ヒワダタウン、ヒワダジムのジムリーダー、ツクシ。
わずか若干10歳にしてジムリーダー免許を取得した、秀才少年。
しかし、彼には大きな秘密があった・・・。

小説 僕たちイーブイキッズ特大特別版 第2弾 

「運命共同体」


―「ツクシがナオミで、ナオミがツクシで・・・。」―
―ヒワダタウン、ヒワダジムの隣の民家―
この民家こそがツクシが1人で住んでいるという2階建ての小さな家。
・・・いいや、厳密にいえば違う。
1人で住んでいるというわけではない。
ナオミ「ねぇ、ジムリーダー替わってくれない。」
ツクシ「へ?」
突然、ツクシの双子の姉であるナオミが言った。
ツクシ「い、いきなり何!?」
ツクシの双子の姉、ナオミ。
彼女の事を知っているのは、ツクシ本人と2人の両親、そして従兄弟のユージと身内、そして同じ学校にいたクラスメイト達だけだった。
「何故10年間も彼女の存在がひた隠しになっていたのだろうか?」と思う人もいるだろう。
実は、2人が生まれて2年後、両親はお互いに仕事で離ればなれになり、ナオミの面倒を父親が、ツクシの面倒を母親が見る事となったためだ。
そのため、3年前に母親が他界し、ツクシがナオミと父親の家に来るまで、実際にお互い会った事は無く、それまで自分たちは片親に育てられ、ずっと一人っ子だと思っていたのだ。
窓際に写真がある。その写真には、赤ん坊を抱く女性と、その横に医者のカッコをした男性が立っている。
この写真に写っている赤ん坊はナオミだけだ。
コレの影響に違いない。
当然学校での反応も同じだった。
2人が一緒に学校に通うまで、クラスメイトは全員、「ツクシに兄弟はいなくて、従兄弟が一人いるだけ」だと思われていた。
だが、ツクシが双子の弟だという事は秘密となった。
つまり、外に2人の噂が漏れたのは2人が生まれてから10年後。・・・というわけではなく、実際には7、8年してからだった。
が、家の外へ出てみれば、学校でも同じ事だが、2人はよく間違われてしまっていたのだ。
実は、ナオミとツクシは一卵性の双子で、外見も、髪の色や形もよく似ている。
そのため、姉であるナオミがヘアバンドをつけてないと、2人の見分けが全くつかない。
だが、性別は反対で性格は全く違う。
こんなややっこしい事がありながらも、(6歳から10歳までの)4年間、基礎学習とサバイバル訓練を学校で学び、2人は無事卒業。
その後、ツクシはジムリーダー試験を受け、見事合格し、ヒワダジムの当時のジムリーダーに戦いを挑んだ。
勝敗はツクシの勝ち。そして、ツクシはヒワダジムのジムリーダーとなり、「虫使いの秀才少年」という別名が付いた。
一方、ナオミもジムリーダー試験をツクシと共に受けたのだが、不合格だった。
しかし、当時の試験官や受験生達はさぞ驚いただろう。
何しろ、見分けのつきにくい双子が2人揃って試験会場にいたからだ。
受験生達の中には、「お、同じ奴が二人いる!!?」と仰天し、泡を吹いて倒れ込み、受験前に不合格になった者が2、3名いた。
今だと、ナオミはBカップで見分けが付くが・・・。
・・・いや、微妙だ。
ナオミ「実はね・・・、ジャーン。私ねジムリーダー試験合格して、受かったの。
で、ジムリーダー体験したいの。お願い、3日だけでいいから!」
1年前に不合格だった試験に見事に合格して、喜ぶ姉ナオミ。
ツクシ「・・・それって、姉さんが僕のフリをするって事でしょ?」
弟ツクシは姉の意見に疑問をはさんだ。そして、
ツクシ「無理だよ・・・。」
と言った。
ナオミ「何で?私は虫ポケ嫌いは克服して、あなたの声をマネる練習もしたのよ。」
ツクシ「戦うスタイルは違うし、勝手に入れ替わったら重違反だよ。習わなかったの?」
ナオミ「あぅ・・・、」
ナオミも予想はしていたが、却下された。
ナオミ「でもね・・・、」
ナオミはモンスターボールを3つ手にとり、ポケモンを出した。
ナオミ「ほら、アゲハントに、バタフリー。それにモルフォン。」
ツクシ「・・・。」
ツクシは立った。
そして、部屋を出て1階に下りようと、階段の前に立とうとした時に、すこしボーっとしていたら、左足の小指を角にぶつけた。
ご承知のとおり、
ツクシ「痛ぁーっ!!!」
と言って、ツクシが声を上げたのは言うまでもない。
誰でもこれは痛い・・・。(角に小指だし・・・。
その声にビックリして、ナオミが部屋から顔を出した。
ナオミ「どうしたのよ、ツクシ!?」
ツクシ「角に足の小指をぶつけたんだよぅー!!!」
ツクシは左足を抱えながら、片足でピョンピョン跳ね回る。
そのせいで、前を見ておらず、階段のところで足を滑らせて、倒れそうになった。
それを見てナオミは駆け出し、ツクシの手をとったが、共に階段から転がり落ちてしまった。
途中で1回お互いの頭に激しくぶつけ、最後は階段の目の前にある壁に2人とも激突。
2人とも2、30秒倒れていたが、先にナオミが目を覚ました。か、に思えたが・・・。
ナオミ「痛たたぁ・・・、大丈夫、姉さ・・・って、アレ、何で●が・・・?(汗)」
ツクシ「痛たっ・・・、大丈夫、ツクシ・・・って、何故に私がもう1人!?」
ナオミ「ま、まさか、姉さん!?」
ツクシ「そのまさかよ・・・、」
ナオミ「って、事は、僕たち・・・、」
ツクシ&ナオミ「入れ替わっている!!!!

