らしくない話
びこさんに感想を送る
「あっ!!次はあそこよ、グリーン!!」
彼女の声が賑やかな街に溶け込んだ
ちらほら雪が見受けられる冬のタマムシシティ
新年を迎えた早朝の街は多くの人で賑わっており、
タマムシデパートでは初売りセールや福袋などを買い求めるための人だかりが店内を騒々しく盛り上げていた
「うーん、さすがにあのブランドの福袋は手がつけ難いわね…。」
「……ブルー、消耗品の買い足しじゃなかったのか?」
「あら、お洋服も立派な消耗品じゃない。」
「………。」
グリーンと呼ばれた少年が溜め息をひとつ
「だって、そうでも言わないと一緒に来てくれなかったでしょ?」
彼の溜め息を見てブルーと呼ばれた少女がつぶやいた
「……?どういう意味だ。」
「グリーンってばデートって言うと急につれなくなるんだもの。」
「なっ…!!!」
グリーンの仏頂面が一気に崩れる
「うふふ、顔赤いわよ。」
「…っ、うるさい女だ!!!」
そんな初々しいやりとりも賑やかな空気に溶け込んでいく
窓の外では雪が舞っていた
「あー、もうちょっとお金貯めとくんだったわ!!」
デパートからの帰り道
少々物足りげな顔をしたブルーを後ろに
「もう勘弁してくれ。」
うんざりという顔をしたグリーン
荷物持ちの上に人ごみにもみくちゃにされたグリーンの限界はピークに達していた
(この後もジムの仕事か…)
これで今日何度目の溜め息なのだろう
「ね、見てグリーン。」
なんだ、とブルーの視線の先をたどると…
「ほこら?」
そこにはちいさな祠が建っていて、中には賽銭箱も見える
「見つけたついでに御参りしていきましょうよ!!」
本当は早くジムに戻りたい
けれども
「たまには……な。」
ああ、オレはこいつに弱い
小銭をなげて、手を二回叩く
「あら、グリーン五円しか入れないの?」
「ご縁があるように、と言うだろ?」
「ふぅん…ずいぶんらしくない理由ね。」
クスクスと笑いながらブルーは100円玉を箱に抛った
「………」
「………」
「………」
「………」
「で、一体何を願ったんだ?」
ブルーは沈黙を破った問に目を伏せる
「そうね………よくわからないわ。」
沈黙
「は?」
「よく考えるとあたしって何がしたいのかなって思って。」
「パパとママには連絡がついたし、シルバーは相変わらずいい弟だし」
「仲間も傍に居るし、信頼できる人もできたし、あたしのこと愛してくれてる人もいる。」
「あたしにこれ以上の幸せなんてあるのかなって……。」
時折見せるブルーの真剣な表情
さっきまでの能天気な笑顔は何処へいったのやら
グリーンは溜め息をひとつ そして間を空けて答える
「オレは、お前をもっと幸せにしたいと思ってる。」
「………えっ?」
らしくない間抜けな返事を返す彼女
「それってどういう……?」
きょとんとしているが顔が赤い
そんな彼女が可笑しくも愛しい
「さあな。」
まあ、たまにはいいか
「で、グリーンは何お願いしたの?」
「健康祈願だ。」
「うわ、つまんない。」
「元旦から仕事なんだ。祈願でもしなきゃやってられん。」
ブルーの顔が歪む
「え……今日もジム開けるの!?」
「そのつもりだ。」
あちゃあ、とブルーが声を上げる
「じゃあコガネシティのデパートには行けないのねー、がっかりだわ。」
「………。」
健康祈願もバカにできないな……
グリーンは今年初めての安堵の溜め息をもらした
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