カントー地方セキエイ高原ポケモンリーグ

あの不思議な四人組がいた日から3日がたった。


この3日綿雪は積もることなく、しかし止まることなく空中に舞い続けていた。

だがこの日舞っていたのは綿雪だけではなかった、色とりどりの雪にも負けない量の紙ふぶき、そして、心が踊るような音楽が空中を舞っていた、さらに10分前くらいから打ち上げられている花火を加えれば、まるで幻想世界に迷い込んだかのような感覚になる。

セキエイ高原ポケモンリーグはこの日のために18年も前から準備を進める。

通常、3年に1回、各地方でポケモンリーグが開かれるがそれには準備が要る。

まず最初の一年で今回のポケモンリーグの反省及び、次回むけて、アイデアの出し合いや、観客や選手(トレーナー)へのアンケート調査など、「改善」に使われる。
次の一年でそれらをまとめ、どうするかの会議が行われ、最後に一年に実際の準備をする。終わってから、次回が始まるまで、つまりは丸3年がかりの準備なのである。

しかし今回は18年の年月をかける、けた違いの大会であると言う事は、火を見るよりも明らかだろう。

18年に一度行なわれるこの大会は人々から「レジェンドリーグ」と呼ばれトレーナーなら誰もが一度は目指す「ポケモンマスター」を決める大会。まさにその名の通り「伝説」の大会なのである。

この大会の参加資格は・・・・・「前回レジェンドリーグ後のポケモンリーグでベスト4に入っている事」である。



「久しぶりだな〜ここ(セキエイ)に来るのも」
全会場が見渡せる小高い丘に、サトシは立っていた、その肩では相棒であるピカチュウが可愛い鳴き声であいづちをうっている。
「いくか!!」
サトシは深呼吸をすると、メイン会場(ドーム)へと駆け出していった。


1年前のポケモンリーグ・シンオウ大会、サトシは見事優勝する事が出来た。だがそれは説明した通り、ポケモンマスターになる夢のチャンスを掴めただけだった。


「あの時は流石にがっかりしたけど・・・・・でも、これでやっと俺の夢がかなうんだ!!」
サトシがメイン会場の扉を勢いよく開けようとした時だった


「そう未来前提で落胆してていいのかい?」


懐かしい、そしてキザッたらしい声に振り向くとそこには

「そういうのを、取らぬジグザグマの皮算両っていうのを知ってるかい?」
「シゲル!!久しぶり!!」

幼馴染で、同じ日に旅にでたライバルであり親友の1人でもあるシゲルが白衣を着て立っていた、サトシは嬉しくなり、思わず駆け寄る

「元気だったか?」
「ああ。君は・・・・・聞くまでもないか。」
「ああ!俺は相変わらずさ!・・・ところで・・・取らぬジグザグマの皮算両ってなに?」
「・・・・・本当に相変わらずだな・・・・・」

サトシの言葉にシゲルとピカチュウはサトシをあきれた目で見つめる、サトシはなぜその視線が自分に向けられているのか分からず?マークを頭一杯に浮かべていた

「???ところで何でお前が此処にいるんだ?ポケモンの研究に専念してたんじゃ・・・」
「ああ、僕はバトルをやらない訳じゃないが、あくまで趣味、君の言うとおり研究に専念してる。今日は大会のゲストとしてきたのさ」
「ゲスト?」
「ああ、君ほどじゃあないが僕も研究者として結構名が有名になってしまってね、バトルの解説をして欲しいと頼まれたのさ」
「へえ〜〜すごいな!でも俺、そんなに有名じゃないぜ?」

サトシは今まで数々の大会に出場してきたが、シゲルの様にファンレターなど一枚も貰った事が無いし、ましてやサインをねだられたりする事は一度も無かった。

「それは君が気づいていないだけで・・・・・おっと!!いけない忘れるところだった、君に会いたいと言う人達を預かって・・・・・」


シゲルがここまで話した時、事件はおきた。


『キャーー!!シゲル君〜サトシ君〜!!』
『サインくれ〜〜!!』
『ファンレター受け取って〜〜』

物凄い数の人がサトシとシゲルに向かって走ってきていた、走ってきたと言うよりこれはもはや突撃だ。

「!?!?!?な、なんだああ〜〜〜〜〜!!??」
「僕らのファンの方々さ!ま、うまくかわせよ!!」
シゲルはそう言うと右方向に走っていってしまう
「あ!おい!ちょっとま・・・・・うわわわわ!!!」
サトシは状況があまり分かっていなかったにせよ、とにかく逃げなければいけない事だけは分かった・・・・・



「はあ、はあ、まったく、なんだってんだよ〜〜」
どこかで聞いた事があるようなセリフを言いながらサトシは走り続ける、もう追ってくる人がいない事には気づいていない。

サトシはある店の角を曲がろうとしたのだが
「「うわあっ!!!」」
角から出てきた人に思いっきりぶつかってしまった
「いててて・・・あ!ごめんなさい!」
サトシは頭をさすりながら立ち上がり謝罪する
「あ、いや、こっちこそ・・・・・」

サトシがぶつかった人はサトシの顔を見るなり目を見開き動かなくなる。

歳は自分より2・3歳上かな?とサトシは思った、髪は黒でサトシ程ではないが結構ボサボサトゲトゲ、赤メインのジャケットに黒っぽいジーパンがよく似合っている

「・・・?あの〜俺の顔になんか付いてますか?」
「あ!いやごめん!じゃ、じゃあね!!」
そう言うとその場から早足で立ち去っていった
「???何なんだ?」
サトシも同じく、行こうとすると目の前の赤い帽子が目に入る
「?・・・さっきの人のかな?落としましたよー!!」
サトシはその男の人の行った道を振り向き叫ぶがもうすでにその男の姿は見えなかった




「早速一人目みつけたぜ、波動だ」
人があまり通らない外路地でサトシとぶつかった男がポケナビで電話をしている
『・・・波動・・・どの属性にも関わりを持たない特殊属か・・・・』
「このまま立て続けにみつかりゃいいな」
「・・・・・あまり気を抜くなよ」

電話が始まってからずっと波動・属性と言った言葉をしゃべりつつけている、他人が聴いたら一体何のことだろうと思うだろう

『所で・・・・・本当にいいのか?エンを連れて行かなくて、お前の相棒だろ?奴らが動き始めている今、必ずそっちに行く・・・・そうなれば・・・』
「・・・・・ゆーこもいるし!大丈夫だって!!」

相手の出す暗ーいオーラを吹き飛ばそうと男は明るくしゃべり続ける

『・・・ゆーこってユニコーンから名を取った、あのギャロップか?』
「ああ!!俺の究極切り札さ!」
『・・・・・そうか、だがあまり無理するなよ・・・ファイア』
「ああ、分かってるよ、レオ・・・・・じゃあな」


電話を切ったレオはボソッとつぶやく


「・・・・・ゆーこって・・・♂だろ・・・あのギャロップ・・・・・」
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