ご説明いたしましょう!!
2人が階段から転げ落ちる時に、お互いの頭を1回ぶつけたが、普通なら、心と身体が入れ替わるなんてことはない。
しかし、お互いに前頭部をかなり激しくぶつけたために、こんな現象が起きてしまったのだ。





―「兄弟ゲンカ」―
とにかくナオミ(=ツクシ)は冷凍庫から氷を出し、ツクシ(=ナオミ)はキッチンからビニール袋を2つ出し、水を少量入れ、ナオミ(=ツクシ)はその中に氷を均等な量を入れた。
そして、2人は階段を上りながら、前頭部に水と氷の入ったビニール袋をくっ付け、冷やした。
2人は2階の部屋に閉じこもり、「これからどうすればいいのか」と考えていた。
ナオミ(=ツクシ)「はぁ・・・、どうしてこんなことに、なっちゃったんだろう・・・。」
ツクシ(=ナオミ)「とにかく、これで私がジムリーダーをやることは確定ね。」
ナオミ(=ツクシ)「何故?」
ツクシ(=ナオミ)「だって、心と身体が入れ替わったなんて、誰にも信じてもらえそうにないじゃない。それに、勝手に入れ替わったら違反なんでしょ?」
ナオミ(=ツクシ)「うぐぅ・・・、(い、言われてみればその通り・・・、・・・って、これって、さっき、僕が言っていたセリフのような・・・。)」
ツクシがナオミで、ナオミがツクシで・・・。という、ややっこしい現象が起きてしまっている。
ナオミ・・・つまりツクシは、「どうすれば元通りに戻れるか?」と考えていたが、同じ方法は危険すぎると考えた。
ツクシは覚悟を決めて言った。

にしても、ややっこしいので、今度はナオミ(=ツクシ)は、ツクシ♀にして、
ツクシ(=ナオミ)はツクシ♂ということにしておきます。
ツクシ♀「ちょっと待ったーっ、何で僕が「ツクシ♀」って表示なのさぁ、作者ぁ!!」
作者(ラコタ)「だってよ、おまえ今、女の体だろ?
だから、「ツクシ♀」っつー表示なんさ。」
ツクシ♀「ぅ・・・、」
今のはツクシ(♀)の心にグサンッといった。
こう言われちゃ、さすがに反論できない。
それに、別事情から言わせてもらえば、ツクシファンの極少数派に「「ツクシ♀」もいいかも。」と思っている人がいるため。(蹴
(ちなみにこの小説はツクシとナオミが入れ替わってしまうという話です。女装でも、完全♀化けというわけでもありません。)


