〜裏五/最終決戦〜
グレンタウン
「かわらわり!」
リングマの手刀が振り下ろされ、その堅い身体に攻撃を当てる
「ハガネちゃん・・・!」
堅い身体にも負けず、リングマは手刀を振り抜いた
トレーナー能力の『玉鋼』で防御ステータスが上がっているから、尚更に堅い
勢いづいた拳にダメージがいきそうなものだが、それでも表情ひとつ変えない
「(・・・相性が悪いな)」
その男は視線を落とした
相対しているのはジョウト地方ジムリーダー、鋼のミカンだ
まさか炎タイプのジムのあるグレンタウンに来るとは思わなかった
鋼タイプは機動力に劣るから、それほど広くない街を選んだのかもしれない
「リングマ、かみくだく」
その指示でハガネールの尾馬乗りになって躊躇いなくかじりつき、わずらわしそうに振り落とそうとするがそれに喰らいついている
「アイアンテール!」
リングマごと地面に叩きつけたが、その時にはもう離れている
物理技主体、接近戦を好むこのリングマ使いはミカンにとって相性の良い相手だった
しかし、向こうも相当な実力者だ
技の初動が速く、その動きにまるで無駄がない
指示が的確ならば、身体をねじってよけようとしても間違いなくわざが決まるほどだ
素早さは向こうに分がある
少しずつステータスが上がっているものの、ダメージもそれなりに蓄積されてきている
ならば、使い時だろう
「ハガネちゃん、ねむる!」
ミカンの指示でねむり、HPを回復し出す
そしてすぐに目を覚ました、カゴのみの効果だ
「(まずい、差が開いた)」
男の、シンコクの能力は『風林火山』といった
タマゴの時からわざを調節し、このレベルまでずっと変えずに使ってきたことで4つの技の熟練度が極めて高い
よってわざの初動が速い、風のごとく
また無駄がない動線、静かなる林のごとく
熟練度の高さからわざの威力をあえて抑え、機を見て戻すことでわざの威力を上げたように思わせバトルの緩急をモノにする火のごとく
ここまでが陣、トレーナー能力は「相手の技のダメージを軽減し、動じない」という山のごとしのみ
最後の山はステータスが上がっているわけではない、ダメージを感じにくいのだ
痛覚のオンオフ切り替え、痛みに鈍感にさせられるというようなものだった
使いどころを誤れば危険な能力だ、痛みは身体の異常を示すシグナルなのだから
だが、バトル中ならば相手にその表情からダメージ量を推し測られることもない
ハガネールのような堅い相手への攻撃も思い切り出来る、相手の攻撃を受けた直後でもまるで無視するかのようにすぐに自分の行動へ移せる
わざの熟練度の高さからくる初動の速さ、無駄の無さ、威力の緩急、動じなさ
これらはすべて接近戦、インファイトならば確実にアドバンテージを取れるものだ
だが、ハガネールの巨体にわざを受けるごとにステータスが上がっていく能力
更にはHPの回復までされた、これは不利だ
「(増援を待つか? それまで持つといいんだが)」
グレンタウンの立地条件は、増援待ちにはきついものがある
元々都市の最低限の機能を維持出来る人員しか割かれていない、グレン・マサラタウンは割り振りが少ない
人数が少ない分、強い人間を入れればいいのに・・・・・・いやシンコク以外にそういうのがいたのだが姿が見えない
この戦闘が聞こえているはずなのに、どうしたものか
「(ったく、どうしたもんかな)」
「だいじょーぶ、シンちゃんなら勝てるから」
シンコクが振り向くと、緑色のコートとフードを被った人間がその辺りの民家の屋根に腰掛け手を振っていた
ようやく出てきてくれた、ここの担当で一番強い能力者が
「今までどこに行っていたんですか、ロロディさん」
「や、聞こえてたよ〜? でも横やりはダメかな〜っておもーいましてっ」
ふふふふっと明るく答える声だが、男の子であることがわかる
シンコクはリングマをボールに戻し、踵を返した
「勝負を放棄するのですか?」
「公式戦でも何でもない、途中で抜けることに問題はない」
ミカンの言葉にシンコクは落ち着いた声調で返した
出来ることなら最後までやりたいものだが、組織の命に従ってここを守り抜くなら・・・ロロディの方が確実だ
