〜〜〜未来予想図〜〜〜U
ゆめさんに感想を送る
そして、しばらく経った頃、ユメは気づかぬ間に寝ていた。
「うぅん…。」
目を開けたらウインディが一番最初に目に入った。
隣には『エルク』というニックネームのナエトルが居た。
二匹はもうすでに目覚めていた。
(確か…寝る前はウインディもっとあたしから離れてたよね??)
ユメはそう思った。
ウインディはユメが風邪をひかないよう、しっぽを体にかけていてくれていたのだ。
「ウインディ…。あなたがみずからやったの??」
エルクがウインディの代わりにコクリとうなずいた。
ユメはウインディの何気ない優しさが嬉しかった。
「ありがとう、ウインディ…。」
ウインディはうるせーとでも言うようにそっぽを向いた。
不器用な優しさを見せるウインディを初めて見たユメは思わず微笑んでしまった。
朝の日差しが木の隙間から射してくる。
その光は眩しいほどだった。
「この森は神秘的だな…。不思議な気持ちになる。」
その時、誰かの声がした。
この森は人通りがかなり少ない。
ユメは不思議に思った。
(なんでこんなところに人が…??)
ユメはウインディとエルクをボールに戻し、慎重に声のする方向へ向かった。
(ッあ!!あれってもしかしてコウキ君じゃない??)
木の陰で見たユメはコウキ君の所へ行こうと足が一歩出た。
だが、コウキ君の隣には女の子が居た。
疑いの目で見たユメは急いで木の影に身を潜めた。
(え…。あの子…誰??何でこんな人が居ない場所で……しかも二人っきり?!!)
そう思った瞬間、ユメは察しがついた。
二人は照れ合いながら話をしていた。どんな話かはユメには遠くて聞こえなかった。
そして二人は身を寄せ合い始めた。
(え……そんな……まさか…)
ユメは走り出した。
「そんな…イヤ、イヤ……イヤ!!!!!」
ありえない、あってほしくない!!
コウキ君が困った時にはあたしが助けた。
あたしが一番、コウキ君に近い存在だったのに…!!!
いつの間に…そんな可愛い子、見つけていたの…。
ユメは予約していたホテルの建物に入り自分の部屋に入った。
ユメは椅子に座りボーッとしていた。
気づけば夜になっていた。
外は町の建物の明かりでそんなに暗くは無かった。
ユメはハッと気づき、ボーッとしていてはダメだと思い、全ての手持ちポケモンを出した。
出てきたのはウインディ、ナエトルのエルク、フワンテ、ルクシオ、ムウマ、ブイゼルだった。
みんなは部屋中に散らばった。
ウインディはユメのちょっと離れたところで寝始め、エルクはユメのところへ来て心配そうに首を傾げた。
「エルク・・・もしかして心配してくれてるの??」
エルクは他のポケモンを見て、またユメを見返した。
まるで、心配しているのはボクだけじゃないとでも言いたがっているかのように見えた。
「みんな心配してくれてるんだ・・・。」
ユメは笑ってもう大丈夫だよと言うとみんなをモンスターボールに戻した。
頭をふせてユメは静かに泣いた。
「本当は大丈夫なんかじゃ・・・・・・ないけどね・・・。」
みんなを心配させるわけにはいかない、それだけは確かだった。
心配させるくらいなら、一人で泣く方がいい。
一人で・・・・・・この時を過ごす。
”ピンポーン”
ドアベルが鳴った。
誰かと思いつつ、ユメは鏡で顔をチェックしてドアを開けた。
「よお。」
扉の向こうにいたのはカレンだった。
カレンは幼なじみの男の子で今はあたしのライバルでもある。
「あれ・・・なんでここに・・・。それに・・・よくここに居るってわかったね。」
ユメは質問をしながら部屋の中へどうぞと道をあけた。
「ユメの旅の調子を見に来たんだ。久しぶりにいろいろ話せるかなって思ってさ。」
ユメはそっか、とだけ言うと空気は静まり返った。
それだけユメの返事は無表情だった。
「おぃ、どうかしたか??」
「え・・・?別に・・・順調だよ??」
ユメは笑って変なカレン、と言った。
だが、カレンは少しも笑っていなかった。
「なぁ・・・なんかあったのか・・・??オレには・・・元気無いように見えるけど・・・。」
「そんなことないよ〜??元気だよ。もう今は幸せだよ??
