エターナル・デス

すずしろさんに感想を送る

前から気付いていた。
ラグラージの足がおかしいことくらい。

ポケモンセンターに連れていった。
病名がついた。

「骨肉腫」


「なにそれ?」
ハルカは当然のごとく聞いてきた。
「骨にできたガンだって。」
医者に説明された通りに言った。
「ガン?なの?」
実感がないらしい。
「うん。」
そりゃそうだ、俺も実感がない。
「へぇ、じゃあ治療でしばらくバトルできないね。」
ハルカはそう言う。

けれど、今一つハルカに言えない事があった。

「治したいなら、足を切断しなければならない。しかし、切ったからって他のところに転移していれば、進行は切らない時よりずっと早い。」
もうこいつと戦うことができない。
旅立ちの時からずっと一緒にいたこいつと。


「ああ、だから少し休養するんだ。」


嘘だった。
ハルカにはかなり嘘ついたことがあるけど、これが一番大きな嘘。

ごめんな。こればかりは、俺も言えない。
ハルカも一緒だったもんな、ずっと。
初めてのバトルの時、小さいアチャモで苦手なミズゴロウに立ち向かってきた。
始めたばかりと言っても、負けないっていう気持ちで。



医者は痛み止めをくれた。
切らなければ転移はすると言われたが、他のところに転移していた場合を考えて



ラグラージには痛みを押さえる治療をした。
それが一番だと思ったから。
足を引きずりながらも、ラグラージは普通に生活していた。


「ごめんなラグラージ・・・。」


ヒレを動かして喜ぶ。
わかっているのだろうか、俺が治さないという方法を選んだこと。
その先に待つのは永遠の静寂ということ。


永遠・・・。


前に聞いた。
絶対な物は無いと。
永遠に続くものは無いと。

それならば、なぜ死は絶対訪れる?
それならば、なぜ死は永遠なんだ?

なぜ、生は永遠ではない?


いつか、死ぬんだ。
なぜいつか 死ぬんだ?
生だけが永遠でなく、死だけが永遠なのはなぜだ?


「また難しい顔して!」
気付けば、涙目になっていた。目の前にハルカがいるのも気付かないくらい深く考えていた。
「いつも難しいことばかり考えると、ハゲになっちゃうよ!」
もう白髪に近いんだから、と俺の帽子を指す。

「何考えてたの?」
隣に座る。思わずハルカに考えていたことを話した。
「なあ、ハルカ、絶対なことは無いって前にお前の父さんいってたよな?」
「うん。」
「じゃあ、なんで生き物が死ぬことは絶対なんだ?矛盾してないか?」
ハルカは黙った。
難しすぎることはわかっているけど、俺には答えが出せない。



「死ぬことも永遠なわけじゃ無いよ。」
ふとハルカはそういった。
「死ぬことと生きることは違う世界に行くだけで、産まれるというのは死の世界から生きる世界に移動しただけで、死ぬことも同じ。」
語るハルカは、彼女の父親に似ていた。
雰囲気、世界観。
ずっと同い年と思っていたハルカがこんな複雑なこと考えていたなんて・・・。

「だからね!」
いきなりハルカは目の前に来た。
「死ぬ世界に行っても、また生きる世界に戻ってきて、何も覚えてなくても、前にお世話になった人のところに自然と集まるんだと思う!」



ハルカが大きな目で見ている。
それでも俺は涙をとめることはできなかった。



「ハルカ・・・ありがとう・・・。」



ラグラージ、お前に残された時間は少ない。
だけど、それは今回に限ってのこと。
いつか死ぬ、だけどまたいつか・・・

俺の前に来て、心配するなって言うんだろうな。



永遠なんて無い。
それは、死すら同じ。


いつか終わる





全身に転移したガンの苦しみも。





「では、よろしいですね?」




俺は決めた。
今まで共にがんばってきたラグラージにしてやれる最後のこと。
楽に死なせること。

針を刺されても、すでにラグラージは反応しない。
もうすぐ楽になれるだろう。
それまで、しばらく待ってくれよな?
これがトレーナーとしてできる最後のことでごめんな。


俺は弱かった。
お前やハルカに支えられて生きてこれた。
お前がいなくなったら、俺は弱くなる。


俺もいつか死ぬ。
それは解らないが、入れ違いにならない為にラグラージ、俺が生きてる間に会いに来い。



目が閉じられて
心臓の鼓動も消えて





泣かないわけにはいかなかった。
みんな支えてくれた。
中でもハルカはこう言った。

「ラグラージによくしたら、きっとそのうちまた来るよ。だからその時までいてね。」






約束する。

また会う時まで俺は・・・。

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