ツクシ♀「・・・姉さん。残念ながら万策尽きたよ・・・。」
ツクシ♂「要するに、一生このまま!?
ツクシ♀「そう。
カビィーンッ、
ツクシ♂「そんな、そんな、そんなぁ!!わたし本当は女なのよ!なのに、男子校へ行けって言っているのと同じよ!死刑宣告に近いわ、今の発言!!」
キィーン、
ツクシ♀「うぁ・・・、じゃぁ、何か考えがあるなら教えてよ!!
ツクシ♂「ぅ・・・、」
ツクシ♀「ほらね、姉さんはいつもそうだよ。みんな他人任せで、」
グサッ、
ツクシ♀「自分で考えようとしないし、よくそれでジムリーダー試験受かったよね。」
グサグサッ、
ツクシ♂「うぅぅぅ・・・、そういうツクシの方だって、昔は自慢ばっかりしていた、かわいげない弟で、」
グサッ
ツクシ♂「物知りだけなのがウリだっただけ。だから、クラスメイトのほとんどがあなたから離れていったんじゃない。」
グサグサッ
ツクシ♂「もう、分かったわよ、こうなったら、とことん男として生き抜いてやるわよっ、これからは私・・・じゃなくて、僕のことを「兄さん」と呼べ!!」
ツクシ♀「んな、メチャクチャな!!」
ツクシ♂「悔しかったら、あ・・・じゃなくて、おまえも女の子らしいしゃべり方をしたらどうだ!!」
グサンッ
ツクシ♀「い、言ったね・・・、わかっt」
ツクシ♀は話を途中で止めた。そして、こう言った。
ツクシ♀「・・・なんだか、こんな口ゲンカになったのは久しぶりだね・・・。」
ツクシ♂「・・・確かにね・・・、それに話の観点までズレているわね。問題はどう戻るか?よね。」
ツクシ♀「だけど・・・、さっきと同じ方法は危険すぎるし・・・、」
ツクシ♂「うーん・・・、とにかく、お父さんに相談してみる?」
ツクシ♀「コガネシティへ?ヤダなぁ、こんな格好で町を歩くなんて・・・。」
ツクシ♂「私だって恥ずかしいわよ。でも、相談してみない事には・・・。」
実はヒワダジムにパソコンは無く、購入予定は1ヶ月後なのだ。
さらにメールアドレスを付けるとなると、さらに1週間掛かる。
ポケモンと共存しているこの世界だと、人は10歳になるとポケモントレーナー免許の試験を受けることができ、合格すれば、ポケモンと旅をする事ができる。
いや、むしろ、旅に出るのだとしたら、ポケモンなしでは無理となっている。
さらに、10歳で小学校を卒業した後、中等学校へ進学が可能であり、その後、高等学校へも進める。
例え、中等学校を卒業してなくとも、小学校を卒業し、高等学校や専門学校の試験を受けて合格すれば、入学OKの通知が来る。
小学校を3年やって、中等学校を6年、高等学校を2年やれば、その後、あの有名なタマムシ大学や、実力では2流だが、進学率の高いヤマブキ大学などへ進学できる。
しかし、タマムシ大学では合格するのには、服装や態度はもちろんの事、身長制限まである。
その主な理由は席だ。
身長を150cm越していないと授業中、いちいち席を立たなければいけなくなる。
そのため、黒板の字は前の人の背が関係してよく見えず、授業がどんどん先へ行ってしまい、さらには授業についていけなくなり、終(しま)いには、留年か退学になっていく。

免許を取っていて、旅をしなくても、親と別居が可能である。(しかし、タバコやお酒などは、法律では15を越えていないとダメ。)そのため、ツクシとナオミは二人暮し。
父親は精神科やカウンセリングを専門とする医者であり、母親はポケモン学者だった。
2人の母親は1年前に化石の発掘中に起きた落石事故で亡くなっている。

ツクシ♂「とにかく、お父さんの所へ行ってみましょ。」
ツクシ♀「・・・そうだね。でも、コガネシティへ行くとなったらウバメの森を抜けないと・・・。」
ツクシ♂「それが問題よね。私たちは確かにポケモントレーナーだけど、持っているポケモンも、戦うスタイルさえも違う。ポケモンたちが混乱するわ。」
ツクシ♀「(これさっきの僕のセリフだ・・・。)」
ツクシ♂「むしよけスプレーを買って来たほうがいいかもね。」
ツクシ♀「何本ぐらい?」
ツクシ♂「せいぜい2人分あわせて12本ね。」
ツクシ♀「往復で?」
コクッ、
ツクシ♂は首を縦に振った。つまり「YES」だ。
ツクシ♀「わかった。買ってくるよ。」
ツクシ♂「でも、あたし達が逆になっているのを忘れないで。」
ツクシ♀「分かっているさ。」





―「トラブル、トラブル、またトラブル」―
ウバメの森は草の生い茂りがとても激しい森で、昼間でもろくに光が当たらない。
ツクシ♀はポケギアを見た。気付けばもう午後7時。
今日中にウバメの森を抜けるのは無理だと考えた二人は野宿を始めた。
「虫除けスプレーもかけたし、ポケモンは寄って来ないだろうから安心して眠れる。」
と2人は思った。・・・そのはずだった・・・。
ブーン、
2人「ギャァァァァーッ!!!」
2人がたまたま野宿した場所は、・・・スピアーの縄張りだった!!
「縄張りを侵された!!」と思い込んだスピアーの攻撃を交わす手段は3つ、
@.ポケモンの攻撃で一撃気絶させる。
A.ポケモン用○虫剤で身動きを取れなくする。
B.伏せる
2人が選択したのは当然Bだった。
@の場合、一撃で気絶させるのは難しい。
Aの場合は、ポケモン用○虫剤がない。
・・・んな、説明は置いといて、
とにかくスピアーの攻撃を交わした2人は、スピアーがいないうちに荷物を急いでまとめた。
そして、急いで移動した。


