零れ散る砂
あきはばら博士さんに感想を送る
ここは砂嵐が吹き荒れる砂漠
そのためにここに住めるものは自然と淘汰されて限られていく。
あらゆる外敵も、この砂の守りの前に引き返していった。
引き返さないものは、僕たちの餌食となった。
携帯獣界、節足動物門、龍形動物網、網目蜻蛉仮目、薄翅蜻蛉仮科幼生、和名ナックラー。通称《アリジゴク》と呼ばれる僕たちはこうしてこの過酷の環境を孤独に生きてきた。
2ヶ月前、そんな生活をおびやかす奴が現れた。
寡聞にして知らないが、どうやら外の世界でポケモンたちを支配するという人間のようだった。たまにやって来る事はあっても、一匹二匹仲間を捕まえてすぐに立ち去っていくそうだ。
まあ僕がそんな認識なのは、そんな支配者も好きこのんで来る場所ではないという証拠なのだろう。
僕には関係ない。
人間は青く透き通った円盤に手が生えた様な体を持つ見たことの無い奴(砂嵐が平気だったので地面か岩か鋼タイプだろう)を連れていた。
砂だけの世界を嫌い外の世界に飛び出したくてたまらないような若気の奴等がその人間の前に飛び出して、彼らを一,二匹捕まえた人間が満足気に砂の無い世界に帰っていくと言う、いつも通りの日常が続いていくのだろうと考えていた。
考えていたが、違っていた。そいつは僕たちを捕まえに来たわけではなかった。
いっそ捕まえて欲しかった。彼は……
ただ………殺しに来たのだ
その青い奴の鉄爪で。
ザクリ! と
殺しに来たのだ。
僕たちの身体は軟らかい内蔵を守るように、乾燥と急激なる温度差に強い、とても硬い外殻で包んでいるが、そいつの鉄爪はそんな僕達の外殻など豆腐のように貫通して、内臓をえぐりとった。
僕たちの防御能力はそれほど悪くはないし、自信は持っていた。しかし。あいてが強すぎた。あきらかにレベル異常(本当は『以上』が正しい熟語のだがこれでも誤植ではないだろう)の力を持っていた。
それでも、こんな環境に生きているだけに僕たちはタフだった、急所を抉られて即死するものもいたが、たいていは死なずに済んだ(死なずに済んだなんて不謹慎な言葉だ! 内臓損傷して生涯の痛みよりも、いっそ苦しみなど短い方がいいかもしれない!)。
ただ、その人間はそれで終わらせてくれなかった。何度も襲ってきたのだ! さすがに体が弱ったところを狙われては、ひとたまりも無かった。
みんな殺された。
普段、捕食者である僕たちが被捕食者になるとは、滑稽に見えるかもしれない(せめての慈悲として、笑ってくれ)。
僕たちは必死で隠れて、そいつらから逃げた。
しかし、素早さの低さでは一と二を争う僕たちのことだ。 すぐに追いつかれて、殺された。
不思議なことに、他の生物などにはそいつは目もくれなかった。
標的は僕たちだけだった。
ターゲットは一つ。 畜生!
だが…………僕たちの死者が数えられる範囲で150を超えた(襲われた回数ならば200回を超えていたことは確かだ、もちろん死者の中には隠れ逃げているうちに衰弱死してしまった者も含まれる)とき。奴の殺戮による虐殺劇は、ぱったりと終わりを告げた。理由は分からなかった、不思議だった。半信半疑であったが、それが確信に変わると同時に僕はそこで諸手を挙げて泣いて喜んだんだ。
僕は生き残った!!
しかし、話はこれでは終わらない
先月、再びあの人間が現れた。今度は虫も殺さないようなヤサ顔の桃色でタマゴ形をした奴を連れていた。
ただし、今回の標的は僕たちではなく、砂鼠だった。桃色の奴は砂鼠たちに冷凍光線を撃っていた。寒さに弱い(僕たちもそうだけど)彼らの体は凍て付くと同時に次第に衰弱して眠るように死んでいった(内臓切り裂かれて死ぬより、この死に方のほうがいいのでは?と思う。だがそんなものは僕のエゴだ、忘れてくれ)。
虐殺は続いた。
僕はこの虐殺を食い止めたくて、意を決して奴の前に立ちはがかった。
これ以上のギセイを払わないために、無駄だと分かっていても、何かやりたくて、それで死ぬ事なんて分かっている(いや、違うかもしれない、これ以上の虐殺風景を見ることに堪えられなくなって、遠回りの自殺に挑んでいるのだろう。これもまた僕のエゴだ)。
勇気を振り絞り、決死で。
しかし………
無視をされた(逃げられたというべきか?)