ポケギアを取り、ボタン操作すると、すぐにピコーンという音がした
「ロロディさん、俺の代わりが見つかったので交代します」
「えー、もーっ」
屋根の上で足をぱたぱたさせる、膝くらいまであるコートがはためきシンコクは顔をそむける
ロロディは半ズボンだから絶対に見えないし、その気もないが何かと言われ(からかわれ)ないようにする為だ
「では、失礼」
シンコクが走り、港の方に向かう
置いていかれたミカンは、屋根の上にいるロロディに目を向けた
「次の相手はあなたですか?」
「そーなのかな、よろしくねっ」
ボールを放り投げ、同時に自分自身も屋根の上から飛び降りた
ミカンがびっくりするが、ボールのなかからマリルリが出てくる
マリルリがバブルこうせんを出し、その泡によってロロディ達の落下を減速させ、着地の衝撃を相殺し和らげた
「やっぱりバブルこうせんの音は心地いいなぁっと」
マリルリをボールに戻し、着地したロロディがフードを下ろし、緑色のコートを脱ぐ
すらりとした長身、あちこちはねたくせ毛な黒髪、大きな瞳は少女漫画を思わせる
緑のコートの下は身体のラインがわかるくらいピッチリとした黒いシャツ、腕には赤と青の2つの腕輪
半ズボンからのぞく細い脚、足元は足首を固定できるサンダル
脱いだコートは腰に巻き、ばっちり動きやすい格好になった
とこう書くと女性に思われるが、れっきとした男性だ
「・・・んー、あー、始めよーか」
急に明るかった声調が、暗くなった
出してきたポケモンはピクシー、ミカンはちょっぴり驚く
ハガネール相手なら先程のマリルリで良かったと思うのだが、逆に言えばタイプ相性的には不利なピクシーで突破出来る自信があるのだ
「(なら・・・)すなあらし!」
ハガネールが全身を暴れさせ、周囲にすなあらしを呼んだ
激しいすなあらしは視界を奪い、鋼・岩・地面タイプ以外に毎ターンダメージを与える
「ハガネちゃん、アイアンテール」
小声でミカンが指示をする
まずは距離を取る、幸い先程の戦闘を継続する形なのでステータス上昇を引き継げる
こうげきの上がったこの技の威力は、ハガネールの自重が相まって洒落にならない威力だ
「・・・・・・」
ずどん、と大きな音が響く
しかしピクシーはアイアンテールの横、ぎりぎりのところで避けたようだ
「・・・嫌になるよ、痛い・・・」
「次はかみくだく」
ハガネールの大きな頭が突っ込んでくる、がピクシーはあらかじめわかっていたかのような動きでこれも避ける
指示も聞かれていない、姿も視認出来ないくらい濃いすなあらしのはず
なのにまるで攻撃を予知されているような、そんな感じに思えるくらい
それでも攻撃を続けるミカンとハガネールのわざはことごとくはずされ、殆ど当たらない
それなのに向こうの攻撃はよく当たる、まるで行動の先から先までパターンを読みつくされているかのように
ついにはステータスが上がっていたハガネールを引っ込め、次のレアコイルに交代せざるを得なくなった
「もう・・・ほんとイヤ・・・」
バトルの時間が経つにつれて、ロロディのテンションが下がっていく
これだけ強いのに、どういうことなのだろうか
ちっとも楽しそうじゃない、むしろ苦痛のように見える
「・・・体調でも悪いのですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん、絶好調・・・。だから、嫌・・・」
大きな瞳にはまるで生彩がなく、暗く沈んでいる
「そうですか・・・。これは私の推測なのですが、あなたは攻撃を予知しているのではないのですね」
ミカンがつかんだ、ロロディの秘密
「心音。ポケモンの心音、筋肉などの脈動。そういった音から、私の小声の指示も聞くことで視界の悪いなかでも的確に避けられた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、まぁそう」
トレーナー能力、飛び耳
ロロディ自身の聴力は、超広範囲でポケモンの生体音を聞き分けることが出来る
予め普段やバトル中の心音を聞いていれば、異常や変化にもすぐ気づけるのだ
それからどんな小声であっても、ポケモンの反応を聞き分けられれば指示の中身もわかる
