TALE

久方小風夜さんに感想を送る

へぇ……君が人間に造られたっていうポケモンか。
うん、噂は聞いてるよ。戦うためだけに作られたんだって?

……え?何言ってるの?
嫌だよ。僕は君を僕らの仲間とは認めない。

……はぁ、しょうがない。わかったよ。
君が僕を倒せたら……君を僕らの仲間に入れてあげるよ。

そのかわり……。




TALE
―Myth of Imitation and Original―




人目のない、どこまでも続く荒野。
よく目を凝らすと、そこにはいくつかの影があった。
荒野の中心をぐるりと取り囲む陰、数は20ほど。
ルギア、フリーザー、デオキシス、ジラーチ……。世間で、『伝説』もしくは『幻』と呼ばれるポケモンたち。
その輪の中に、また2つの影があった。

1つは白と紫の大きな影。
もう1つは薄い桃色の小さな影。

「ミュウ、ミュウツー、準備はいいか?」
「もちろん、いいよ」
「ああ」

2つの影……ミュウとミュウツーが返事をしたのを聞いて、ルギアとホウオウがうなずいた。
ルギアが天を仰ぎ、口からまばゆいエネルギー弾を打ち出す。
それが炸裂すると同時に、ホウオウの声が響いた。


「バトル……スタート!」


声と同時に、ミュウツーが動いた。
3つ指の両手を合わせ、紫色のサイコエネルギーを集める。
ミュウはその場に浮かんでいるだけで、全く動こうとしない。
ミュウツーは、両手にためた強力なサイコエネルギーを、ミュウに向かって放った。


ぱしんっ……。


ミュウはしっぽをすっと振った。軽い音を立てて、エネルギーが弾かれた。
何度も何度も、ミュウツーはサイコエネルギーをミュウに放つ。
それをいとも簡単に、まるで寄ってくる蚊を払いのけるように、ミュウは弾く。

明らかにわかる、圧倒的な力量差。
ミュウツーは焦った。恐怖によく似た焦りだった。


「もう、終わり?」


動きの止まったミュウツーを見て、ミュウが言った。


「じゃあ、僕、そろそろ行くよ」


そういった瞬間、ミュウの姿が消えた。
行方を捜す間もなく、ミュウツーの腹に激痛が走った。
ミュウの強力な蹴りが、一瞬にしてミュウツーの腹部を捉えていた。

ミュウツーは瞬時に反撃を試みる。
しかし、攻撃が当たるより前に、ミュウは上空へ回避していた。

ミュウの周りを、桃色のサイコエネルギーが覆う。
ミュウツーが防御に入ったその瞬間、ミュウはサイコエネルギーをミュウツーに放った。


防御など、何の役にも立たなかった。
ミュウツーは勢いよく、その場から吹き飛ばされた。

「……っ!!」

体勢を立て直そうとしたミュウツーの目に、再び自分に向かってくるミュウが映った。
強力なエネルギーを身にまとい、止めを刺さんとしている。


すっ……。
ミュウは、ミュウツーのところへ届く前に動きを止めた。
2匹の間に、緑色の龍……レックウザが割って入っていた。


「そこまでだ、ミュウ。もう決着はついてる」


レックウザの言うことに、周りで傍観していたポケモンたちもうなずいた。
どこからどう見ても、勝敗は明らかだった。


ミュウは、力なく倒れているミュウツーのほうへ向かった。

「さあ、約束だ。君が負けたら、僕の言ったところに閉じ込める約束だったね」
「……っ……」
「ハナダシティっていうところの外れに洞窟がある。君はこれから一生、その奥で暮らすんだ」
「……なぜ……なぜ勝てないんだ……。戦うために生まれた私が……貴様なんかに……」

ミュウはミュウツーの顔を覗き込んだ。

「戦うため『だけ』に造られた君が、僕らに勝てるわけないだろう?」
「!?」
「君じゃあ、ここにいる誰にも勝てないよ。ただ戦う『だけ』の、君じゃあ」
「……それは……どういう意味だ……?」

ミュウはクスクスと笑った。

「じゃあ、それを君の課題にしよう。それがわかったら、洞窟から出ていいことにするよ。わかれば、ね」



何かを護るために戦うと人は言う。
しかし、何を守るというのか。
互いが何かを護るために戦うなら、それは護ることになるのだろうか。
相手の護るものを破壊するための戦いではないのだろうか。

護るためには戦うな。
戦いは、戦いのための戦いでしかないのだから。



護るために剣を置けないなら……今以上の強さを手に入れることは出来ないのだから。

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