翌朝、2人は荷物をまとめて歩き出した。
昨日の夜、どうにかスピアーの縄張りから離れ、結局夕食を取らず、ようやく安眠できたのは午前0時頃。
腹の虫がグーグー鳴りながらも、2人はウバメの森を歩いて行く。
ウバメの森のゲートはもうすぐだ。
そこで朝食を食べられる。
・・・しかし、そうは甘くなかった。
虫取り少年がゲートの前で待ち伏せていた。
虫取り少年「トレーナー発見っ!
・・・って、あのヒワダジムのジムリーダーのツクシ!?
しかも何故に2人!!?」
・・・相手は虫取り少年だが、ツクシが2人いるように見えて混乱している。
・・・それもそのはず。さっきも言った通り、ツクシに双子の姉がいるという事は外部には知られていないからだ。
さらに双子でカッコが似ているせいで、よく間違われる事もしばしばある。
そんな事は置いといて、ツクシ♂はバッとツクシ♀の前に立ち、虫取り少年の鼻先に近寄った。そして・・・、
ツクシ♂「おぃ、オメェそっから、退け。
そうツクシ♂は虫取り少年に脅すように言うと、
虫取り少年「ひぇ、ひぇぇぇ〜・・・。」
・・・あまりの迫力にビックリしたのか、虫取り少年は腰を抜かし、黙って道を空けた。
そして、ツクシ♂とツクシ♀は虫取り少年を素通りして行った。
虫取り少年「(ふ、普通じゃない、全く異常だ。ツクシはまずあんな目つきはしない奴だし、よっぽどの事が無い限り人から挑まれたバトルを断るような奴でもない。
むしろ、学校でそう習ったはずなのに・・・。
しかも、何なんだー、ツクシの後ろにいた女の子はーっ!?
・・・ひょっとして、ツクシのガールフレンド!?
・・・にしては似すぎていたし・・・、一体何者なんだぁーっ、あの女の子はーっ!?)」
この虫取り少年はツクシのバトル友達なのだ。
しかし誰でも顔見知りのはずの人に、あんな他人のような目つきをされるとさすがに疑問に思う。
虫取り少年の頭の中は混乱が渦巻いていた。

ツクシ♀「ね、ねぇ、ユウイチ君にあの態度とセリフはまずかったんじゃ・・・。」
ツクシ♂「今は急ぎたいのにトレーナーなんか相手にしていられない。
ああやって言わなければ退かなかったわよ。」
ツクシ♀「で、でも・・・、急ぐ理由なんて何かあるの?」
ツクシ♂「・・・お腹が空いたから・・・。」
ツクシ♀「やっぱりかぁ・・・。」
ツクシ♂(ナオミ)の大きな欠点は、お腹が減っている時にジャマが入ると、なんであろうと必ず激しく追い払うこと。
とにかく2人はウバメの森のコガネシティ方面出口である、北ゲートの2階で腹ごしらえをしていた。 
満腹になったところで、一休み。しかし・・・、
ツクシ♂「う、うぐぅ・・・。」
ツクシ♀「・・・どしたの?」
ツクシ♂「た、炭酸ソーダ飲んだせいで、お腹痛い・・・。」
ツクシ♀「ダァーッ、」
ツクシ♀、座っていたイスごとズッコケた。
ツクシ♀は内心思った。「姉さん、僕の体の体質は炭酸には合わないって一番知っているのは姉さんなのに、何故に今、炭酸物を飲む・・・?」と。
口には出せないがもっともな突っ込みだ。
ツクシ♂「と、トイレ何処?」
ツクシ♀「(コレでも姉か・・・?あぁ・・・、僕はなんていう頼りない女の子の弟になってしまったんだろうか?)」
あぁ、またとんぜもねぇ事を思っているな、コイツは。
ジムリーダーの名が泣く。
・・・というよりも、ツクシ♀にはもっと心配な事があった。それは・・・、
・・・言わない方がいいだろう。とにかく、彼のプライドに関わる事だ。
このままだと、元に戻った時に自分が恥ずかしい思いをするからだ。
ツクシ♀「ね、姉さん、トイレはあっち!」
ツクシ♀は階段の横のくぼみを指差した。
ツクシ♂「あ、ありがとうぅぅ・・、うぁー、漏れる〜!!!」
ツクシ♀「そんな大げさに言わなくても・・・。」
ツクシ♂はトイレの洋式便座の部屋に飛び込んだ。
そして、お腹をスッキリさせた・・・までは良かった。
出てきた瞬間ビックリ。
トイレに入ってきたのは・・・、女性ばかり。
そう、女子トイレに入ってしまったのだ。
本当は男子トイレに入らなければならなかったのにも関わらずにだ。
その数秒後、女子便で悲鳴が挙がったのは言うまでも無い。

