儚(ヒトユメ) 其の三

わたぐもさんに感想を送る

朝だった。
ひんやりとした空気が毛布の間を縫って入ってくるのが嫌で、
頭からすっぽりと被り直す。
人間の建物で迎える朝は静かで、本当に静かで、気持ち悪い。

もう少し寝てよう。
毛布に潜りながらそう思って、・・・思っ、て。

・・・あれ。
・・・・・毛布?



『儚(ヒトユメ)』

其の三



飛び起きた。
何で私毛布なんか被ってるんだだって昨日眠りに落ちたときは確かに何も。

・・・私が被ったんじゃなかったら、誰かが被せたに決まってる。
誰かって、そんなの、1人しかいないじゃないか。

余計なことを。

だからあんな夢を見たんだろうか。
幸せで。でもちょっと悲しくて。
夢の終わりに泣きたくなるような。

―― 君と友達になりたいな ――

・・・なれるわけない。
こんな、自分でも分からないような、あやふやで、ぐちゃぐちゃな気持ちで。
叶うはずのない夢を見てちょっと幸せな気分に浸って、現実からは逃げ出して。
終わらない夢なんかないのに、最後を知りたくはないから追うのは怖くて。

リマはまだ寝ていた。
私に背を向けて。頭から布団を被って。

・・・どんな思いで、この毛布を手に取ったんだろう。


私が眠るのを待って。(意地っ張りな私だから)

気配を殺して。(起こさないように)

きっと、おやすみって。(囁くように)


そっと、そっと、そっと。
傷つけないように。傷つかないように。
(私はキミを傷つけたのに)

夢を見る。
今でも、夢を見る。
叶わないって知ってることを、心の何処かで信じてる。


(でも、別の道もあるなら)
(彼じゃなく)
(キミが)
(抱きしめてくれるなら)

(そういう夢も、あるなら)


「・・・う、ん・・・・・へくしっ!」

相当寝起きが良いらしい。
小さなくしゃみと共に、ぼんやりとリマが起きあがった。
ぱちり、と目が合う。

「え、と・・・うん。おはよう」

ユキ、と。
短く呼ばれたその名前は、決して私の名前ではない。
生まれてすぐに、彼にもらった名前。
今はもう、誰にも呼んでもらえないけれど、記憶の中で彼が呼ぶから。

・・・そう、だから。

名前を呼んで。いつか私の名前になるように。
キミがくれた名前、何度でも。返事がなくても諦めないで。
彼の声と同じくらい、たくさん、たくさん。

『君の名前は、ユキ』

一面の白。陽の光。
輝く世界。冬の幻。

一緒においでって言うのなら、仕方がないからついて行く。
キミが私を捨てないで、友達になりたいって言うのなら。


キミと、友達になりたいな。


そして、・・・そう。
いつか。

キミの夢が見たい。
キミに抱きしめられて、幸せに笑う夢。



(そんな、しあわせなゆめ)

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