王女の憂鬱

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「暇…」


ある国の王女は小さくため息をつきました。
年に一度だけ開かれるバトル大会。
今はその大会の真っ最中なのですが王女はバトルに興味がない上に毎年の優勝者は大抵決まっていて
バトルスタイルもマンネリかしつつあるため…彼女にとっては暇としかいいようがないのです。


「ねぇ、もうこんな行事なくしちゃえば?…夜のパーティーだけ開けばいいじゃない」


王女は父である国王に訴えますが
「これは伝統的な行事であるため今更やめにするわけにはいかないんだよ」とはねのけられてしまいます。

ぶっちゃけ国王もその口調からしてあんまり楽しそうではありませんでした。




「こんなつまんないもの…私の代でやめさせるべきだわ」

王女はそう決心し夜のパーティーで国民に盛大に訴えました。


「大体ポケモンを戦わせるという事自体おかしな事なのです。
ポケモン達にして見れば自らが望まないケンカをしているようなものです。
まったく…なぜ私の先祖はこんなつまらない事を思いついたのでしょう」

と、先祖を盛大に非難し目元を潤ませながら続けます。


「こんなにも愛らしい生物を戦わせるなんて…この子達は私たちと共に、仲良く生活すべきではないのでしょうか」


王女の訴えに最初は戸惑っていた国民達も徐々にこれは最もだと思い始め、
いつの日か人々はバトルをしなくなりました。


王女はそれはそれは満足でした。
しかし時が経ち王女が国を治めるようになった時、他の国が王女の国を侵略しようと試みました。


言うまでもなく、王女はあせりました。
今の自分の国にはまったくと言っていいほど戦力などない。


途方に暮れた王女は隣の国の王子に手を貸してくれないかと頼みました。
隣の国はバトルが盛んに行われとても強い国だったからです。

それ故に今までは嫌って一切関わろうともしなかったのですが。
しかし王子は都合の良い王女の頼みを快く受け入れてくれました。


結果、王女の国は何とか難を逃れました。





「ねぇ王女様、どうして貴女の国の人達はバトルしないの?」

王子にとってはポケモンバトルをしない国というのは珍しいらしく不思議そうに王女に尋ねます。

「それは……」

バトル好きな王子に自分の意見が理解できるだろうか、と思いつつ王女は自分の意見を述べ、王子の反応を伺いました。

「うん、貴女の言う事も一利あると思うけど今のままじゃまた攻撃されてしまう…ねぇバトル大会復活させなよ」

それを聞くと王女はあからさまに顔をしかめましたが実際国民のほとんどが復活を望んでいました。








数年ぶりの大会の日。
国民は久々のバトルに興奮し、会場は熱気に包まれていましたが王女の表情はそれとは反対に冷たいものでした。


「王女様…冴えない顔だね」

「王子…いらしたのですか」

「隣いい?」

「え?えぇ…どうぞ」

突然の王子の申し出に戸惑いつつも隣にもう一つ椅子を用意させます。
王子はその椅子に腰掛けると王女の方を向き問い掛けました。

「…貴女がこの大会をなくしたって言うのは本当?」

「…え?…えぇ、まぁ…」

「どうして?」

「その…前にも述べましたが…こんな野蛮な…」

「そうじゃなくて本当の理由…僕はそれを聞くためにここに来たの」

王子は王女の言葉を遮ると鋭く王女を見据えます。


「別に怒らないから…本当の事を言って」

王子の真剣な表情にここで嘘をついても仕方がないと思い王女は正直に言いました。

「…暇だったからです」

王子はまじまじと王女の顔を見つめ王女は下を向いて顔を赤らめました。

「ぷっ」

とたんに王子は吹き出し今度は王女が驚いて王子を見つめます。

「ねぇ王女様、ポケモンバトルしたことある?」

王子の質問に軽く左右に首を振ると王子は立ち上がり大声で国民に呼び掛けました。


「みなさーん…盛り上がっている所大変申し訳ないのですが今から
僕と王女様でポケモンバトルをしたいと思いまーす」

「な…ちょっと貴方!」

「大丈夫…僕も数えるほどしかバトルしたことないし」


呆気にとられている王女の手を引きステージに立たせ王子は向かい側に立ちます。


「ルールはとくになし。ポケモンだして戦うだけ!…それ投げてポケモン出すの、いい?」

「そ、それくらいわかってますわ」


それこそ何度もいやというほど見てきたのですから。
王女は内心やけくそになりながら王子に無理矢理握らされた赤と白のボールを思いっきり投げました。




そこからはあまり王女の記憶はありませんでした。
王女はただただ無我夢中で指示をだし今まで幾度と見てきたバトルを思い出しながら戦いました。


でも、いつのまにかバトルが終わっていた時には王女は今までにない最高の笑顔で笑っていました。




その後、王子と王女は結婚し二つの国は二度と侵略を受けることはありませんでした。
ちなみにバトル大会には王子と王女が参加する事が必須条件になったとか。

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