――――    俺には大切な物があるのだろうか・・・・・・・。


   特別レオ編  夏の夜空に咲く花



「花火・・・・・?」

「そう、花火。」
リュウトの家『ポケモン総合研究所』で今日は花火をやるらしい。
「そんなの興味ないから俺はやらないね。」
興味無いと拒否した俺にリュウトの妹マナが泣きそうになった。
そもそも、花火なんて何だか分からないし見た記憶も無い、どういう物かも分からない・・・・。
だから、俺には興味が無いんだ・・・・。
「ちょっと、外に行ってくる・・・・。」
そう言って俺は、外に歩いていった。




アゲトビレッジ 〜聖なる祠〜

セレビィが祀る場所といわれている所・・・・。
「はぁ〜・・・・。」
祠の影に俺は座ってポケモン達の様子を見ている。
「花火・・・・・か。」
俺は昔の記憶を思い出していた。だが、うっすらとしか覚えていない・・・・。
祠に寄り掛かりながら夜空を見ていた。とても星が綺麗に輝いている・・・・。
「マナに可哀想な事をしたな・・・・・。」
『マナはレオが気に入っていましたからね。』
「フウビ・・・・・。」
俺の隣にいたのはホウオウのフウビ、俺を祝福してくれた大切な仲間・・・・。
夜でも見事にフウビの翼は虹色に光っている・・・・・。
「フウビ、俺どうしたらいいのかな・・・・・。」
『貴方は皆の憧れなんですから、くよくよしちゃいけませんよ。』
俺は何のために生きているのかも分からない、自分の居場所も・・・・何所にあるのかも・・・・・・・。
悲しくなって涙を零した。涙を流すのは滅多に無かった。ただ俺はヘルゴンザの道具しか使われてなかったから・・・・。
『貴方には、大切な仲間がいる。だから前を向きなさい大切な人がいる所へ・・・・。』
「そう・・・・・だよね。」
俺はすくっと立ち上がった。涙を拭いて聖なる祠から出て行った・・・・。



外に出てみると誰かの鳴き声が聞こえた・・・・・。
夜の空を見てみると漆黒の体をしたルギア・・・・ダーク・ルギアのクウヤだ。
そしてクウヤの背中に乗っているのはリュウトだった。
「レオさーん!!」
手を振っているのに気が付いた俺は何故か知らぬ間に手を振り返していた・・・・。

「レオさん、此処にいたんですか!!」
どうやら俺を探していたみたいだった。リュウトは大きく息をすった。
「良かったです。レオさんが無事で。」
俺が無事でよかった・・・・・?なんで?なんで俺をこんなに心配してくれてるんだ・・・・・?
リュウトは俺の手を握り締めてよかったァ〜という顔をしていた。
俺は困った顔でフウビの顔を見つめるとフウビはニコッと笑ってこういった。
『さぁ行きましょう、大切な仲間がいる所へ。』
フウビは俺の服の襟首を嘴で鋏み自分の背中に乗せた。フウビとクウヤが飛び立つとキュオオオオと鳴き叫んだ。
クウヤは俺の方を見るとこう言った。
『お主、前と違っていい顔してるではないか。』
「・・・・・!!」
俺は少しビックリした。クウヤは何をいきなり言うんだ・・・・!!?
『貴方も貴方のご主人もいい顔してるわよ。』
『ははっ、それはうれしいね。』
クウヤも俺と同じ様に一人だった。扱き使われて、心の底から助けを求めてたんだろう・・・・。
俺と違って・・・・・。




ポケモン総合研究所に帰ってくるとマナ達は今夜やる花火の準備をしていた。
フウビとクウヤが地上に降りると俺とリュウトは地面に着地した。
やっぱり行こうか迷っていると、フウビが俺の背中を嘴で優しく押した。
『行ってきなさい、皆が待ってますよ。』
「いこ、レオさん!!」
俺はリュウトに引っ張られると焦った顔で走る事になった・・・・・。
「あ、お兄ちゃん!レオ兄ちゃん!!」
迎えに着たのか、マナはポケモン総合研究所の入る森の入り口に待っていた。
そして、マナもリュウトと同じように俺の手を引っ張っていく。
入り口に入ったとたん俺はある光景を見てしまった。
パパパンッと何かの音がしてみてみると、
クラッカーを持ったユウキとかヒカリ、ファイアや町の人々、ヘルゴンザ達が俺を出迎えてくれていた。
「・・・・・!!」
「「「ハッピーバースディ!!レオ!!」」」
7月24日・・・・そう、俺の誕生日だった・・・・。
花火などは俺を祝ってくれるために用意してくれたのだった・・・・。
「な・・・・なななななな、なんでヘルゴンザが!!?」
「リュウトの妹が『今日はレオ兄ちゃんの誕生日があるから来なさい!!』と、無理矢理連れてこられた・・・・。」
俺は呆然としていたが、馬鹿馬鹿しさで笑ってしまった。
「っぷ・・・・あはははははははは!!」
「な・・・・何がおかしい!!」
周りの人達は不思議そうに此方を見ていた・・・・・・・・。
「レオ兄ちゃ・・・・・・ん?」
俺は苦しそうに涙が溢れるのを止めていたが、涙が勝手に零れてしまう。
「あははは・・・・はは・・は・・・っひっく・・・・うぅ・・うわああああああああああああああ!!」
そして、俺はとうとう泣いてしまった・・・・。
人前で泣く事は無かった、隠れて泣いていたから・・・・・。
泣くのを許してくれなかったあのヘルゴンザは俺を優しく抱いて言った。
「お前はもう一人じゃねぇんだ、泣きたかったらう〜んと泣け苦しかったら誰かに助けを求めてやれ。」
俺はその時何かを感じた。
あぁ、これが仲間という暖かさなんだなと・・・・・・。
ヘルゴンザの服を掴みながら俺は泣いていた。悲しみの涙ではなくて、嬉しさの涙を流していた・・・・。


皆と一緒に花火を見たり、ユウキに飛び蹴りをしたり皆が笑ったり
して皆と一緒に一日の夜を満喫していた。
忘れかけていた仲間の思いを俺は今思い出した、皆のお蔭だと心の底から思った。




俺の大切な物はこの世界・・・・この地方の人達なんだな・・・・と。




俺は感じた・・・・。
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