黄色いねずみの夢のあわ

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初めてあったのは、いつだったでしょうか。

弱そうな子、だと思いました。いや私だって別につよいポケモンだったわけじゃないんですよ。生まれも育ちもトキワの森で、そこからでたことなんて一度もなかったからレベルなんてたかが知れてましたし。つまりは何がいいたいかというとですね。そんな私にさえ「弱そうな子」と認識されてしまったヒトカゲさんは、本当にひ弱そうに見えたんです。本当に。今の彼にいったらものすごく怒られそうですけど。

ある日、緑色の森の中に突然やってきた鮮やかな赤のポケモン。噂に疎い私にだっていやでも彼のことが耳に入るわけです。そして、噂を聞いたら誰だって見てみたいと思うわけです、でしょう?そうして見つけたのが好戦的な赤には似合わない純朴な顔をした彼。青い目からのぞく純粋そうな好奇心のひかり、ひょろりとのびた尻尾のさきにある頼りなくゆれるほのお。そんな、彼が主人と思われる人間の後ろをよたよたと歩くあの姿、一体誰が強いだなんて思うでしょうか。誰も思いませんよ、きっと。

そんな彼にちょっかいをかけたのは出来心。珍しく来た町からのポケモン。普段おとなしい私にしてはほんの、ちょっとした冒険だった、はずだったんです、よ。なのにですね。なのになのになのに。今思い出したって不思議でなりません。そりゃ今となっては彼はすごいですよ。あの頃では想像もできなかったような鋭いかがやきを持つ強いひとみに、雄大と言えるほどに広がるあのたくましいつばさ!一振りで大木だってなぎ倒せるのではないかと思えるほど立派なしっぽ!そして彼の心をあらわすかのように煌煌と燃えさかる炎!凛々しくも美しくもある彼の姿を、もう誰も弱々しいなんて言えません。けど、あの当時の、あの、あの彼に敗北したのは本当に本当に不思議でなりません。なんでしょうか。運命だったんでしょうか。もっともそんなもの信じちゃいませんが。

「これ、ただの勘なんだけど。おまえ今さ、ものすっごい失礼なこと考えてない?」

「私としては、そういうことを言うあなたほうが失礼だと思いますけど、ね。」

私の皮肉まじりの言葉に彼は苦笑をもらしました。それにしても鋭い、昔のどんくさくてすぐ泣いたり怒ったりしてた彼が嘘のよう。なんとも寂しいものです。彼はすっかり大人になってしまいました。あの頃に比べたら体も力も心も、ずっとずっと。勘までさえわたるようになっちゃって。ことあるごとに私の後ろに隠れてた、私がまもってあげてたあの、弱いヒトカゲさんはきえてしまったようです。ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜーんぶ、あの頃の彼、「なぁ、ぴかちゅう」は。


「昔とは違ってさ。おれ、今は、おまえのことまもってやれるからな。」


あの頃の彼はもう 私の夢のあわとなってきえてしまったようです。

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