宿命――奴と俺
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古き時代から……彼らの争いは続いてきた。
体に刻まれた傷跡はその証。
相手を見据えるその剣の如き眼差しはその証。
その戦いに……終止符は無い。
――宿命――
俺は、“奴”と会ってしまった。
滝に面する崖の近くの森の中でだ。
反射的に俺は戦闘体勢を取り、“奴”もゆっくりと戦いの構えを取った。
(出会ってしまった以上……“奴”との戦いは避けられない…)
俺の名は、牙蛇ポケモン ハブネーク。
目の前にいる“奴”は、猫鼬ポケモンザングース。
代々昔から、我々ハブネーク一族と戦い続けている種族。
「ブレイククロー!」
ザングースの鋭い爪が迫る。それに対し俺は
「ポイズンテール!」
強い毒を持った自慢の尾を叩き付ける。
ギィィィィィィンッ!
爪と尾が交わり合う。剣で戦うかの如く、爪が俺を裂き、尾がザングースを裂く。
「く……ッ!」
「ぐ……ッ!」
俺も“奴”も小さく呻き、再び距離を取った。
ちなみに俺は、これでも戦いは嫌いな方だ。
戦わなくて済む時は、出来るだけ戦わないし、相手を必要以上に傷つける事はしない。
そんな俺でも……“奴”との戦いを避ける事は出来ない。
俺の脳に記憶される太古の記憶、この体に流れるハブネークの遺伝子が、俺に『戦え』と語りかける。
多分、“奴”も同じ感じなんだろうな。
「行くぜッ!巻きつく!」
ギリィィ……ッ!
俺の長い体でザングースを巻き込み、締め付ける。
「ぐ……かは……ッ!」
ザングースは一瞬苦しげな呻きを漏らしたが……
「…ッ!みねうちッ!」
ドカッ!
「ぐあっ!?」
打撃をまともに喰らった。急所は外してあったがかなり痛かった……。
ダメージで一瞬巻きつきが緩んだ。その隙にザングースは逃れてしまう。
その直後
「電光石火!」
「つぁッ!」
物凄い素早さでザングースの打撃が入った。
だが、俺の懐に飛び込んで来てくれたのは幸運だった。
「毒々の牙!」
ガッ!
「いぁ……ッ!」
渾身の力で毒の牙をザングースの腕に突き刺した。
一瞬で牙の毒がザングースの体に回り、動きが鈍くなる。しかし、すぐに元の俊敏な動きに戻る。
(チ……ッ!“免疫”は厄介だな……!)
ザングースの特性は“免疫”。どんな毒でも一瞬で浄化しちまう、ザングース一族の厄介な特性だ。
俺達ハブネーク一族との長い戦いの結果、そういう能力を得たんだと俺は思ってる。
おっと。悠長に説明してる暇じゃねぇな。集中集中…っと。
「噛み砕く!」
「見切り!」
俺の攻撃を、ザングースは見切ってかわす。
しかし、それももうすぐ限界になってくる筈だ。
「ポイズンテール!」
「切り裂く!」
ギィィィィィンッ!
再び交わる爪と尾。
睨みつければ、ザングースも同じ様に鋭い瞳で睨み返してくる。
暫く俺達は組み合って力比べをしていた。
相手も俺も、力は全く衰えなかったが、ザングースは足元がふらつき始めている。
珍しい事もあるもんだ。
でも、俺には好都合だ。尾に力を込めて、ザングースの爪を振り払おうとした。
その時だった。今まで組み合っていた筈の爪の感触が失せる。
ドサ……ッ!
「 !! おい!どうした!?」
何の前触れもなく、ザングースが倒れた。まだ致命傷は与えてない筈だが……。
いぶかしみながらも、注意深くザングースを観察してみるとある事に気がついた。
白い毛に隠れてよく見えないが、ザングースの背には深い傷があった。
最初に会った時、戦いの構えを取るのがやけにゆっくりだったのは、その傷のせいだったらしい。
その時だった。
バァンッ!
「いたぞ!」
「例のザングースだ!」
「 !! 」
複数の人間達が、手に手に銃やら鎖やらをもってやってきた。
どうやら、このザングースが目的らしい。
え?奴らの手に渡すかって?
冗談じゃねぇぜ!こいつとの決着はまだついてねぇ!
それまでは人間なんかの手に渡してたまるかよ!
俺は背中に意識の無いザングースを背負い、思い切って水の中に飛び込んだ。
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