音で距離を測り、わずかでも早いテンポでの回避行動は可能になる
バトルでは大きな音はつきものだ、ロロディはそれを他の人よりも大きく余計に拾ってしまう
意図的に音を拾うことも出来なくもないが、もしものことを考えるとひとつとして聞き洩らすこともしたくない
「そうですか。私の最初の戦略の立て方が間違っていたのですね」
視界を奪うことは、向こうにとって何の意味もなかった
そしてこうして能力をばらしたところで、心音といった音を完全に止めることなんて出来やしない
ゴウゴウとうるさいすなあらしのなかでも、的確に必要な音を聞き分けられる聴力ならなおのこと
ピクシーは元々そういう身体能力に特化したポケモンでもある、まさに適格だ
「ですが、対策を練ることは可能です」
つまり、速く早く攻撃すればいいのだ
いくら生体音を聞き分け、次の技に対して先取りした行動を取ろうとしても、その行動が相手より遅かったら何の意味もない
レアコイルの、コイルちゃんならば不可能ではない
光は音よりも早い
「10まんボルト!」
ジュバッと放たれた電撃がピクシーに直撃する
ようやく、目に見えるヒットだ
「・・・・・・・・・・・・・・・」
だが、ダメージは思いのほか少ない
それどころかピクシーのコメットパンチで反撃を喰らった
「(・・・多分ひかりのかべか何かを先に使われていたのね)」
すなあらしで見えないのはお互い様、その間に指示されていたのだろう
けれども、すなあらしのダメージは蓄積しているはずだ
「このまま攻めます!」
「・・・・・・・・・・・交代、バクオング」
レアコイルの10まんボルトと同時に交代、出てきたのは大きな身体のバクオング
交代による必然的な一撃は与えられたものの、仕留めきれない
ロロディが自身の耳をふさいだのを見て、次の技がミカンにも予測出来た
けれども、対策や身構えるよりも早くその技は放たれた
「ハイパーボイス」
広範囲に響き渡るこの攻撃は、鋼タイプを持つレアコイルには効果は薄かった
しかしその衝撃はレアコイルの後ろ、ミカンにまで届いて・・・・・・彼女は大きく吹き飛ばされた
・・・・・・
ニビシティ
化石の博物館もあるこの街に来たのは、ある種のゆかりある人物だった
「建物が無事なのはいいですが、なかもちゃんと保全されてるんでしょうか」
博物館の外壁に触れ、閉じた入り口の辺りにたたずむ少年は科ぴそうにつぶやく
その傍らにはヘラクロスがいて、彼の背中と建物を守るように身構えている
「確認してみる?」
ちゃらと金属音、そして声をかけられたようなので振り返って見る
灰色の髪をみつあみにした、緑色の瞳の女の子
基本は団服なのだが、リボンやえりといったオプションをつけることでブレザーを意識したデザインを見せている
腕輪は2つあるその手の指にあるのは鍵、おそらくこの博物館のものだろう
「・・・いいんですか」
「私を倒せたら、ね」
涼やかな声色、よどみもない
少年は13歳、彼女はもう少し上だろうがそれよりも大人びて見える
じっと見つめていると、ふいと彼女は視線を地面に落した
「・・・わかりました。僕の名前はツクシ、ヒワダタウンジムリーダーです」
「そう。私はジャスティー、ニビシティを担当する1人」
ちょっとぼそぼそした喋り方になるが、彼女はすぐにしゃんとしてみせる
その後、ツクシがさっと腕を上げてヘラクロスに示した
ツクシのヘラクロスが猛然と突進し、ジャスティーが投げたボールから更に高速の何かが飛び出した
バトルが始まり、まずはガチでぶつかり合った・・・ようだ
ようだ、というのはヘラクロスが何かにぶつかったことはわかったのだが、その何かがツクシには見えず今も見えないままだからだった
「・・・この羽音はテッカニン!」
むしタイプのエキスパートであるツクシは、見えない状況でも聞こえる音でそのポケモンを把握した
特性かそくを持ち、毎ターンその素早さを上げていく厄介なポケモンだ
「なら、すぐに倒せばいい! ヘラクロス、メガホーン!」
ヘラクロスがその大きなツノを振り回し、ツクシの指示する方向へがむしゃらに突進した
その先には確かにテッカニンがいたらしい、だがジャスティーは慌てない
