長き夢 グラエナ
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夢というのは……
残酷だ。
「……母上」
夜。切り立った崖の切っ先で、月を見つめる影が1つあった。
黒や灰色の体毛、鋭い紅色の瞳、そして鋭い爪がついた前足と強力な脚力を持つ後ろ足が2本ずつ、計4本。
種族名、グラエナ。狼のような容姿とは裏腹に、集団で行動する種族である。が、このグラエナは文字通り一匹狼であった。
昔はちゃんといた仲間も、今となってはいなくなっていた。皆、敵に襲われ、捕まったのだ。
グラエナ達も含め、全てのポケモンの敵であるニンゲン、という種族にだ。なにやら不思議な赤と白の球体を投げつけられ、仲間は捕まっていった。
その後、仲間はすぐに外に出された。グラエナはその頃まだ小さく、ポチエナだったために、その後起こった光景は心に傷として今も尚残っている。
襲ったのだ。さっきまで仲間だった同じ種族を。
「……母上、どこに居られるのだ?」
グラエナはまだ月を見つめる。そして、遠吠えをした。
瞬間、走った悪寒。茂みの中から背中に向けられるいやな視線。
(……10体)
グラエナは飛び出した。そして、急な崖を迷うことなく駆け下りていく。
下は川だった。普通の川ならよかっただろう。
だが、川は昨日の大雨によって増水していた。荒れ狂う水面は全てを飲み込んでしまいそうである。
グラエナは水面近くまで駆け下りると、後ろ足に力を込めて川の真ん中にある岩までとび、さらに向こう岸まで渡ってしまった。
そして、今度は前足に力を込めて急な崖を駆け上っていく。
「……奴らに渡ることは不可能……か」
グラエナが先ほどまでいたところにはデルビルやヘルガーといった種類のポケモンたちが10体居た。
グラエナはそれを見ると、デルビルたちに背を向け、歩いていく。
そして、月を見上げた。
(……母上、必ず。必ず生き残ります。
例え、悪に身を染めようとも)
グラエナは大きな木の上で眠った。どちらかといえば、木の上のほうが安心なのだ。
グラエナはここで、夢を見る。
長い長い……どんなものよりも長い夢を。
果たして、その夢がいい夢なのか、悪い夢なのか、知る者はいない。
そして、そのグラエナは二度と、目を覚ますことは無かった。
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