逃げられなくする僕の特性も、効かなかった。煙の玉が破裂すると同時に煙が舞い上がって、気づいたときにはいなくなっていた。そして思い知る。
彼のターゲットは。今は、僕ではなく……砂鼠であること。
殺させなくて良かった、と安心する僕が憎くて堪らなく嫌だった。
そんな、奴の殺戮による二回目の虐殺劇もやはり、ぱったりと終わりを告げた。不思議だった。
さらに不思議なことは。
風の噂によると、ここから北に向かったところに火山灰が降るところがあり。そこに住むグルグル模様の熊が例の人間に大量虐殺されたらしい(その時は黄色い狐のエスパーポケモンを連れていたそうだ)。
そして、その噂にしても、砂鼠のことにしても、僕たちのことも、襲われた回数がすべて252回ちょうどだったことだ、奇妙だ。
そして、その人間は「ドリョクチ」といつも口にしていたそうだ。
でも、土緑地ってなんだ?
環境保護?
絶対ありえないが。
ああ、げに……。
なんで僕たちを捕まえないのだ?
なんで僕たちを殺し続けるのだ?
なんで僕たちを虐殺し続けるのだ?
なんで僕たちを殺戮し続けるのだ?
なんで僕たちを続き続けるのだ?
なんで僕たちを狙い続けるのだ?
なんで僕たちが殺され続けるのだ?
なんで僕たちなのだ?
なんで……?
実は、今、
二回目の危機を越えようとしている。
再び僕たちを標的にあの人間が虐殺をし始めた。僕は隠れ続けて、なんとかその危険から身を守っているでも、経験上、もう終わりのはずだ。そろそろ252回が終わった頃だ。昨日も今日も被害が出ていない、これで終わりだろう。
僕は生き残っ!
「ふぅ、ようやく見つけたよ252匹目」
「ああ、だりぃなあ…めんどくせぇよ」
振り返ると、シニカルに笑う殺戮魔がいた。
あの時、決死で立ちはだかった時とは違い、今回は落ち着いて彼の様子を見ることが出来た。
少年。
と言うべきか。彼の眼には、僕の亡き祖父の紅い眼殻とは違う、透明のレンズを付けていた(おおよそ、眼を砂塵から守るためなのだろう)。
それでもその奥に潜んでいる、皮肉るように安心した眼だけははっきり覗かせている。隣にオラウータンのような不細工な顔の大きな猿があくびをしていた。
「ぁ………ぁ……」
僕の口からは言葉らしいものはもう出ない。
混乱。
錯乱。
僕は必死で逃げようとした、
分かっている!
分かっているって!
素早さの低さでは一と二を争う僕たちだ、逃げられるわけ無い!
でも、せめての期待くらいは賭けさせてくれ!
僕は死にたくなんかない、生きたい!
全速力で逃げる僕に、彼等は皮肉のつもりかゆっくりと僕の前に回りこんで
「う〜ん……これで最後だから、ちょっと奮発しようかな?……とっておきの、破壊光線だ」
「ふゎああぁ、分かったよ、めんどくせぇなぁ……」
「……ぁ………ぁ………助けt
僕は言葉にならない声しか出せなかった。そして……
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「イエ――!ブラボートレーナーの時間だよ〜!
今日のゲストはミシロタウンの祐樹君!祐樹君はケッキングを使ったチームで
バトルタワー56連勝という記録を作って、見事!銀の盾を手に入れたのさ!
それでは、祐樹君に質問を! 祐樹君、戦いに必要なものとは?」
「努力です」
「おお〜〜〜!! 『努力』!なんともかっこいい言葉だ〜! それでは、祐樹君がいつも使っている練習場はどこかな?」
「115と116番道路です。攻撃はナックラー、防御はサンド、特攻はパッチールと伸ばしたい物に合わせて倒すポケモンを変えています。
あそこは砂や灰があって未開の場所でまだ誰も使っていないので、穴場、絶好の場所ですよ」
「すばらしい!絶好のスポットですね!覚えておきましょう。では祐樹君、目指すものは当然?」
「100連覇です」
「ブラボー!ブラボー!祐樹君!! 自分の夢に向かってがんばって行きましょう! というわけで、今日のゲストはミシロタウンの祐樹君でした!
祐樹君からの耳寄り情報《115と116番道路の特訓場》はみなさんも是非、行ってみてください! それではまたの機会に! さようなら〜〜〜〜」
その後の砂漠を語るものはいない
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