『えぇ…クリア選手が棄権を宣言したため!!ミキ選手!本戦出場決定!!ここに四人の本戦参加者がそろいました!!!』


―本戦参加者―(クォーレ・カントー)
順位・未定 レッド(カントー)
   未定 グリーン(カントー)
   未定 シン(クォーレ)
   四位 ミキ(クォーレ)



第九十四話 桁違い


〜〜〜翌日〜〜〜


ワァァァァァァ…


『これより!ポケモンキングスダム!!セキエイ予選!準決勝を開始します!!』


会場内に再び歓声が送られる

今日がセキエイ予選最終日
カントー中が注目するこの大会
テレビでも生中継され、いま頃視聴率も異常な数値をたたき出していることだろう


その大会の会場の二つのトレーナー台には、それぞれトレーナーが居る

一人はグリーン
カントーの女性を中心に高い人気を持ち、なおかつ実力者である
前日の試合でも、その強さを見せ付けている

もう一人はシン
人気という人気は無いものの、連年各地方で好成績をたたき出した若手トレーナー
また、クォーレ四天衆の一人でもあり、『閃光のシン』の異名を持つ

その二人が今、対峙しようとしていた
世界でもトップクラスの熱戦になるであろう
誰もがそう思ったはずだ
が―その思いはいとも簡単に打ち砕かれた




「行け。セト」
「行け。ハッサム」

双方が出したのは同じ『ハッサム』
トレーナーは、同じポケモンを出した時、トレーナーとしての実力が直に問われる


「コンマ四秒台。それ位のスピードで」
シンがそう言うと、セトは頷いてから、相手に向き直る


『それでは!!レディ…ゴォー!!』「行け!」




ドゴォォォォォォン…



開始を告げ終わる直前か否やのタイミングで短く指示が下った
さっきまでハッサムが立っていた位置には低く構え『突き』の体制をとっているセトが
そしてグリーンの背後には、横たわるハッサムが


一瞬の出来事だった―


『4.24秒!!シン選手!先日成立したばかりのミキ選手の記録を抜いて再び記録に名を残しました!!!』







「うっそぉ!!」
ミキが席を立つ

「・・・・・・・・」
クリアも唖然としている
「ミキちゃんに負けたくないんじゃないかしら?」
「え・・・」





〜〜〜その日の午後〜〜〜



「行け。イシス」
「行っけ!!フッシー!!」

バトル場に二匹のポケモンが姿を現す
そして―


『セキエイ予選。決!勝!戦!!スタァーット!!!』

「日本晴れ!!」
「瞑想!!」

お互いに長期戦を予想していた
双方がこの後を有利にするような技を使用した


またたく間に上空の雲が取り払われ、猛烈な日差しがあたりに振り注がれる
そんな中、イシスは目を瞑り、精神統一を図る

そして急にイシスの目が見開かれる
その直後、上級者同士のプレッシャーがあたりに撒かれる
緊迫した雰囲気が一瞬流れる―そして


「サイコキネシス!!」「ソーラービーム!!」

二人が同時に叫ぶ
イシスは、体にオーラの様なものを身にまとい、両腕を前に出した
フッシーは、背に持つ花に緑色のエネルギーが集まる
そして、双方が同時に放った

イシスの放ったサイコキネシスは、半透明でよく位置は分からないが、砕けていく地面を見ればかなりのスピード、そしてパワーを持つことが分かる

フッシーの放ったソーラービームは緑色の光線となり、かなりのスピードでイシスの一直線で飛んでいった

そして、二つの攻撃が激突する
始めは強大な念動力が光線を裂いていたものの、次第に威力は弱まり、イシスにめがけて飛んできた


「ッ!!避けろ!!」

イシスが間一髪で避ける
光線はトレーナー台のバリアにはじかれて空へ消えていった

「チィ…光の壁!リフレクター!!」

イシスの前に、二重の壁が構成される


「今のうちに!瞑想!!」

イシスは再び目を瞑り、精神を統一する


「両方張られたらなぁ…ソーラービーム!!」

レッドが少し悩みながらも指示を出す
フッシーは、再び花に栄養を溜め込み、何度も連射した

流石に強力な壁が張られているとはいえ、完全に無力化するものではない
瞑想で少しずつダメージは減っているが、やはりどんどん積まれていく
そして遂に―


バリィィィィィン…
ガリィィィィィン…


二つの壁が破られた
PPも最後となったソーラービームが直接イシスに迫る


「念力」


このタイミングでシンが言ったのはエスパータイプの攻撃技でも下のほうに位置する技
だが―


ジジジジジジイィィィィ…


その技がソーラービームを止めた
ソーラービームは、当たる直前で消え去った

「嘘だろ…」

レッドが驚愕の表情を浮かべる
でも、流石は上級者
技の能力などはある程度把握している

「地震!!」

フッシーが前足で地面を揺らす
地面タイプは打撃技
瞑想では防ぎきれない

「守る!!」

イシスは足元の地面に向かって念力を放ち、自分を浮かせ、自身から身を守る
そして
「フラッシュ!!連射ァ!!!」
高く上げた腕から何度も強烈な光が放たれる
強烈なフラッシュの連射にフッシーの目がほとんど役に立たなくなる
さらに―
「PPが尽きるまで!!影分身!!」
あたりにイシスの分身がどんどん作られていく
この状況下でイシスの攻撃を当てるのはほとんど無理といえよう



「サイコキネシス!!」

シンから指示が出される
その攻撃はどこからともなく現れ、フッシーを吹き飛ばす
驚いたことに、フッシーは立った

「ちぃ…」

それを見てシンが軽く舌打ちする
直後―

「―自然の力」

「ッ!!逃げ…」

シンが反応したときにはもう遅かった

自然の力はスピードスターとなり、必中の星を一体のイシスにぶつける
もちろんこれが『本体』だった


ドサァ…


静かに音を立ててイシスが倒れた




『ポケモンキングスダム!!セキエイ予選優勝者!!マサラタウン出身のレッド選手!!』


第九十五話へ続く…
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