさは前後の数から来るものではない、例えば2〜101の連続する100個の自然数の中には26個の素数が含まれているし、二乗すると回文数になる最小の非回文数でもある、また26の三乗数の各桁の数を全て足し合わせると26になる。26を三乗するのはちょっと根気がいるけど、計算した5つの数字を足し合わせた時の感動は何事にも劣ることがないと思うよ」

そう言って、彼はおもむろに鉛筆を取り出し、無地の紙を机に出して、そこに黒い数式を書き始めた。

23:素数
24=1×2×3×4
25=5^2=5×5
26=1+7+5+7+6  26^3=17576
27=3^3=3×3×3
28=1+2+3+4+5+6+7
29:素数

そこに書かれた数字は一種のシンメトリィを形成しており、ちょうど真ん中に置かれた26を祝福しているかのように見えた。

「君に付けられた、26の数は秀麗な数に囲まれいる上に、大変優美な特性を有していて、他のどんな数よりも常に明るく光っている。
ネピアがいつも綺麗であるように、これは決して偶然付けられたものじゃないと僕は思うんだ」

私は、じゃあ貴方の図鑑ナンバーにはどんな素晴らしさが隠されているかと尋ねた。
彼は少し考えてから答えた。

「僕の図鑑ナンバーは181だったよね。……181は素数だ、二つ隣の179も素数だからこの二つは双子素数だね。
あいにく181は素数である故に、他の特徴は無いけど。昔の僕、つまり進化前の180ならばたくさんのものを持っているはずだよ、180といったら直線の角度として有名だけど、例えば180の約数は18個だったり、正20面体の面で決まる平面の交線の数が180本だったりする、他にも三乗数としては……まあこれはおいておこうか。
ところで、181、180、179と来れば、178と言う数字もまたすごい数なんだ。
178は三番目のファン・デル・ヴェルデン数、W(5)の値であって、これを求めるのになんと210時間もかかったそうだよ、すごいよね!
ちなみに、210の数も1から10までの素数を全て掛け合わせた数で……おっと」
彼は何か思い出したかのようにそこで言葉を区切った。
「話が変な方向に行っちゃったね、ごめん。 冷凍庫にジェラートがあるんだ、一緒に食べようか」
そう言って、彼は冷凍庫に向かって、とことこと歩き出した。


私は彼のことが好きだ。

初めて会った時には何を言っているのかよく分からなかったが、しばらく話していくうちに数学にはうとい私も次第に彼が語る数字の素晴らしさと、彼の魅力に引き込まれてきた。
彼はいつも幼気で、不器用で、無邪気だった。小さな子供が親の声にも反応せずに無心に何かで遊び続けるように、彼も数というオモチャで戯れていた。
数の向こうに何か新しい真理を探し出すと、いつも満面の笑みたたえて私に報告してくれた。
一応は説明を受けるものの、数学が得意とは決して言えない私にとってはその真理の意味はいつもよく分からないままだが、そのことにいちいち狂喜乱舞する、その彼の姿を見るは好きだった。余程その数が好きなのだろう。
彼は、できるだけ私の分かる範囲での内容でその数の素晴らしさを語っていたようだった、あの時途中で話を中断したことも私を話のおいてきぼりにさせない、彼なりの配慮だったのだろう。
彼は私が完全に理解してもらわなくても構わないようで、ただ自分の見つけた素敵な宝物も一緒に見てくれる相手がいるだけで幸せに感じているようだった。




そんなある日のこと、彼は私の帰り際に一枚の紙を手渡した。
それを見ると、紙には彼の鉛筆の字で次のような7問の問題が書かれていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次のグラフを書いてください、分かる範囲で構いません。
1、x=0
2、xy=0 (但し、x≧0,y≧0)
3、x^2+y^2=4
4、y=|2x|
5、(±2,±2)ので囲まれた領域内を自由に移動する点Pのyの最小値、平均値、最大値とxの最小値の軌跡
6、y=x^4
7、極関数r=1+cosθ をx+y=0で対象移動させる
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

彼からこのように宿題を出させる事は初めてのことだったが。
悔しい事に、さっぱり分からなかった。
「分かる範囲で構いません」と書かれているが、 一問も解けないとは、情けない……。
とりあえず、xとyが使われているところから、どうやら関数の問題だろうとは分かったが、その先が分からない。

彼と出会ってから、私は確かに数に関する知識が増えたかもしれないが、今こうして問題に向かってみると、手も足も出なかった。
思えば、彼から聞いた数に関する講義の内容がすべて頭に入っているわけもないのだ、
日々の彼の話を聞くことだけで私は舞い上がっていたかもしれない、私も数学が出来るのだと。しかし、その実体は違っていた、私は彼と出会う前と同じで数学に対して全く無知のままだった、日々の彼の話も分からないという理由だけで聞き流すばかりで、あの時から全く進歩をしていない。
彼も数学が分からない私よりも、分かる相手の方が好きに決まっているのだ。
数学についてどこまでも語っていけるような人と一緒の方が共有できる事も多いはずだ。
彼はこの問題を解ける相手を求めている事を思うと、無性に悔しくなってきた。



