貴女は何故闘うのでしょう

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――彼女が己に課した宿命――

A「う……」
F「目が覚めたか?」
永久氷壁の山、その奥の洞窟の中でフリーザーは薬草を用いて、アブソル
の手当てをした。
その数時間後、目覚めた彼女は不思議そうに辺りを見回して言った。
A「お前は……?」
F「私の名はフリーザーだ」
A「フリーザー……。お前が助けてくれたのか?」
F「まぁな。所で、何故人間に追われていた?」
A「……私達アブソルの一族は、災いを予知する能力(チカラ)がある。だから私は山を下り、皆に警告する」
フリーザーは一瞬唖然としてアブソルを見返した。
F「人間たちにか……?」
A「ああ」
沈黙が流れた。
再びフリーザーが口を開く。
F「しかし……人間達はお前を“災いの化身”と呼んでいた…」
A「それは承知している。私が姿を現す度に、災いが降りかかるのだから…私が災いを呼ぶ者と思われるのは当然だろうな」
F「………………」
真紅の瞳を伏せて淡々と言うアブソルを、フリーザーはマジマジと見つめた。
その中で、ふとそのアブソルが美しい事に気がついた。
じっと見つめていると、アブソルが怪訝そうな表情になる。
A「……どうかしたのか?」
F「あ、いや。なんでもない」
見惚れていたとも言えず、フリーザーは慌てて意識を引き戻す。
そして……
F「アブソル。私と共に来ないか?」
A「え……?」
アブソルの瞳を静かに見返し、フリーザーは続ける。
F「私は明日……他のポケモン達と共に別の世界に行く。其処はポケモンだけが住む世界だ。人間に迫害される事なく、平和に暮らしていける」
A「……悪くは無い話だ。しかし…私には災いを知らせると言う宿命が在る」
F「宿命…?宿命とは誰が決めた?」
A「私自身だ」
再び沈黙が流れる。
暫くして――
F「何故…?何故人間などに警告をするのだ?我らポケモンを迫害し、己の私利私欲の為に生きる輩などに……!」
A「ああ…。確かにこの能力(チカラ)を使って、人間達に災いを知らせても何の利も無い。……だが、私は見届けたいのだ」
F「見届ける……?」
アブソルは頷き、言葉を続ける。
A「……自然との闘いの結末を…。もう…私以外のアブソルは、人間達に災いの警告をする事はなくなった…。だが私はそれではいけないと思った。人間達はもう…忘れてしまっただろうが、私達ポケモンも、人間も同じ自然の一部…同じ世界に生きる者として…災いから逃れる術(すべ)を与えるべきだと思った。それで迫害されたとしても、この私の存在を警告として受け取って貰いたいのだ」
F「……その宿命――辛くは無いか?」
A「辛い。だが……それでも私は、私の宿命を貫く。災いを知らせる事でしか、私の存在価値はないのだから」
その言葉にフリーザーは思った。
F(強い……。何故彼女は此処まで強いのだろう……)
アブソルは自らに課した宿命を貫き、闘っている。痛々しいまでに……。
F(何故、闘う事が出来るのだろう…)
A「どうした?」
急に黙り込んだフリーザーに、アブソルは問い掛けた。
フリーザーはふと我に返り、言った。
F「そんな事は無い。生きて此処に存在する事が存在価値なのだ。アブソル…私と来い!」
強さを秘めたフリーザーの声に、アブソルは目を見開く。僅かに瞳が潤んで、フリーザーはそれを美しいと思った。
F「その世界は、一匹一匹のポケモンが己の存在を誇りに思って過ごせる世界だ。だから―――」
A「フリーザー……」
アブソルは瞳を伏せて小さく答えた。
A「私を…私が初めにいた場所の近くに在る街へ連れて行って欲しい。せめて…私のこの世界での最後の警告で、救われた者がいるか、見届けたい」
F「……解った。私の背に乗れ」


少しして――。
フリーザーは街の見える崖の上に降り立った。
アブソルは足を引き摺りながらフリーザーの前に出る。
眼下の街では、土砂崩れにより大半の建物が埋もれていた。
しかし、其処に住んでいたらしい人間達は皆、街から離れた場所にいた。
F「どうやら…土砂に埋もれる前に逃げ遂(おお)せたらしいな」
A「ああ…。その様だな」
F「では……アブソル」
A「解った。頼む」
F「ああ」
その時だった。

*「あッ!いたぞ!アブソルだ!」
*「しかもフリーザーも一緒だ!」
銃を持った人間達が二匹の背後に現れた。
*「丁度良い!災いの化身を葬り去り……ついでに伝説のポケモンまで手に入れる機会を得るとはな!」
*「フリーザーには傷を付けるなよ!」

ガツッ!

A「ソル……ッ!」
F「アブソル!」
一番前にいた人間が、銃身でアブソルを殴りつけた。
F「これ以上此処にいてはならない!行くぞ!」
フリーザーはアブソルを乗せ、すぐさま其処から逃れた。


翌日――。
フリーザーはルギア達とアブソル、ルギア達が選んだポケモン達と一緒にポケモンワールドに飛んだ。
フリーザーは北方の地、樹氷の森の守護者として其処に住み、アブソルも其処にいた。
しかし、暫くしてアブソルはまた闘いの旅に出た。


そして、時が流れたある時の事――
樹氷の森にフシギダネとヒトカゲが現れた。
その二匹はフリーザーを相手に果敢に戦い、フリーザーを倒した。
ヒトカゲ(以下H)「フリーザー聞いて!今、この世界のあちこちで自然災害が起こってて、そのせいで色んな場所が荒れてるんだ!樹氷の森の異常も、自然災害の影響なんだよ!」
F「信じられるものか!」
そう言って、再び二匹に襲い掛かろうとした時
A「待て!」
アブソルが現れた。
A「この者達の言う事に偽りは無い。自然災害は今、至る所で起きている」
F「ほ、本当なのか……?」
聞くまでも無い事は既に知っていた。
アブソルはあの時のまま、何も変わっていない。今も己の宿命と闘っているのだから――。

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