あの後、どうにか2人は荷物をまとめて逃げ、北ゲートを出た。
しかし、問題は帰りだ。
ヒワダタウンへの一番の近道は、ウバメの森を抜けないといけない。
その為にはさっきの北ゲートを通らないといけない。
あぁ・・・、後が怖い。
とにかく、2人はその事を考えるのは後にした。
今はコガネシティに行かないといけない。
2人はしばらく歩き、やっとコガネシティが見えてきたが・・・、
???「おぃ、オメェらっ!」
ツクシ♂&ツクシ♀「!?」
いきなりの声にビックリする2人。
辺り一面見てみると、なんと、バイクに乗った男女、ヤンキーなどが総勢30人もいた。
ヤンキー1「ここはオレらのシマだ。勝手に入って来んじゃねぇ!」
ヤンキー2「ここを通るんだったら金出しな。1人10000万円で通してやってもいいんだぜ。」
ヤンキー3「それともポケモン勝負でもするかぁ?あぁーん?」
恐っ、不良にはケンカを売らないほうがいいのは訳がわかる。
こんな集団を相手にするのは自殺行為だ。しかし、人生避けられない問題は必ずある。
コガネシティに通じるのはこの道ひとつだけ。
2人は総勢30人を相手にポケモン勝負を挑んだ。
相手は次々とポケモンを出してきた。
出してきたのは、カイリキーをはじめとする格闘ポケモンや、ヘルガーやグラエナ、ニューラなどを含む悪タイプ、そして、アーボックやクロバットなどの毒タイプ、さらにヤンキー集団のリーダーはゴローニャを出し、全部で最低でも3〜40匹、一斉に出してきたために2人は一瞬と惑うが、2人とも、お互いのポケモンを出した。
そして、2人対30人という、前代未聞なバトルが始まった・・・。
ツクシ♂「アゲハント、銀色の風!!」
ツクシ♀「スピナーイ、ミサイル針!!」
2人のポケモンが、どんどん相手を蹴散らしていく。
バタフリーは風起こしをし、モルフォンはサイケ光線を放つ。
ストライクは連続切り、レディアンは連続パンチ。
と、それぞれのポケモンの技を使いまくり、最後はヤンキーのリーダーのゴローニャを残すのみとなった。
まるでシーカークラスターミサイルを連弾したかのように、そのゴローニャ以外全滅していた。
ヤンキー1「な、何ィ、リーダーのゴローニャ以外全滅だと!?」
ヤンキー2「く、なんて、強いんだ。」
ヤンキーリーダー「(さすがは、ヒワダジムのジムリーダーだ。あの秀才小僧のポケモンはかなり鍛えられているが、・・・あの女は何者なんだ?)」
ヤンキー3「く、クソゥ!」
ツクシ♀「道を空けてください。」
ヤンキー4「何言ってんのさっ、こっちにはまだリーダーのゴローニャg」
ヤンキーのリーダーは女性ヤンキーを止めた。
ヤンキーリーダー「待て。・・・通す前に1つ聞きたいことがある。ツクシだったな、おまえの横にいるその女は何者だ?」
この質問に2人は戸惑った。
しかし、
ツクシ♀「ツクシの姉のナオミよ。」
・・・ツクシ♀はそう言った。大声ではっきりと。
・・・その直後、ヤンキーの間で笑いが起こった。
ツクシ♂「何がおかしい!?」
笑いをこらえながら、リーダーは言った。
ヤンキーリーダー「プッ、・・・ハハハハハハハ、おまえらの親はどういう名前の付け方をしたんだぁ!?「ツクシ」を数字で直しゃぁ、「294」だしよ、「ナオミ」を数字で直しゃぁ「703」だしよ、ホント、どういう付け方したんだ?プッ、・・・ハハハハハハハ、通っていい、通っていいぞ、こんな、ハ、おもろい話、生まれて初めてだ、ダーッハッハハハハハー。」
・・・2人はこの11年間の中で最も屈辱的な言われ方をされながらも不良集団の空けた道を通った。まだ笑い声が聞える。





―「コガネシティ」―
何はともあれ、2人はコガネシティに着いた。
そして、カウンセリングセンターの中に入った。

カウンターでカウンセリングセンター院長、津田ユウキの子供で、今すぐ父親に会いたい。と言った時に、受付の女性はすぐさま院長のオフィスに電話を入れた。
しばらくして、関係者の男性に案内されて、カウンセリングセンター院長のオフィスに2人は入った。
ユウキ「おぉ、ナオミとツクシじゃぁないか、なり押しかけてきてどうしたんだ?」
ツクシ♀「と、父さんそれが・・・。」
ユウキ「ん?」