結局、次の日私は白紙で彼に問題用紙を返した。
彼は何もかかれていないその紙を見て、とても残念そうな表情をこぼした。
その表情を見た時、私の心にある堰が崩壊したかのように気持ちが体中を駆け巡って、いつのまにか口が開いていた。
「カルダは、私よりも数のことが好きなんでしょ……」
「えっ?」
彼は突然の私の発言にびっくりしたようだった。
「来る日も来る日もいつも数の話ばかり……。 私の話は全くしてくれない」
自分の口からあふれ出す言葉が止まらなかった。
「たまに、私のことを気遣ってはくれるけど、それは私の26という数字に恋をしているのでしょう?」
彼が必死に何かを言っているようだったが、私には聞こえなかった
「私に振り向いてよ、数じゃなくて私に。私はカルダのことが大好きなんだから!」
自分が何を言っているのかさえも分からない。
「でも、カルダは私じゃなくてやっぱり数を選ぶでしょうね……。そんなにそれが好きだったら、いっそ数と結婚したら!」
私は、その先は何も言わずに彼の家を飛び出した。彼の叫ぶ声が遠く聞こえる、私は聞こえなかったふりをして、無心で、全力で駆け出していった。





公園でひとり泣いていた。
なぜ、あの時あんなことを言ってしまったのだろうか?
もしも彼が数学を捨ててしまったら、私の好きだった彼じゃなくなる。私は好きな数と戯れる姿が好きだったのだ、もちろん私の方をもっと向いて欲しいのだが、数を失った彼の姿は考えたくも無い。
飛び出していったまま、既にどのくらいの時間がすぎたのだろうか?
分からない。  時計も無いし、あったとしても見る気がしない。
ただ、周りが徐々に明るさを失いはじめ、ヤミカラスの鳴き声が遠く聞こえてくるところから、あれからだいぶ時間が経ってしまったことは予想が付いた。
彼はいまごろ、何をしているのだろうか? 会ったら謝りたい。
不意に、何か光るものが私に近づいて来る事が分かった。

彼だ。

私はすぐ分かったが、顔を上げなかった。
「……ここにいたか…。よかった―― 見つからなかったどうしようかと思ったよ」
彼は安堵の息を漏らしているようだ。
「ごめん、ネピアの気持ちを分かってあげられなくて……」
私は顔を自分の腕にうずめながら、黙って聞いていた。
「まず、最初に伝えたいのは……僕はネピアの26と言う数字ではなく、君自身のことが好きなんだ……その誤解は解いて欲しい。
あの時、26と言う数を持ち出したのは、単にストレートにこのこと伝える事が恥ずかしかっただけだったんだ」
「…………」
「僕は……いや、僕もネピアのことが大好きだ。πの美しさにeの気品、εの緻密さにφの輝かしさやM(ミルズ数)の不可解さなど数にはたくさんの素晴らしさがあるけれど、そういうものとは違う。数が好きであるということとは全く違う意味で好きなんだ、ライクとラヴの違いのように」
「…………」
「いや………こんなことを言っても、君は僕の事を許してくれないだろうな……
そもそも、《数》という漢字は女性を数珠繋ぎにして数えるという会意文字であって、何人の女と寝ていたかを示すたいへん浮気な文字なんだ、毎日そんな淫らなものについて語っている僕は本当に信用できないかもしれない」
「…………」
「……もしも、ネピアが望むならば、僕はその数字を一切捨ててもいい」
「いや」
「え?」
「そんなの嫌よ、数字が好きじゃないあなたは、あなたなんかじゃない!」
私は顔を上げて彼に向かって叫んだ。
「ごめんなさい、あんな酷いことを言ってしまって、私もカルダのことが大好き、数で遊んでいるあなたの姿は特に好き、数があるからこそカルダがいる、だから数は捨てないで」
「……ネピアは、僕のことを許してくれるのかい?」
私は何も言わなかった、いや、感情の高ぶりで口が動かなかった。
私の目から涙がこぼれていることに気付いた、私はそれを気にしなかったが、彼は何も言わずに、そっと私の前に両手を差し出した。
ポゥ… ポゥ…
とシルクのように輝く白い綿毛が現れて、私の周りを取り囲んだ。
それが彼の[わたほうし]であることはすぐに分かった。
暖かかった。
綿胞子は目についた温かい水滴を吸い取って、
冷えていた私の体は次第に温かみを取り戻してきた。



