何よりも蒼い、青。
黒月さんに感想を送る
空はこれでもかというほど青く澄み切っている。
まるで、彼女の瞳のように。
ボクが彼女に出会ったのは、ちょっと前。
あそこに、捕まっていた頃だ。
ボクはレントラー。
色違いの、レントラー。
黒い黒い、深黒のレントラー。
昔は、普通のレントラーだった。
ある日、「ニンゲン」という生物に捕まった。
「ニンゲン」は、赤と白のボールを投げてくる。それは普通の「ニンゲン」。
ボクを捕まえた「ニンゲン」は黒いボールを投げてきた。
全部黒。濁りのない黒。
それから、ボクは黒くなったんだ。
「ニンゲン」はボクやボクの他に捕まったポケモンを戦闘兵器として扱った。
ボクらが、攻撃すると、町や村が一瞬にして消えた。そして、「ニンゲン」は他の「ニンゲン」のものを取り上げた。
「ニンゲン」に逆らって、同じように消えていったやつもいた。
怖かった。
逆らえなかった。
暴れているときは、ボクがボクなのかよくわからなかった。
え、そんな話いいから名前を教えろ・・・?
前はあったけど、覚えていない。
確か、ラ、なんとか。
鎖につながれている生活も慣れた頃、彼女がやってきた。
彼女も、黒かった。
黒い、ライチュウだった。
黒い体には青い目が輝いていた。
『ねぇ、あなたは?』
話しかけてきたのは、彼女の方。
『私は、ルース。』
ルース、だってさ。ルースって、だらしないって意味?
変なヤツ。
ボクは無言。名前を聞かれたって、答えられるわけない。
『あなたの名前は?』
彼女が言った瞬間、「ニンゲン」がやってきた。
「F-YU004、仕事だ。」
『F-YU・・・。ふーん。フューか。』
彼女は絶対、こいつらのことを知ってない。
F-YUっていうのは、あくまでコードネーム。
横目でルースを見ながら、思った。
『フュー、おかえり。』
ボロボロになったボクをルースは笑顔で迎えた。
『ねぇ、キミはわかってんの?』
ボクはルースに向かって初めて言葉を発した。
『何を?』
ルースはとぼけた顔で聞く。
『自分の、運命みたいなもの。』
ボクは続ける。
『ここにいるってことが、もう、元には戻れないってこと。』
『戻れない?何言っちゃってんの。鎖でつながれてるからって、逃げ出そうと思えば逃げられるじゃない。変な人。フューって。』
『オレは人じゃない。それに、そのフューってのやめろ。オレの名前は、ラ、』
『ラ?』
『、なんでもない。・・・それより、逃げだせるなんて、軽く考えるな。おまえの現実は、この上なく悲惨だ。』
『なんでそんなことわかんのさ。』
その言葉にボクは黙った。
確かに、逃げ出せる可能性はある。
しかし、その可能性は0に等しい。
その時だった。
ガシャーーーン!!!
どこか、この建物の窓が割れた。
・・・・・・警察。
「ニンゲン」は「ニンゲン」によって捕まえられた。
ボクらはどうなったかって?
ほぼ決まっている。
・・・・・・処分。
勿論、それぞれ個ポケによって違う。
ルースとルースと一緒に入ってきたキレイハナなんかは、まだどこも荒らしてなかったからリハビリの後釈放と聞いた。
ボクなんかはずっとやってきたので、多分・・・うん。
『・・・様。』
『すみません。』
彼女は唐突に言い出した。
『・・・へ!?』
『彼を』
『・・・・・・・でした。』
ルースが意味不明のことを言い出す。
ついに頭が狂ったか。
壁を見つめていたルースはいきなりこっちをふりむいた。
そして、にこっと笑った。
そして、いきなり変身した。
ライチュウのルースが青いミュウに。
『フュー。いや、ライト。・・・・・・。』
澄んだ声。ルースに似てるけど、違う声。
ライト・・・?
気づいたら、ボクは草むらに横たわっていた。
・・・ルース?
ルース、ルース、ルース。
やみくもに走り回った。
ルースの姿は、なかった。
青いミュウの言った言葉を思い出した。
フュー・・・ライト・・・・それから・・・えっと・・・。
最後が思い出せない。
ふっと手を見た。黒くない。
そりゃあ黒いけど、紺色っぽい。
空を見上げた。
蒼い。何よりも蒼い。
まるで、ルースの目のような。
蒼い蒼い空。
虹色の橋がかかる、青。
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