ユウキ「なるほどなぁ・・・、お互いに頭ぶつけたせいで、お互いの意識が入れ替わってしまったと。・・・こういう珍しい症例は・・・、確かあったような・・・。」
2人「本当に!?」
ユウキ「ちょっと待っていてくれ。」
ユウキはパソコンに入った医療データを検索した。
すると・・・、
ユウキ「・・・あったぞ、コレだ。」
ツクシ♂とツクシ♀の2人は父親のパソコンの画面を覗き込んだ。
ユウキ「[31年前にフスベシティで当時15歳の2人の男女が石段から転げ落ちた際に頭を1回激しくぶつけ、お互いに意識と記憶がそっくりそのまま入れ替わってしまった。治療法は・・・、]」
ツクシ♂「?どうしたのパパ。」
ユウキ「・・・[治療法は不明。]」
2人「えぇーっ!?」
「万事休す。」2人の頭の中にはその言葉しか浮かばなくなっていた。
しかし、次の一瞬に出た、父親の言葉で正気を取り戻した。
ユウキ「・・・[治療法は不明。しかし2人はその後、お互いの意識、記憶を入れ替え、元の生活に戻ったという。]」
2人「!?」
その言葉に一番驚いた。
そして、2人は決心をつけた。
ツクシ♀「父さん、僕決めた。その2人が住んでいたフスベシティに行って、どうやって元に戻ったのかをその2人に聞けばいいんだ。」
ツクシ♂「それで、その2人はその後どうなったの?」
ユウキ「[その事件から12年後、2人は結婚し、それから3年後、無事、男の子を出産。その子供の名は・・・、「ワタル」。]」
ツクシ♀「「ワタル」って、あのリーグチャンピオンの?」
ツクシ♂「あぁーん、あのワタル様に会ってみたーい!」
ツクシ♀&ユウキ「(お、オィオィ、様って何だよ?様って?)」
皆さんもツクシ♂の言葉から分かるとおり、ナオミはチャンピオンのワタルのファンなのだ。
しかも、そのファンクラブが出来た当初に入っていて、ナンバーは「2000番」。
何気にキリ番だ。
今じゃ、そのファンクラブの会員は「2000」という数字の、最低でも50倍以上には膨れ上がっているらしい。
誰かの言葉を借りれば、「あぁ・・・、人気者は辛いよのぅ。」と。
実際、ワタル自身もファンの押しにかなり困っているらしい。
しかも、多くが女性ファンで、ファンレターの中に「結婚してください!!」と書き込む人までいるという。主婦の人まで入っているのもビックリ。

ツクシ♂「私決めた!!フスベシティ行く!!(そんでもって、ワタル様に自分の気持ちを告白するの、フフフ・・・。)」
ツクシ♀「(あーぁ、姉さんったらまたしょーもないことを考えているな。
・・・顔にその表情が出まくっているし。)」
「顔にその表情が出まくっている」。まさにその通りだ。
ツクシ♂の表情は、超が6つ付く位のデレデレ状態。(超6つってどれぐらいだよ!?
つーか、ツクシ♀っ!
おまえも人の事言えないだろうがっ!





―「フスベシティへ」―
2人はヒワダタウンに戻り、旅支度を始めた。
そして、目指すは、フスベシティ。
2人は明日に備えて、フスベシティまで一番早い行き方を考えていた。
そして、2人は6ヶ月前に開通したJSR(ジョウト・セクターレールウェイ)の一線、「豊臣線」でフスベシティへ行こうと考えていた。
しかし、豊臣線のヒワダ駅に電車が止まるのは1時間に2回。
1回乗りそびれると、30分も待たなければならない。
その30分の間に通り過ぎていく電車は、区間準急、準急、特急など。
要するに普通電車しか止まらないのだ。
その事を考えて、2人は
やっと電車が駅に着いて、乗ることが出来た。
そして、電車は駅のホームから出た。
普通=各駅停車なため、終点のフスベシティまでのもの36の駅に止まる。
じれったいとは思ったが、別に焦る理由も無く、徐々に客が増えてきた。
電車が走っている間にも、2人の乗る普通電車は次々と他の電車に追い越されていく。
そして、やっと終点のフスベシティに着いた。
しかし、その頃にはもう外は昼飯時の12時半になっていた。
案の定、2人は近くのラーメン屋で食事をすることになった。
・・・フスベ産のラーメンは旨いと評判の味だったが、実際そのとおりだった。

