強さを追い求めて(続き)
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休憩も終え、身体の痛みも治まったところで2人は立ち上がった。
「ではそろそろ、人間同士に限らず」
「自ら鍛えたポケモンで競うか? いいだろう」
「弟子同士を戦わせる、といったところですかね」
「だろうな」
互いに荷物からモンスターボールを取り出す。
「俺は格闘タイプをメインにしている。そっちはどうだ?」
「私はノーマルタイプを。相性としてはそちらの攻撃が有利ですが、気にしません」
「攻撃だけだからな。受け流せばどうとでもなる」
最初から戦わせるポケモンは決まっていた。自慢の1体が入っているボールを手に、先ほどまで手合わせをしていた板の間・・・バトル場で向かい合う。
「言うまでも無いが、1対1で場外無し。存分に戦わせてやろうじゃないか」
「もちろんですとも。では・・・、出て来い、ヤルキモノ!」
「行けッ、ニョロボン!」
それぞれのボールから飛び出したのは、シジマは上半身に隆々とした筋肉のついたニョロボン。センリは獣らしくしなやかで瞬発力のある筋肉を持ったヤルキモノ。
即座ににらみ合い、いつでも飛びかかれる体勢のまま すり足で距離をつめあう。
「ニョロボン、ですか?」
「あぁ。格闘タイプのほかに水タイプも持っている。そっちのポケモンは?」
「ヤルキモノという、純粋なノーマルタイプです。しかし水タイプ・・・・・・『みずでっぽう』は勘弁してくださいよ?」
「わかってる。この場でそれは反則だな。・・・・・・ニョロボン、相手を掴め!」
距離を見計らってニョロボンが動いた。上半身の割りに小さな下半身で大きく踏み込み、ヤルキモノの両肩を掴む。後ろへ向けて『じごくぐるま』をしようと足を前に出すと、
「ヤルキモノ!」
同時にヤルキモノが動いた。ニョロボンの両腕を下から掴み、さらに足を前に出してニョロボンの足を食い止める。
つかみ合い、足の裏を合わせあったまま2体の動きが止まった。それも一瞬のこと、同時に手を離して揃って飛び退いた。
「『みだれひっかき』だ!」
今度はヤルキモノから。両手の爪を立て、反撃の余裕を与えずに爪を振るう。
休むことなく続くヤルキモノのラッシュ。ニョロボンもすべてをさばこうとせずに守りの体勢に入った。
「さて、どんな反撃をしますかな?」
ヤルキモノの『みだれひひっかき』は一撃一撃にそれそこそこの威力があった。あまり長く耐えられるものでもない。
「一応、反撃の方法は教えてあるんだよな。・・・ニョロボン!!」
合図一声。守りの体勢のままニョロボンが体当たりをした。とっさに後ろへ飛びのくヤルキモノだが、存外ニョロボンの踏み込みは長かった。懐に入り込まれ・・・、
「『じごくぐるま』だ!!」
今度は対処の仕様が無かった。
両手足で組み付いてニョロボンが前転を繰り返す。背中と後頭部を何度も打ちつけ、ヤルキモノの体力が大きく削がれていった。
そして、ヤルキモノにのしかかる形で前転を止め、ニョロボンが右拳を構える。
「まさか! ヤルキモノ!!」
「ッ!? おい、ニョロボン!! そいつは―――!」
『ばくれつパンチ』がヤルキモノの胸に叩き込まれた。
「やっちまったか・・・!」
シジマの顔に苦渋の色が浮かぶ。あの状況で追い討ち、しかも『ばくれつパンチ』とは。最悪の場合、本当に“トドメ”になってしまうかもしれない。
「スマン・・・、ニョロボンがやりすぎちまった。ヤルキモノを―――」
「謝るには・・・・・・まだ、早いようですよ?」
センリの表情は驚きと安堵の混じったものだった。
「・・・なに?」
センリの言葉の意味を理解するより早く、ヤルキモノの両足がニョロボンを蹴り飛ばした。
「おぉッ!?」
「ギリギリで『こらえる』が発動したんでしょう。まだ戦えるようです・・・!」
自分の力でヤルキモノは立ち上がった。ややふらついているところを見ると、あと一撃で限界だろう。くらうにしろ、撃つにしろ。
「こんな状態だからこそ効果のある技を、ヤルキモノは使えるんですよね・・・・・・・・・ヤルキモノ!!」
ヤルキモノが走り出した。最後に一撃与えるため、踏み出す足と撃つ込む右手に力をこめる。
「ならば・・・・・・ニョロボン、カウンター狙いだ!!」
男らしく真っ向から迎え撃つつもりのシジマ。ニョロボンも同じ思いのようだ。真っ直ぐヤルキモノの方を向き、右半身と右拳を引き、重心を低くして、必殺の一撃を構える。
「ァアアアアアアアア!!」
「ォオオオオオオオオ!!」
互いに全力をこめての一撃。
その一撃・・・ニョロボンの『ばくれつパンチ』を、ヤルキモノは額で受け止めた。
「ッ!?」
歯を食いしばり、足の爪を地面に食い込ませ、『こらえる』を発動させてヤルキモノは押し切ったのだ。
「―――――ッ!!!」
『きしかいせい』のアッパーが、ニョロボンの腹をえぐった。
宙に打ち上げられるニョロボン。そして倒れるヤルキモノ。
「勝負・・・」
「あったな・・・」
勝敗は完全に“引き分け”だった。ヤルキモノはもう戦う体力が無く、ニョロボンは最大威力の『きしかいせい』が直撃。双方、起き上がることもできなかった。
「しかし根性のあるヤルキモノだな。『ばくれつパンチ』を2度もこらえるなんて」
「私も驚きです。かなり無茶をしたとしか思えませんが・・・。それはそれとして、そちらのニョロボン。体格の割りにフットワークの軽いことで」
「おう。練習にスクワットや水泳を欠かしてないからな。脚力もなかなか鍛えてあるんだ。・・・・・・それより、そろそろこいつらも回復させてやったほうが良いんじゃないか?」
「おっと、お話は中断ですね」
互いのポケモンをボールに戻し、2人の男はポケモンセンターへと向かった。
ポケモンたちも回復してもらい、その間から談笑するセンリとシジマ。そろそろ帰りの船の時間が近いというところで、センリの方から会話を終わらせた。
「・・・ん? おや、時間が・・・。スミマセン、帰りの船が近いので今日はここまでで」
「お、そうか? 今日はなかなか楽しかったぞ。余裕があったらまた来い。胴回りを絞って待ってるからな」
そういって自分の腹を叩くシジマ。イヤに良い音がした。
「ハハハ、ならばこちらはもう少し体力をつけてきましょう。まぁ、そちらからホウエンに来ていただく、というのもありますが」
「それもそうだな。そのときは歓迎してくれよ」
「わかってますよ」
「おぅ。それじゃ、達者でな」
「えぇ、お互いに」
そうしてタンバシティを去っていくセンリを見送り、シジマは本日の練習メニューを決めた。本日は・・・、
「ちょっくら、泳ぐか。たまには向こう岸まで」
今まで以上に厳しいメニューで自分を高めよう。それが格闘家の“仕事”だった。
以上
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