―時代が泣いている―
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誰かに敷かれたレールの上を 歩いていくことは楽だけれど
道もない荒れた原野に レールを作るのは苦しい事さ
―時代が泣いている―
マサゴタウンにあるナナカマド研究所。
そこでは、研究員達が何やら慌ただしく部屋を整えている。
そう、今日は新人トレーナーとなる子供が、初心者用ポケモンをもらいに研究所を訪れるのだ。
「どうだね、準備の方は。」
そこに、この研究所の責任者、ナナカマドが現れる。
「あ、はい。こちらの方は大丈夫です。」
「あの3匹はどうだ?」
「そちらも問題ありません。3匹とも元気ですよ。」
「それはよかった。」
ナナカマドが研究員とそんなやり取りをしていると、研究所に1人の少年が入ってきた。赤いベレー帽をかぶり、背中にバックを背負った少年。
「すみません、ここがナナカマド研究所ですか?」
少年は尋ねる。
「早速来たようだな。噂をすれば影だ。」
ナナカマドはその少年の許へ向かう。
「そうとも。君が、ポケモンをもらいに来たコウキ君かね?」
「あ、はい、そうです。」
少年は答えた。
「そうか。よく来てくれたね。じゃ、早速入ってくれ。」
ナナカマドはそう言って、少年――コウキを研究所の中へ案内した。
ナナカマドはとある研究室にコウキを案内し、初心者用の3匹のポケモン――ナエトル、ヒコザル、ポッチャマを彼に見せた。それを見たコウキは喜びの表情を浮かべ、どれを選ぶか悩んだ。そんな時、ナナカマドは尋ねた。
「君は、やはりポケモントレーナーを目指してここに来たのかね?」
「いや・・・正確に言えば、そうじゃないんです。」
「何と!?」
ナナカマドはコウキの意外な発言に驚いた。
「僕は、正直言って『夢』がないんです。自分でもこれから何すればいいのかなって思って・・・その時、僕は考えたんです。ポケモンと一緒に旅をすれば、何か将来の事が見つけられるんじゃないかって思って・・・」
だけど 遠い向こうも知らなくちゃいけない
僕達は これからなんだ
コウキが結局選んだのはナエトルであった。パートナーと出会えた嬉しさからか、満面の笑みを浮かべたナエトルと共に研究所を後にするコウキを、ナナカマドは見送った。
「『夢』を探すためにポケモンをもらいに来たなんて、変わった子ですね、彼。」
研究員の1人が言った。
「・・・最近、『夢』を持たない子供が多いと聞く。昔はそうでもなかったのに、世の中も変わったものだよ。社会はそんな人間を必要としているというのに・・・」
ナナカマドがつぶやく。
「・・・なら、我々はそんな子供達に『夢』を与える事も大事になってくるって訳ですね。」
「・・・そういう事だな。さあ、戻って仕事を続けるとしよう。」
「はい。」
ナナカマドは研究員と共に研究所に戻って行った。
“夢を忘れた子供達”と人は言う
ああ 時代が泣いている
終
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