午後、2人は手がかりを探しに、ワタルの両親の家を訪ねた。
2人は道を聞いているうちに、いつの間にか、フスベシティの郊外に来ていた。
ここは住宅街で、フスベシティの中心部よりも賑やかで、住人も異常なくらい多い。
商店街も並び、24時間経営のコンビニもある。
たまたま、その日は商店街の魚屋にスパイロさんが買い物をしていた。
でも、2人に気付くことなく、家へ帰っていく。(ま、エキストラだからいいか・・・。)
「少しは気付けよ!」という意見は馬耳東風(聞く耳持たず)。
一方、ツクシ♂♀の2人は、ある3階建ての一軒家にたどり着いた。
その表札には、[竜川]と書かれていて、その苗字の右横には、家族の名前が書かれている。
[タイチ][ユリ][ワタル]・・・。「この家だ!」と、2人は確信を持った。
早速、ツクシ♀がインターホンを押した。
ピンポーンッ、と呼び鈴が鳴る。
???「はーい?」
ガチャッ、とドアが開き、中から3、40歳くらいの女性が出てきた。
ワタルの母「どなた?」
ツクシ♂「あの・・・、すいません、聞きたいことがあるんですが・・・。」
ワタルの母「?」

2人はチャンピオン、ワタルの実家に入った。
ワタルの母「・・・それで、聞きたいことって何かしら?」
ツクシ♀「父から聞いた話ですが・・・、31年前に、あなたは確か、ある男の子と一緒に石段から転げ落ちて・・・、」
ワタルの母「「お互いに頭をぶつけて、意識と記憶が入れ替わってしまった。」って言いたいんでしょ、ツクシ君にナオミちゃん?」
ツクシ♂&ツクシ♀「!?」
ワタルの母「ユウキ君の子供でしょ?
あなたたちのお父さんと私は知り合いで、昔はよく一緒に遊んだわ。
昨日の夜、あなたたちのお父さんから、電話が来たのよ。
理由は聞いているわ。解決法はあるけど・・・、秘密を守れる?」
ツクシ♂&ツクシ♀「はいっ!」
はっきりと、きっぱりと言った。
ワタルの母「・・・わかったわ、話すわ。絶対にこの話を口外しないで。
私たちが、意識と体が入れ替わってしまった後、私たちは手当たり次第、古い巻物や書物を読み漁った。
      その時、タイチ君は・・・、つまり、私の夫は、私たちよりも前に、同じ境遇に立たされた兄弟のことが書かれた古代の本を見つけたの。
      私たちはその本を読んだ。すると、元に戻る手掛かりがあったの。それが「シロガネ山」よりも大きい、巨大な山、「フスベ山」。その本には、「フスベ山の高原へ登れ」と書いてあったの。
      何があったのかは・・・、・・・何故か、その部分の記憶がスッポリと抜けていて・・・、思い出せない。でも気づけば自分の家に戻っていて、体と頭の中が元に戻っていたの。
      絶対に「フスベ山の高原」に手掛かりがあるはずよ。」





―「フスベ山の魔境へ」―
フスベ山。それはシロガネ山より一回り大きい山であり、標高2200m程度なのにもかかわらず、頂上には霧がかかっている。そのため、さまざまな憶測が飛び交っている。
フスベ山の高原も霧で覆われているため、何があるのかはまるで未知であり、調査に向かった探検隊も何もわからないまま帰ってきたという。
その後、多くの冒険家がこの山の高原に臨んだが、大半は落石や落下などで命を落としており、生きて帰ってきた冒険家達は、調査に出た隊員たちと同じく、高原に着いた時の記憶がまるっきりなかったという。
ツクシ♂「きゃぁっ、」
さらに、高原のすぐ下の岩肌辺りは、非常に崩れやすく、この辺りで命を落とした冒険者が多いらしい。
・・・ツクシ♂の足場が崩れている。
幸いな事に、下にツクシ♀がいて、とっさに左手を握ったおかげで、ツクシ♂は地上へ真っ逆さまに落下せずに助かったのだ。

―フスベ山の高原―
ツクシ♀「ふぅーっ、やっと着いた・・・。」
ツクシ♂「死ぬかと思った・・・。」
???「・・・何が望みだ?」
ツクシ♂&ツクシ♀「・・・へっ?」
???「・・・何が望みだ?」
声が聞こえた数秒後、突然、フェニクスが現れた。
ツクシ♂「フェ、・・・フェニクス・・・!?」
ツクシ♀「天空の守護神「ホウオウ」の片割れ・・・。」
フェニクス「その通りだ。何も用がないのなら、記憶を消してお前らの家へ送り返す。」
ツクシ♂「頼みがありますっ!」
フェニクス「何だ?」
ツクシ♀「僕たちをそれぞれ元の体に戻してくださいっ!」
2人はフェニクスに頭を下げた。
フェニクス「・・・知っているさ。」
ツクシ♂&ツクシ♀「へ?」
フェニクス「なかなか似合うと思うがな。このままでいるのも悪くないのでは?」
2人は唖然とした。
フェニクス「・・・なーんてね。この左右の祭壇に眠ればいい。
さすれば我が魂を元の体に戻してやろう。・・・だが、急がねば。
さぁ、どちらでも良い、まず右の祭壇に眠れ。もう1人は左の祭壇に眠れ。」
ということで、右の祭壇の上に眠ったのはツクシ♀。左側はツクシ♂。
そして、その2人の眠る左右の祭壇(幅約1m)の間で、フェニクスは呪文を唱える。
すると、2人から魂が同時に飛び出した。そして、空中で何度も輪を描いた後、ナオミの魂は、ツクシ♀・・・つまり、ナオミの元の体に戻った。ここまでは順調だった。
しかし、ツクシの魂はツクシ♂の体に帰ってこない。
ナオミは起き上がった。
上を見てみると、まっすぐツクシの魂が空に上っていくのが、ハッキリと見えるではないか。
ナオミ「ツクシッ!!ちょ、ちょっと、コレはどういうことよっ!」
フェニクス「マズイ・・・、「ヘブンズゲート」へ向かっているっ!!」
ナオミ「「ヘブンズゲート」って・・・、まさかっ?」
フェニクス「そうだとも、「天国の門」だ。体から離れた魂は本来そこへ行く。」
ナオミ「でも私は・・・。」
フェニクス「説明は後でする、背中に乗れっ!」