ポケモン達に囲まれて、親友のカレンと一緒でさッ!!」
ユメがそう言ったとたん、カレンは顔を真っ赤に染めながら怒り出した。
「だったらもっと幸せそうに笑えよ!! 楽しそうに・・・嬉しそうに笑えよ!!」
カレンは勢いよくせまっていき、ユメの肩を持った。
「へ・・・・・・き、急にどうしたの・・・。」
ユメはあまりの勢いにビックリした。
「さっきから思ってた。おまえ・・・心から笑ってない。」
「あ・・・ごめん・・・。」
オレは・・・笑うアイツが好きなんだ。幸せそうに・・・笑うアイツが・・・。
なのに・・・アイツの笑顔が無くなるなんてイヤだ。
カレンは今の状況に気づき、急いで離れた。
「ご、ごめん////」
あ、うん。と気にしていないそぶりをユメが見せると続けて言った。
「ちょっと、悲しくてね。」
カレンが首をかしげた。
「なんで・・・??」
「わからない。ただ・・・泣きたくなるの。」
本当はわからなくなんてない。
何でかは気づいてる。もう、知っている。
ただ、気づきたくないだけ。
「泣きたい時は泣けばいいじゃん。」
不器用な答えが返ってくる。
「うん、そう思ったんだけどね。上手く泣けなくて・・・。」
一人だけ舞い上がってた。
有頂天だった。
幸せな・・・・・・夢を見ていた。
・・・・・・・・・でも、その夢物語も もうおしまい。
コウキ君には好きな人がいる。自分じゃない・・・。
せめて、このとき この瞬間は苦しいから、一緒に泣いてほしい・・・。
「うぅ・・・。もうダメなの。」
ユメは泣き始めた。
「なにが・・・??」
「何もかも・・・。」
「そうか・・・。苦しかったな。」
そうカレンは言うと、ユメを抱きしめた。
今までこの事を考えては苦しくて、胸がはちきれそうになってた。
泣けばすむと思っても、思うようには泣けなかった。
だからよけいに苦しかった。
ずっとずっと、誰かにこの苦しみを打ち明けたかった。
でも、言う相手が見つからなかった。
「いつの間にか 大人になったね、カレン。」
きっとカレンに泣きすがっても平気だ。
この人なら受け止めてくれるはず。
「オレは前々から大人だよ??ユメが気づかないだけ。」
ずっと苦しかったとき欲しかった人は いま この時を一緒に泣いてくれる人。
そばに居てくれる人。
「ほら、沢山頑張ったんだ。もっと泣いてもいいんだぜ。」
本当はユメが苦しい想いをしていたこと、知ってた。
こんなタイミングよく来たのは、ユメが失恋をしたのを知ったから。
今日の朝、コウキから電話があった。
「彼女が出来た。」という幸せな電話だった。
オレはおめでとう と言ったあと、ユメは知ってるのか??と尋ねた。
もし、知ってるんだったら・・・・・・。察しがついた。
コウキは「報告しようと思ってたんだけどたまたま現場を見られた。」と照れながら言っていた。
きっと、知ってしまったんだろう。オレはすぐにわかった。
オレはあいつが幸せならそれでいいと思ってた。
オレは・・・あいつが好きだから・・・。
幸せになってほしい。
だから・・・・・・オレが片思いなのもすぐにわかった。
オレは・・・どんなに不幸でもいいから・・・・・・。
どんなにみじめでもいいから・・・・・・。
だから・・・だからせめてユメだけは幸せで居てほしい。
何でも・・・するから・・・。
「本当にありがとう。」
「気にすんな。」
あれ・・・・・・。なんであたし、今この時を幸せだと思っているの・・・??
本当に求めていた人は誰・・・??どんな人??
欲しかった空間を創りあげる人はもっと近くに・・・居るんじゃない・・・??
もっと・・・もっと・・・・・・近くに・・・。
突然、視界にウインディに乗ったエルクが見えた。
エルクは、昨日描いた未来予想図のメモ用紙を口にくわえていた。
そうか、私の相手は別の人。目の前で私を支えてくれている人。
カレンだ・・・!!
ユメはその瞬間、衝動的にカレンと口付けを交わした。
「おぃ・・・・・・・・・え・・・?!!な、なんだってんだよぉ////」
『なんだってんだよぉ』。カレンの口癖。
私はこの人が好きだったんだ。ただ、気づかなかった。
それを見ていたポケモンたちはムウマのねんりきでメモの裏にカレンとユメを描いた。
それは、幸せな『夢』だった。
今は現実となり、そして未来になる。
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