ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、私が悪ぅございました。
フル、ニュウ、クレス、イザヨイ、レオ・・・誰でもいいから、助けて下さい。
「ハベってレオのどこが好きなの?」
うっかりそう聞いちゃったのが間違いだった。
そこから始まったマシンガントーク・・・1時間続いてます。 しかもまだ終わる気配ないし。
私、森岡未来、とっても後悔している所存でございます。 あぁ、こういう時って何か言葉が卑屈になっちゃうなぁ・・・
「レオ様の魅力? そりゃもう全部よ全部!!
どこがって具体的に聞かれたらね、あの凛々しいお顔立ちでしょ、それに手入れしている様子もないのにすっきり真っ直ぐ整った眉でしょ、あれが少しだけ潜んでる時、私キュンときちゃう! ううん、もちろん私の心はいつでもレオ様にキュンキュンなんだけどね!
それにきりっとした目元、あの力強い目に見つめられたら私失神しちゃいそうよ! というか本当にクラクラきちゃってるんだから! あの目の力強いところはんもう私を焼き尽くしてしまいそう! レオ様にだったら焼き尽くされても私幸せよ!
すっと通った鼻筋も素敵! レオ様あれで鼻が利くみたいなの。 少しでも異臭のあるところにいくと、ほんのちょっぴりだけどあの細い鼻筋がピクッと動くのよ。 その姿に私のハートがドクンと鳴って、この恋心も嗅ぎ付けられちゃうんじゃないかって・・・キャー恥ずかしい!
ミレイはレオさまの唇のシワの数数えたことある? 私はあるのよ、8本数えたところでレオ様に止められちゃったけどね。 髪の毛の1本1本も・・・あれは芸術よ、まさに人間界の至宝とも言うべきものじゃない? オーレの熱い風に晒されて成長した姿にふさわしいまっすぐな太い毛ですもの!
あん、あの緩やかな頬のラインも素敵素敵ステキ! あんまり食べてないのよね、レオ様、他の人間たちから比べたら痩せこけてる方だもの。 だけどそれをカバーするみたいにしっかりとした筋肉がついていて、それが顔にまでちゃんと表れてるのよ、だからね、あの頬はレオ様の生き様そのものなの!
それにあの大きい手、モンスターボールに入ってるとき私を呼ぶのがあの大きな手なの。 全部を包み込むくらい大きいのに私を必要としてくれてるそれだけでも幸せでいっぱいなのよ! それにその手が私を褒めてくれるときに背中に乗せられる瞬間のあの幸福感はいくらミレイでも譲れないわっ!
あと、それと、あのむき出しの額! あの砂嵐の中を通り抜けてきた美しい額にいつか触れてみるのが私の一生の夢なの!
淡々としていて周りの干渉を寄せ付けなかった頃のレオ様も素敵だったわ。 無表情のまま私をスナッチして、その直後に私以外みんな全滅しちゃったでしょ? その時レオ様、何の迷いもなく私のことを呼んでくださったのよ! 『ハーベスト』って名前もつけて! あの時私この人に一生ついていくことを心に誓ったわ! そう、いうなれば運命ね!
けど、その後すぐにこれが叶わぬ恋だってことにも気付いてたの。 だってレオ様、ミレイを見るたびにどんどん変わっていくのが分かるんだもの。
でもね、いいの。 私、今のレオ様も好きだから! 少しずつ優しくなってく目、私に向けられるでしょ? あの厳しかった目つきがふと和らいでる瞬間、あぁこのヒト私に対しても心を許してくださってるんだってことがわかるもの。
それに、レオ様本当に時々だけど笑うようになったでしょ? 表面だけで笑う人間たちと違って、本当に心の底から笑われているんだもの。 見ている私まで幸せにするのよ、レオ様の笑顔は!
その笑顔とね、戦う時の勇ましい顔つきとのギャップもまたいいのよ! あのね、風が変わる感じってわかる? レオさまの表情が変わるときってね、ああいう感じなのよ。 それまで緩やかに流れてた風が、急に強く熱く変わってく感じなの。
一瞬だけね、スナッチボールを投げるとき表情が変わるのよ。 それで私あのスナッチマシンがレオ様の体を蝕んでることに気付いたの。 本当に、本当にちょっぴりだけどね、頬の筋肉が引きつるのよ。 その顔も素敵なんだけど、やっぱりバトルで指示を出してくれる時の顔、あれが1番いいわ! だって、私の名前呼んでくれるんですもの!
そしてレオ様は同じように暗い心に捕らわれたポケモンたちをスナッチするの! そこから助け出されたポケモンたちは、そう、いうなれば私たちの愛の成果! 愛の結晶! やん、愛の結晶って! 響きがヤラシー! でもね、レオ様に助けられたポケモンたちは本当に幸せそうな顔をしているのよ!
あの細い体から、だけどキレイに筋肉のつけられた腕から、放たれたモンスターボール・・・私がもう1回スナッチされたいくらい! でもね、私ポケモンだから、レオ様は私のご主人様だから、私はレオさまのやることを邪魔しちゃいけないの。
だから・・・だからね?」
ハベはそこで一旦息をつく。
私どこまで聞いてたっけ・・・? 全然覚えられてないんだけど。
「あんた、レオ様と幸せにならなかったら承知しないんだからね!」
「・・・ハイ。」
ワタッコに恐怖したのはその時が最初で最後だった。
恐るべきはオトメのチカラ。 睨みをきかせた後も、ハーベストの話は続く。
後に、私は心の中で助けを呼んだ男たちが彼女の剣幕に逃げ出していたことを知った。
目次へ戻る