沈黙が続いた。
その場の時間が綿胞子の効果によって遅くなってしまったかのように感じる。
「今日は何月何日だったっけ……?」
私は独り言のように呟いた。
「えっ…? 五月十七日だけど……」
彼は不思議そうに今日の日付を言った。
「じゃあ、517。 この数の素晴らしさについてを私に語って欲しい、そうしたらカルダのことを許してあげる」
「……分かった、 少し待って」
彼はそのまま歩きだして、そこにあった手ごろな枝を拾い上げて少し離れたところにしゃがみ、地面をなにやらガリガリを削り始めた。おそらく、なにかの数式を書いて計算をしているのだろう。
別に、すぐに許してあげても全然構わなかったが、こんな課題を課したのはなんとなくだ、所詮はすべての行動や発言の理由なんて、その言葉で終始説明できてしまうだろう。
もしくは、彼が織り成す数の魔法をもっと見たいという私的な感情があったからだろうか、私は後者の理由の方が強いと自覚する。
ふと、私はあの時に「私はカルダのことが大好きなんだから!」と言っていたことを思い出した。
いくらあの時はあの時だったといえども、今から省みてみるとずいぶんと赤面な言葉を発してしまったものだ……。
ああ……そうか、だから彼は、「僕も」と言い直したのか……、それに気が付くとさらに恥ずかしくなってきてしまった。

勝手に私の中を駆け巡る思考をストップさせる意味をこめて、ふうとためいきをついた。普段は彼の話についていけないという負い目からか、私と彼は全然違うと思っていたが、ふと省みてみると、私と彼は実にそっくりだと感じる。属性も特性も体毛の色もおなかが白いことだっていっしょだ。
違うところといったら身長、彼の方が60cm高い。
ふむ、60cmか、ここで彼に尋ねれば60という数について延々と語ってくれるだろうと思うが、今はそんなことはしない、自分で考えてみよう。
まず、1時間=60分 や 1分=60秒 で使われている60進法は60が持つ約数の多さから使われていると、むかし彼に聞いたことがある。では約数の数は………
…やめた、私の力では暗算で求められそうに無い。
では、素因数分解を……2…、3、5、2、つまり……
60=2×2×3×5
ん? ……あれ? これってもしかして
60=3×4×5
なるほど、これは綺麗だ…… 3から5までをかけた数が60なのか。
私と彼の差は3×4×5、素敵な並びが二人の架け橋となってくれている。60cmと言う数がより魅力的になった瞬間だった、なんだか嬉しくなった。


あれから10分ほど経って、彼が戻って来た。3分くらいで帰ってくると思ったが、思いのほか時間がかかったようだ。彼の声はさっきと比べてだいぶ明るくなって、彼らしい調子に戻ってきつつあった。
「ごめんごめん、計算やらなにやらで時間がかかっちゃって……。
さて、本題の517と言う数についてのことなんだけど、多分ネピアはこの数が素数であることだけじゃ許してはくれないよね?
……やっぱりね。大丈夫、他の517についての講釈は用意してあるから、しかもとっておきのヤツを。
ずばり! 517の二乗 = 133645の二乗 − 133644の二乗 になる。
つまり、133644^2+517^2=133645^2 ってことだね」

「……え? じゅうさんまんさんぜんろっぴゃくよんじゅうごのじじょう…?!」
彼は自信満々に言い切ったが、私にはあまりに常識外れ、というより文字通り桁違いなその数にあっけに取られた。
てっきり、簡単な数を例に挙げながら分かりやすく説明してくれるとばかり思っていただけに、この答えには意表を付かれてしまった。
「多分、実際に計算して足してみると一致していると思うよ、ただし答えは11桁になるから電卓じゃあ、まず無理だね、地道に筆算するか他の方法で解くかになるね。
ちなみに僕はこの数値を数列の応用を使って、133645と言う数をもとめたので、あしからず。
とても奇想天外すぎる数だけど、まあ聞いてくれるかな?
まず517は素数だ、そして517の各桁の数は5と1と7、1を除いて二つが素数であり合成数がない、そしてその三つを足した数は13でこれも素数、ここまで素数づくめだととても美しいものだけど……。
逆に言えば、素数と言うものは1とその数の二つしか約数が存在しない数、つまり素数はその美しさ以上にとても、孤独なんだ。
だから、素数でいっぱいの517のような数はさぞかし孤独な数だろうね。
でもね、そんな孤独な数でも、133644と言う桁が三つも離れている数が133645になるために必要としている、二乗が付いてなければその差は1だけど、133644^2と133645^2の間を埋めることができるのは517^2しか存在しない、516や518なんかじゃ無理なんだ。
世界には必ず自分のことを必要としている人が存在するのさ、つまり……」
彼はそこで言葉を句切った。
「ネピア、僕は君のことが必要なんだ!」