1人と1匹は必死にツクシの魂を追いかける。
時速で換算すれば、ツクシの魂は500kmで飛んでいることになる。
フェニクスとナオミは出せるだけのスピードで追いつこうと頑張るが、手があと少しで届かない。
ナオミ「もっとスピードは出ないのっ!?」
フェニクス「コレが精一杯だ。」
一向に距離が縮まらず、ついに金色に光る大きな門が見えてきてしまった。
ナオミ「あれが「ヘブンズゲート」っ?」
フェニクス「おまえはすぐに自分の体に戻ったから、あの門を通らずに済んだが・・・、幽体離脱の時間が長すぎるとこんな事になる・・・。こうなれば、最後の手段だ。」
フェニクスはヘブンズゲートの反対方向を向いた。
ナオミ「ちょ、ちょっと、何する気っ!?」
フェニクス「しっかり?まっていろっ!」
そういうと、フェニクスは火炎放射をし、一気にスピードを上げた。
フェニクス「いいか、チャンスは一度きりだ。
失敗すれば、君と私は、君の弟と共にヘブンズゲートをくぐって、死んでしまう。」
ナオミ「分かったわ。」
ヘブンズゲートまで、あと残りわずかの距離しかない。
ナオミは気絶しているツクシの魂に必死に手を伸ばす。
そして・・・、
ナオミはツクシの魂をつかんだ。
ナオミ「やったわっ!」
フェニクスはヘブンズゲートをかすめ、上昇。
そして、降下し、祭壇の元へと戻る。
ナオミはツクシの魂をツクシの元の体に戻した。すると・・・。

ガバッ、
ナオミ「ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
ツクシ「気が付いた?」
ナオミ「ツクシ・・・。」
ナオミは何のためらいもなく、ツクシを抱きしめた。
・・・というよりは「抱きついた」が適切な言葉だろう。
ツクシ「ど、どうしたの姉さん。」
ナオミ「・・・へ?ツクシ、まさか何も覚えてないの?」
ツクシ「何言っているのさ、姉さん。
僕らは階段から転げ落ちた後、お互いに頭をぶつけて・・・、僕はすぐに起き上がったけど、姉さんはそのまま約半日気絶。お陰で今は朝の5時だよ。」
ナオミ「・・・もしかして、徹夜で・・・。」
ツクシ「死んだように眠っていたから心配しちゃったよ。」
ナオミの顔は真っ赤になっていた。
ナオミは「全て夢だった」と今頃気付いたらしい。


―「運命共同体」 THE・END―






おまけ

ナオミ「ねぇ、ツクシ。」
ツクシ「ん?姉さん、ジム所属試験はどうしたの?」
ナオミ「実はね・・・、ここに決めたの。」
ツクシ「ここって・・・、まさか僕の後釜っ!?」
ナオミ「そうよ。」
ツクシ「そんなバナナ〜っ!!
ナオミ「・・・何ちゃってね、ジョークよ。」
ツクシ「(冗談とは到底思えない発言なんですけど・・・。)」
ナオミ「あなたはね、私のタッグパートナーよ。」
ツクシ「え、そ、それってホウエン地方のジム所属ルールでしか許されていないんじゃぁ・・・?」
ナオミ「今年からね、このカントー・ジョウト地区のジム所属ルールが変更になって、新しくホウエン地方のジム所属ルールも加わったのよ。
    ということで、これからよろしくね。」
ということで、ツクシにも新しいタッグパートナーができた。
しかも、この2人のジムリーダーは、タッグバトルでのコンビネーションは、とても息の合った物となっていくのだった。





これで本当に、

―THE・END―










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