「かげぶんしん」
加速にくわえ、高速の体さばきで分身を作って見せる
ヘラクロスの攻撃は空振り、突きぬけて近隣の住居に激突し、壁に大きなひびをつくった
「・・・ジムリーダーが街を壊して良いのかしら」
「すみません・・・」
申し訳なさそうに頭を下げ、それでもツクシの猛攻は止まらない
ひび入った壁を蹴飛ばし、ヘラクロスは更に突っ込んでいく
「かげ・・・いえかたくなる!」
3ターン経過したテッカニンはその身体を堅め、その防御力を上げにきた
タイプ一致のメガホーンだが、命中率はやや低い
かげぶんしんの補正もあって、あと1回ははずすものと考えたのか
「甘いですよ」
ヘラクロスのツノの一撃が、テッカニンを吹っ飛ばした
そう、まさに吹っ飛ばされた
ジャスティの真横を、まるで弾丸のような速度でテッカニンが横切っていった
あまりのことに、流石の彼女も少し茫然としたような表情を見せた
振り返るまでもなく、テッカニンはきぜつしているに違いない
「・・・こだわりハチマキ辺りなのかしら」
冷静にこの破壊力を分析する
ちょっと見えにくいが、ツノの根元辺りにそれらしいものが巻かれている
勢い余っているヘラクロスがツクシのことを回り込むように、旋回してからジャスティーめがけて再び猛進していく
「コータス、まもる」
次に出したのは炎タイプのコータス、防御力が高いポケモンだ
ボールに出した位置はジャスティーとヘラクロスの間、まもるで攻撃をはじいた
更なる勢いのせいでまるでピンポン玉のようなはねっかえりを見せたが、ヘラクロスは空中で体勢を整えて再び突っ込んでくる
何度も何度も、まるでめげる様子がない
「(あの破壊力・・・攻撃方法・・・能力を活かすためと考えるべきね)」
ひとつの技の威力を上げるものだろうか、それならこだわり系のアイテムとの相性もいい
それにひとつの技に集中させて鍛えることで、命中力を集中力と練度で補わせることも出来なくもない
となると、テッカニンをかたくなるで退場させてしまったことが痛い
「(最後までに間に合わせないと)」
ジャスティーは再びまもるを指示し、ヘラクロスの攻撃をまた止めた
しかしまもるは連続させると失敗しやすい、次はもうないものと見るべきだ
更にコ―タスがその甲羅の上に乗せているのはきのみのようだが、ダメージを軽減するようなきのみではなさそうだ
「(よし、次の攻撃で仕留められる!)」
ツクシは更にヘラクロスに指示、わずかでもはずれないようにと誤差の修正を指示ではかる
連続攻撃で心配になるのはPPの消費、この能力とこだわり系のアイテム使用時においては尚のこと
だから出来る限りはずさないように、いやむしろ最初の1回か2回ははずれてもいいと考えている
威力もさほど上がらない最初は、指示と実際の誤差を測るものと割り切っているのだ
PPを上げたおかげでメガホーンの最大回数は16、それくらいは必要経費だ
コ―タスめがけて、ヘラクロスが更に勢いを増させる
ジャスティーはそれを肌で感じながら、次の指示をした
「ねっぷう」
「!」
ひゅうーと鼻で大きく息を吸ったコ―タスが、灼熱の風をヘラクロスに向けて吹き荒らした
直線攻撃で回避の利かないヘラクロスはそれをもろに食らいながらも耐え切り、コ―タスにツノの一撃をかます
防御力が高く、タイプ相性的にも優位のコ―タスだが打ちどころが悪かった
足をがくがくいわせながらも身体を上下にはねさせるような動きで甲羅の上のきのみを放り投げ、落ちてくるところを口を大きく開けて待ち構える
曲芸のような動きで食べられたもののコ―タスはHPの殆どを削り取られた状態を脱することが出来ず、次は持ちそうにない
「戻れ、コ―タス」
ジャスティーはあっさりコ―タスを戻し、次のポケモン・ネンドールを出した
地面・エスパーで、メガホーン一撃で倒せる範囲内ではある
が、ツクシは警戒するような表情で彼女達を見た
「(今、先制した)」
素早さで劣るコ―タスが、攻撃と素早さに努力値を振ったヘラクロスよりも早く動いた
彼女は素早さ上昇系のアイテムは使っていない、ともあればポケモンの持ち物だろうか
きのみには体力や状態異常を回復させたりする効果のほか、変わった効果を持つものがある