その言葉をそのまま受け止めると、つまり私は孤独な存在になり、だいぶ理不尽なことを言われているような気だけど……それを聞いて嬉しくなってしまうのは、なんでだろう?
いや、違う、孤独な517は彼自身なんだ。
孤独な517はいつも居場所を探している、そして133644も自分を変えてくれる特定の相手を探している。
二つは互いに求め合って、二乗の式で結ばれる。
こういう式をなんと言ったけな? ピタゴラス数だっけ。
昔、3^2+4^2=5^2 に代表させるピタゴラスの定理のような整数の三平方をそう呼ぶって彼が言っていたような気がする。
いや……そんなこと、今は関係ないか。
133645^2−133644^2=517^2
は確かに美しい、数学の世界には偶然なんかない、1+1=2であるように、これは必然の式。

私は当然のこと、彼のことを許した。



「ところで、こんな場で悪いんだけど、昨日の宿題の答え合わせをして……いいかな?」
彼はそう言って、さっき517の計算に使っていた枝をもう一度拾い上げた。
思えば、その宿題と言うものがことの発端になっていたのだった。すっかり忘れていた。
私はその答えも気になっていたので、すぐにOKをした。
彼はそれを了解し、地面にあの七問の問題を書き出して、x軸とy軸を十字に引いたものも七つ用意した。

「まずこれは、y軸を走る一本線、単純だね」
彼はグラフの真ん中に縦方向に一本線を引いた。

「結構無理のある式だけど」
こんどは途中まではさっきと同じだったが、原点で直角に折れ曲がって右方向に線が伸びた。

「これは円だね」
そう言って、原点を中心とする半径が2の円を書いた。

「絶対値記号が付く場合はすべて正の数になる、したがって第2象限や第3象限にグラフが伸びない」
書かれたグラフは、斜め上から降ろされた線がx軸の鏡面で反射しているようだった。

「これはさすがに無理があったかもしれないな…… でも、あいにくこれしか浮かばなかったんだ」
薄く正方形を書いた後、その正方形のふちに横線2本と縦線を1本、真ん中に横線を1本引いた。

「そして、二次関数。曲がっている、微分が出来る証拠だね」
不恰好な下に凸する曲線が書かれた。

「最後がこれだ、他の式を使えばもっと不恰好じゃない形になるはずだけど、どうしてもこれを使いたくてね。こういうグラフをカージオイドと言うそうだよ」
上がちょっとへこんだ円状の形が描かれた。

私はそうして出来た七つのグラフを覗き込んだ。
なんだか無性に嬉しくなった、胸がドキドキと高揚していく。
この感情はなんだろうか? 歓喜?
興奮して、今にも走り出しそうな私の心をなんとか抑えつけるのに必死だった。
「ねぇ」
私は言った。
「カルダは、愛とはどんなものだと思う?」
彼は少しだけ考えて、言った。
「……愛とはすなわち、思弁的な存在だ。経験によることなくただ純粋な思考によって、他の目的のためにでなくそれ自体だけのために、知的に眺めて認識に至るもの。その姿が見えないところからたびたび空想的な産物だと言われる事があるけど、それは確かに存在していて実数を支える虚数の礎の一つとなっている。
ではどこに、その愛があるのかの問いの解は………ここにある、僕たちの心の中にね、本当に大切なものは決して目には見えない、だから心でそれを覗くのさ。
ただ忘れてはいけないのは、愛はそれ単独では見えないけど、それが二つ存在して、互いにかけあわされることによって、はっきりとした形で現れる、二つの愛がかけあわされることによってね。しかも、それは横棒と縦棒の組み合わせという美しさ……まあ、それは置いておこう。
本来は数直線上に表すことができない愛及び愛を用いた複素数は、ガウス平面という特殊な平面に表記することができるんだ、これはすなわち一次元の実数から二次元の虚数への展開といえるかもしれないね。
だから僕はこの愛についての研究を進めていけば、いずれ四次元の世界を見つけ出すことができるんじゃないのかな? と思うんだ。これってすごい事だと思わないかな?」
彼は言い終わって、そっと私の顔を見つめてにっこりと微笑んだ、私も黙って微笑み返した。
この時は気付かなかったのだが、実は彼はこのとき虚数単位について語っていたのだった、なので上の言葉には誤植がある。

でも私にとってそんなことは関係ない、どちらにしてもアイが美しい事には変わりがないのだから。

私はすっかり暗くなってしまった空を仰いだ。
本当に彼はロマンチストで、数学以外のことになると本当に不器用だ。
こんな回りくどい方法を使わなくてもよかったのに……。
でも、本当に彼らしい。 そんな彼が、私は好きだ。
「(これって……幸せなのかなぁ……)」
そっと、視線を移して、そこの地面に描かれた関数を見る
それは彼からの数時間遅れのメッセージ


 I LOVE U(ユー:you) ハートマーク






Q.E.D

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