時の狭間の中より来た手紙

さらりさんに感想を送る

 異世界よりの手紙

拝啓 そちらは暑いですか?こちらは暑いです。

 覚えていらっしゃるでしょうか。あの日、君がはじめてゲームを手にした日、覚えていらっしゃるでしょうか。

 君がはじめてバトルと言う言葉を知った日のこと、僕は覚えています。そうでした、アレは暑い日のことでした。君はまだそう、確か保育園くらいだったと思います。ぱちんと翠のランプのともった灰色のゲーム機を片手に、君は嬉しそうでした。

 水晶画面の向こうの世界から、君は僕を呼びかけました。今の時代には信じられないくらい、色も無く、細かさもありませんでしたね。それでも君は僕を呼びました。

「ふしぎだね!」

 僕は覚えています。嬉しかったです。何がって?そりゃぁ、君に出会えた事がですよ。僕はゲームの世界の住人でも僕は、たった一匹しか居ないんですよ。君も、たった一人です。それが嬉しいんです。分からなかったら、覚えといてください。いつかきっと分かりますから。

 早速ですが、思い出話をしても良いですか。君がはじめてバトルをしたときの話です。相手は僕の記憶力に間違いが無ければヒトカゲです。

 どうやるのか、説明書を読むのすら忘れて夢中になった君のことです。やり方には苦戦していたんでしょう。なかなか指示がこなくってちょっとビックリしましたよ。えぇっと、はじめの技は何でしたっけ。実は覚えていません。ごめんなさい。なんと言ったってもう十年程前の話ですから。時が流れるのは早いですね。そして、貴方が大きくなるのはもっと早く感じます。

 勝ちましたか?負けましたか?実はそれすらも覚えていないんです。でも、僕は楽しかった事は覚えてますよ。はい、もちろんです。

 君は電源を切ると、僕らをカバンの中に入れました。貴方のポケットは僕らが入るほど大きくなかったんです。これではポケットモンスターじゃありませんよね。

 僕はたくさんバトルをして、ふしぎだねからふしぎそうになりました。それでも僕はカバンの中です。君は大きくなりました。それでも、ポケットは僕が入るほど大きくありませんでした。所で君は進化したとき嬉しかったですか?そうだと僕も嬉しいです。一緒に過ごした時間の分だけ僕は大きくなるんですよ。

 しかし君は大きくなりました。時代も進みました。貴方はいつの日からかは忘れましたが、僕の事を少しずつ忘れましたね。少しづつ少しづつ。僕は正直言って悲しかったですよ。あんなに楽しそうだった君は僕の前から少しづつ少しづつ消えていくんです。僕だけじゃない。君と一緒にバトルしてレベルを上げてきた仲間達もです。

 キャタピー、コラッタ、ピッピ、プリン、ニャース、ポッポ・・・あぁ、挙げだしたら切りが無いんでやめますね。オーキド博士が言ってました。世界には151匹のポケモンが居るんだと。そのポケモンの数だけ思い出があるのだと。はい、僕もそう思いますよ。

 ゲームから離れてしばらくして銀色の見たことが無いポケモンのゲームを手にしていました。なんと、時代は進んでポケモンは増えたんだそうです。生命のふしぎですか?
 君はヒノアラシをパートナーにしていました。さらに次はミズゴロウでしたよね?

 そして君はもう一度離れました。大きくなったんです。君は大きくなったんです。僕は嬉しいですよ。でも会える事ならもう一度とは思います。あのハラハラわくわくの毎日が、心おどる日々が、懐かしいだけです。むかついた時もありました。それでも、今はただ懐かしいんです。

 そろそろお別れですか。あぁ、君のポケットにはようやく僕は入れそうな気がします。でも、僕は入れないかもしれませんね。もし暇な時にでも気が向いたら入れてください。貴方を異世界にお送りします。あの心から楽しいと思ったバトルして強くなって、進化して、嬉しかったあの日の世界へ。君のポケットの中より君の元へ飛び出して。

 ようやく僕はポケットモンスター・・・縮めてポケモンになれます。

ふしぎだね

P.S 僕の名前がひらがななのは、君がまだカタカナを読めなかったからだったね。




異世界からの手紙
 
Dear ふしぎだね

 忘れません、覚えてます。何時だって、そして今だって、私のポケットの中に君は居ます。最初から君は居ました。十年前のセピア色にあせた昔話です。それでも、君は灰色の君は、様々な色に囲まれて確実に私の心の中に居ます。
   
                        by 私

戻る