「(ステータスを上昇させるきのみ、だとしたら)」
いや、ポケモンがきのみを食べるには条件がある場合が多い
そのなかで多いのが体力が減った状態であること、技を受けるまで体力が満タンだったコ―タスではきのみの恩恵を受けられたとは考えにくい
そして、むしタイプを知るツクシはひとつの結論に至る
「(間に合うか・・・!?)」
恐らくだが、彼女の能力は『バトンタッチ』めいたものなのだ
テッカニンの特性かそくで引き上げられた素早さステータス補正、あれをコ―タスに引き継がせたのなら納得がいく
そしてコ―タスが食べたきのみも、おそらくは補正効果があるきのみ
「メガホーン!」
ネンドールめがけてヘラクロスが突進する
先程のねっぷうでダメージは受けたがやけど状態にはなっていない
「コスモパワー」
ネンドールに先制された
更にその指示は防御と特防を1段階ずつ上げる効果、ツクシの推測は確信めいたものに変わった
これ以上、補正を上げさせるわけにはいかない
そう、ステータスの補強を1体1体が託していく重ねがけで・・・最後の1体を最強にするのが彼女の目的であり勝利手段なのだろう
ツクシの思いと現実はすれ違った
・・・はずれた、メガホーンの命中率かかげぶんしんの補正か
ネンドールは生き残り、大砲の弾同然のヘラクロスは別の住宅に突っ込んだ
ジャスティーはそれを静かに目で追い、続けてネンドールに指示を出す
凄まじい音がした
ヘラクロスが突っ込んだ住宅に大穴が空き、いやそこから向こう側が見えた
貫通している
ジャスティーの背筋がぞわりと逆立った
あんな一撃、食らったら終わりだ
もっとネンドールでステータスを上げないと、今のどんな手持ちでも一撃で仕留められてしまう
それとも、素早さ補正にかけてサイコキネシスで攻撃を試みるか
「(げんしのちからなら、その両方が見込めるけど・・・ステータス上昇もしていない特攻かつタイプ不一致じゃ威力が気になる)」
コ―タスのねっぷうは効果は抜群、それなりにHPを削れたはず
・・・あの破壊力を見る限り、逆に程良く削ってしまってヘラクロスの特性であるむしのしらせを発動させてしまったのかもしれないが
先程のコスモパワーの指示、あれをめいそうにしなかったのが悔やまれる
防御を上げたところで、あの勢いは止めきれないだろう
ならば攻撃に転じるべきか、いやネンドールでステータス補正をかけて次のラプラスの状態異常技などで仕留めるか
住宅を貫通させ、大きく回り込んで更に加速するヘラクロスが迫って来た
ツノは旋風をまとい、周囲を巻き込むような・・・まるで竜巻だ
ふと自らのポケモンと目が合った
「・・・ネンドール、げんしのちから」
ジャスティーの指示に、ネンドールが地面を一部隆起させて作った岩の連なりをヘラクロスにぶつけにかかる
「(私のトレーナー能力が『戦友の遺産』・・・。託すのはステータス補正だけじゃない)」
ヘラクロスが岩の連なりに当たりながらも突き進み、砕けた岩が風に巻き込まれて宙を舞って後方へ落ちていく
そしてネンドールの身体が光り、ステータスの全上昇をジャスティーとツクシに知らせる
「ヘラクロス・・・!」
ネンドールをまるで小石のように、あの重そうな身体が軽やかに吹き飛んだ
ジャスティーがボールに戻し、次のポケモンを出す
「ラプラス」
テッカニン、コータス、ネンドールの痛みを乗り越え、ステータスを受け継いだラプラスが優雅に現れる
げんしのちからによる全ステータス1段階上昇で、今の素早さは通常の3倍だし命中100でタイプ一致の技もある
だがヘラクロスも加速する威力で、ラプラスとは距離を取れている
それに今のメガホーンの威力なら、防御2段階上がった程度なら押しきってゼロまで削り取れる
どちらも一撃範囲内、勝敗を分かつのは・・・・・・
「(僕のヘラクロスは『いつも通り』にしか出来ない)」
「(私のラプラスは『相手に合わせて』対応が出来る)」
技が決まるか、
それとも迎撃が決まるか
To be continued・・・
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