卓上の理論
わたぐもさんに感想を送る
ああ、神様。
オレが一体、どんな罪を犯したというのでしょう。
『卓上の理論』(前編)
オレは目の前の状況に、思わず信じてもいない神様に問いかけた。
あれか。子供の頃、トイレのスリッパを常に左右入れ替えてみたり、
親父の眼鏡に指紋付けまくったり、お隣のペットのガーディを幾度と無く
脱走させたりしたのが今、因果応報で返ってきてしまったのか!?
・・・いやいや待て待て、落ち着け、オレ。冷静に考えろ。
因果応報は過去にした自分の行いが返ってくるってコトで、でもオレは今までトイレの
スリッパが逆さで困ったりしてないし、眼鏡かけてないしガーディも飼ってない・・・つまり、
これは因果じゃなくて・・・うん? あれ? ・・・わかんなくなってきた。
って違う。そんな事を考えるんじゃない。
「どーしてくれんだ、このバイク! べっこりじゃねーか!!」
「あー・・・いや、バイクもべっこりだけどオレとオレの自転車も結構重傷なんで、
ここは痛み分けってコトで許してもらえませんかね・・・」
「あ? ・・・てめぇ、ふざけんな!」
ふざけるも何も金なんか持ってないしなぁ。
たまには運動するかー、なぁんて健康的なことを思い立ったが運の尽き。
はるばるサイクリングロードまで足を伸ばしてみれば、
坂道の途中で自転車のチェーンがブッツリいって、
うわやっべぇ止まんねぇ状態で突っ込んだのは、暴走族の兄ちゃんたちの溜まり場だった。
バイクべっこり。オレげっそり。
「バイクの修理代と慰謝料、きっちり払ってもらおうじゃねーか!」
「ついでにそのキレーな顔にも傷が付くけどなぁ・・・!!」
「いやあの、頭下げるんで勘弁して下さい・・・」
マジで金は無いんですー!! イタイのは自業自得だけども!!
万年ジリ貧のオレの財産っつったら家に忘れてきた財布の2356円と、
この前知り合いにもらったハートのうろこぐらいのもんなんですー!!
と、いうわけで。
「するかぼけェッ!! せいぜい歯ァ食いしばれ・・・・・・ッ!?」
「すいません、じゃあ逃げます」
その次の瞬間、オレの体は宙に浮いていた。
自転車に次いで、目下オレのアッシーとなりつつある、ネイティオの『シータ』。
身体の割には力持ちで、オレを乗せて軽々空を行く。・・・まあ、念力だと思うけど。
ていうかゴメン兄ちゃん。
バイクは自己負担でヨロシク、あとできたら放置した自転車処分しといて下さい。
☆☆☆
まーそんなカンジのことがあってから15分後、
オレはセキチクシティのポケモンセンターで、一息ついていた。
・・・ありゃ、何か白い帽子の少女がこっちを見てる。
ミニスカートで大変よろしい・・・ってオッサンかオレは。
腰にボールが付いてるところを見ると、ポケモントレーナーみたいだ。
年は10歳か、そのへん。・・・旅してるのかな。だったらスゴイなー。
オレが10歳のころなんて、地元の岩山トンネルで大冒険だったよ。
「ねえ」
おっと、話しかけてきた。
何だいお嬢ちゃん。
「お兄ちゃん、弱いの?」
ぐっさぁッ!!
しょうじょ の しねしねこうせん !
きゅうしょ に あたった !
こうか は ばつぐんだ !
ちょ、ちょ、おにーちゃんは今深く傷ついたよ!?
ヤブから棒になんだこの子ー!!
「な、何でそんなコト言うのかな・・・?」
「だってさっき逃げたじゃん」
「さっきって、・・・サイクリングロード? え、あれ、見てたの?」
「うん。飛んでったから、追っかけてきたの」
「・・・えーと、“そらをとぶ”使えるの?」
「使えるよ。もうバッジ8個持ってるもん」
何ィーーーッ!?
こーんな年端もいかん少女に、カントーのジムリーダーはことごとく敗れ去ってしまったのか!?
末恐ろしいっつーか、すでに恐ろしいっつーか・・・。
「じゃあ、ポケモンリーグ挑戦とかするんだ?」
「うん。でもその前に、あたしもポケモンたちも気分転換が必要だと思って、
サイクリングしてたの。そしたら遠目に、あなたが暴走族に突っ込んでるのが見えたから、
巻き込まれないように避けて通り過ぎようとしたんだけど・・・」
あれ、・・・な、なんか睨まれてる!?
「あなたが逃げるから、あたしが因縁付けられて、あれから大変だったんだから!!」
「へっ、あ、そうなんだ・・・」
「そうなんだ、じゃないよもう・・・。お兄ちゃんオトナなのに何で逃げたりするの?」
「いやー、法的にオトナは20歳で、オレはまだ18歳と4ヶ月半、」
「あたしより6歳と8ヶ月も年上じゃん、何であんなのに勝てないの!」
『あんなの』ですか。確かにまだ15分しか経ってないもんな・・・瞬殺?
やっぱりこれくらい才能と根性と勢いが無かったらこの年で旅はムリなのか。
「わかった、じゃあ勝負だよ!」
「は?」
・・・もしもーし。どーゆー話の流れで何がわかったんでしょーか。
オレなんか聞き逃してた!?
「実はあたし今お金無いの。さっきの暴走族からちょっとは拝借したけど、
心持ちもうちょっと欲しいかなって。お兄ちゃんさっきのお詫びにあたしと勝負してよ。
あたしが勝ったらお金ちょうだい?」
少女にっこり。オレ真っ青。
・・・だから、オレ金ねぇーーーーッ!!
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