宿命――奴と俺 No,2

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俺とザングースは水に流されていく。
正直、こんなに激しい水の流れじゃ幾らポケモンとは言っても助かる可能性はあまり無い。
でも、人間どもにこいつを渡すのは嫌だった。
俺は、激しい水の流れでザングースと別れ別れにならない様に、しっかりと自分の体を巻きつけた。
その時、ふと気がついた。
(こ……こいつ…女!?)
その時だ。

ゴォォォォォォォォ……ッ!

水の激しさが増す。
滝が近付いて来るのが解る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ふと気が付くと、其処は緩やかな下流だった。
ザングースもまだ俺と一緒にいる。
それに無意識に安堵して、俺は岸に泳ぎ着いた。

夜――。
「……ん…ッ」
ザングースが小さく呻いて寝返りをうった。
流石に、傷を負っている上に暫く水の中にいたんだ。
更に体調崩させちまったかな……。
何ともなしに、ザングースに近寄ってその体に触れてみた。
先程まで使っていた水と同じくらいに冷たかった。
すると……
「……………」
ザングースが目を開けた。
「おい、お前。体は大丈夫か?」
意識がハッキリしない様なので声を掛けると、そいつの瞳が俺に向いた。
戦っていた時の、剣の様な色は既に無く、澄み切った穏やかな色だった。
不覚にも一瞬、胸が高鳴る。
暫く見詰め合った後、ザングースが静かに体を起こして訊いた。
「……お前は…?」
「俺はハブネークだ。なぁお前、人間に狙われてたみたいだけど、何かあったのか?」
「人間……?」
「ああ。さっき何人も追っかけて来てたぞ」
詳しく事情を説明してみるが、全く心当たりの無い様子でフルフルと首を振る。
嫌な予感がして、いくつか質問をする。
「お前の名前は?種族でもいいが」
「……さぁ」
「生まれは?」
「……さぁ」
「此処は何処だか解るか?」
「……さぁ」
「………………」
完全なる記憶喪失だ。
全く……妙な奴を拾っちまったもんだよ。
でも――
「お前、俺と戦う気はあるのか?」
「え?」
気が向いてそんな質問をしてみた。
すると、やっぱりそのザングースはよく解らないという顔で首を傾げる。
「私……戦わなくちゃダメなのか?……お前と?」
「……いや」

思いもしなかった。
出会えば…戦わなくてはならない宿命に在る筈の俺達ハブネークとザングースが……こんな形で解り合う事になるとはな。
ま、こんなザングースと一緒にいるのも悪くは無い。
最も……記憶が戻るまでの間かもしれないが。
そしたら、本気でやりあえるだろう。

「なぁお前。俺と一緒に行かないか?旅に」
「旅……?」

あの人間達と戦う事になるかもしれない。
身を守る為に戦う事になるかもしれない。
――だけど…こいつの記憶を取り戻す為の旅だ。


ハブネークとザングース、宿命の戦いで繋がっているこの二つの種族の歴史に、新たな歴史が綴られるかもしれない――。

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