ある憧れの話

電子鼠さんに感想を送る

『…さぁ、タンバカイリキズ!現在リーグ最下位のコガネエレブーズを九点と引き離して九回の表、もうすでにツーアウト、さぁ後がありません!』

実況が淡々と実況を続ける
現在首位のタンバカイリキズ、そして現在最下位のコガネエレブーズ
力の差がありすぎた、エレブーズはボコボコに打たれ、もうすでに後は無い
すでにツーアウト、これから一回もアウトを取られずに、九点以上取り、さらに相手に追撃を許してはならない
かなりの荒業だ…果たして…




―――ある不屈の話―――



『さぁエレブーズ、ピンチヒッター、ナナコ、今年のドラフト一位のナンバーワンルーキー、さぁエレブーズ反撃できるのか』

今呼ばれたのは、今年女性にしてプロ野球に、しかもドラフト一位で入った“ナナコ≠ナある
父もこのチームに所属し、今も活躍を続けている
そしてその娘が…今この土壇場にたたされている



『ピンチヒッター、ナナコ』
そう放送されると、ナナコはバットをくるくると回しながらバッターボックスに立った

そして、ゆっくりバットを構えた




『ピッチャー…投げた!』
ボールはゆっくりと山なりに飛んだ
そしてゆっくりと、ミットの方に落ちていった
「もらったァァ!!」
バットを渾身の力で振った
が―――




カィィン・・・・・



ベンチに吸い込まれていくような、心地よい打音ではなかった
打球はふらふらと右斜め上に上がり、ベンチに落ちた
ファールだ


「そんな・・・!真芯で捕らえたはず・・・!!」



ナナコは確かに真芯で捕らえた
が、打球はまっすぐ飛ばなかった



ナナコはバットを再び構えた
『ピッチャー・・・・・投げたッ!』
ボールはさっきと同じ、山なりに飛ぶ球
そして―



コィィン・・・・・



ボールは後ろに飛んだ
「(くそっ・・・)」






「タイム!!」


後ろで声がした




・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・



『さぁ、タイムがおわり、ナナコ選手、バッターボックスに戻ってきました』




ナナコは構えた


『そしてピッチャー…投げました…!!」


さっきと同じ、山なりの球だった







『なんやとぉちゃん!急にタイムしてぇ!』
『よく聞きなさいナナコ。あれは“ナックルボール≠セ』
『なっくるぼぉる・・・?』
『ボールに回転をかけずに投げることで、ボールを微妙にブレさせる』
『そっかぁ…!それで…』
『ナナコ、あの球は真芯で当てるのは難しい。つまり…』




「(キャッチャーが捕り損ねるのに賭けろ…。でも…!)」


ボールが落ちてきた
確かに、球が少し揺れている



「(あの人はそんなやり方…)せぇへん!!!」








カキィィィィィン・・・








ボールは、まっすぐレフト方向へ飛んだ
しかし―

「(あかん!このままやと…ファールになる!)」
球はカーブ気味にどんどん左に曲がっていった
ただでさえまぐれで捉えたこの球・・・・・




「(神様・・・・!!)」







トン・・・・・

球はポールに跳ね返された
つまり・・・・・





『ナナコ選手!ホームラン!ホームランです!!!』
















―――その後エレブーズは勢いに乗り、次々と点を入れ―――







―――逆転に成功するのである―――











『えー、今日のヒーローはプロ初打席のナナコ選手!今日はどうでしたか?』
「えっっと…今日ホームランを打つとき、ホントはキャッチャーが捕り逃すのに賭けろ、って言われたんですけど…それを、私の知ってる、ある強い、私の大好きなポケモントレーナーが変えてくれたんです」
『へぇ…どんな風にですか?』
「逃げちゃダメだって、そう心の中で言ってくれました」
『そうですか…。では、その人に向かって一言!』
「あ、はい。サトシ〜!見とってくれとる〜?―――」













―――まさかサトシがこの球場で℃詩見てたりとか―――



―――そこであってしまって気まずくなるとか―――




―――サトシの方から××・・・・・とか―――












「まさか」

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