小説　僕たちイーブイキッズ　第２幕　第１０章「こん睡状態の続く中。」
―セントラルシティ港内のポケモンセンター―
ユージ「ハァ・・・。」
ユージは、深くため息をついた。
エリが雷に撃たれて、病院に運んで、治療してもらったのにも関わらず、唯一のアイデンティティーであった喋ることも出来なくなった・・・。
エリは一度、こん睡状態から回復したのに、またこん睡状態に逆戻り。
この４日間は、踏んだり蹴ったりの、散々な日々だった。
今も、外では未だにサイクロンが唸っている。
天候制御装置を修理し始めて、早や３日、未だにプログラムは暴走中。
景色が美しいはずのセントラルシティは、一気に、地獄と化した。
まるで、自然が人間に復讐しているみたいだ。
そして、この４日間の間に運ばれてきた患者の合計は、約５０人。
全員、サイクロンに飛ばされて、軽傷。あるいは重傷だった。また患者が、運ばれてきた。
Ｄｒテリー「患者は？」
医務班員「デドゥー・ガロビィレッジ、年齢３４。サイクロンで、１０ｍほど吹き飛ばされて、頭を打ちました。」
Ｄｒテリー「これは重傷だ。すぐにオペ（手術）の用意！」
患者を乗せた担架を医師がおして、廊下を移動する。
辺りは、患者や、避難してきた人々で溢れている。
その通り掛かりの廊下に、ジュンがいた。頭に包帯を巻いている。
その側に、スザクが寄ってきた。
スザク「今回に限って、何故か、手伝えないのよね・・・。」
ジュン「ユージにとっては、とてもツライし、助けたいけど・・・。」
ズキッ
ジュン「・・・痛っ。」
スザク「大丈夫？」
ジュン「なんとか大丈夫。」
スザク「ベッドで、寝た方がいいわ。」
ジュン「いいや、本当に大丈夫。」
スザク「そう・・・。」

―病院の地下１階―
ヒロユキ「サイコソーダ２つ。」
売店のおばさん「はいはい、これだね。」
アキラは、売店の横のベンチに腰掛ける。
売店のおばさん「お待ちどうさま。」

ゴクッゴクッ
アキラ「ハァ・・・。サイコソーダを飲んでいる感じがしない。」
ヒロユキ「全員で助け合わないといけないのに、何も出来ないなんて・・・。」
アキラ「あの雷の１発で、オレたちのつきは無くなったな。でも、まだマシなほうだ。」
ヒロユキ「生きていられること？」
アキラ「その通りだな。・・・でも、ユージのヤツは、ほぼ自殺懇願状態。
どうにもならないな。」
ヒロユキ「その気持ちは、よくわかるな。もしも、チロリが同じような事になったら、多分・・・、同じ立場にたたされるだろうな。」

ユージ「エリ、・・・５ヶ月前の事を覚えているかい？ほら、君とオレが、始めて出会った日だよ。・・・あの日から、全てが始まった。」
―５ヶ月前、キキョウシティのダウンタウンストリート―
５ヶ月前、夏休みが終わる１週間前、気温が２９度にも上がり、蒸し暑い天気になっていた。
ユージ「暑い。」
スザク「暑いなんて言ったら、余計に暑くなるわよ。涼しい所をイメージしないと。・・・先に行っているわね。」
ユージ「ＯＫ、後で行くから。」
ユージは、その途中で、*ジェブドファンタを買って、公園のベンチに座って飲んでいた。
（*作者のオリジナルジュース。かなり甘い。）
ジュースを飲み終えると、ユージは、道端にそのジュースの入っていた空き缶を置いて、道路に蹴った。そして、空き缶は転がり出すが、その途中で、車に潰された。ユージは歩き出した。
そして、あのシーンがやって来た。
ユージ「ふぁぁ・・・、退屈だな・・・。宿題はもうとっくに片付いているし、夏休みもそろそろ終わりだし・・・。旅に出ようかな・・・」
と、言っていた。
ユージが、歩道を歩いていると、目の前をイーブイが横切った。
第１幕　第１章を見ている人なら分かるはず。案の定、このイーブイがエリなのだ。
ユージ「おっ、イーブイか、・・・まっいいや。いけっ、モンスターボール。」
エリ「えっ？」
ガンッ
エリ「痛っ！」
ユージ「あれっ、おかしいな、ゲットできるはずなのに・・・。」
エリ「一体何？あんたは誰？」
ユージ「えっ、マ、マジ、イーブイがしゃべったー。」
エリ「もぅ、何よ。私には、［エリ］っていう。ちゃんとした名前があるの。」
ユージ「ゴ、ゴメン。家に来る？」
エリ「なぜあんたの家なんかに行かなくちゃいけないの？」
ユージ「オレの名前は、ユージ。君の頭にタンコブ作っちゃったからさ。」
エリ「へぇー、ユージって、けっこう気が利くわね。」
ユージ「それじゃ、肩の乗っかってくれ。しっかりつかまれ。」
エリ「なぜ？」
ユージ「スケボーじゃ、しっかりつかまっていないと道路に吹っ飛ぶから。」
エリ「ありがとう。」
ユージ「（全てはここから始まった。あれから５ヶ月間。・・・ほぼ半年間、旅をして来たことになる。だけど、こんなにツライ経験は、今まで有っただろうか・・・。）」

ユージ「エリーっ、エリーっ！！！」
エリ「・・・さよなら、ユージ。」
ユージ「待ってくれ、エリ！！」
ガバッ
ユージ「！！」
夢だった。この５日間、全く同じ夢を見ている。もう、ほぼ地獄だという事がわかるはず。
―５日目―
未だに、エリはこん睡状態からは脱していない。
ユージはがっかりしている。
昨日、ユージは徹夜で、今までの冒険してきたことを話していた。
なのに、まだ、目を覚まさない。ユージは、あの悪夢をよーく考えてみた。
そして、ユージは思った。
ユージ「（エリを失うかもしれない・・・。）」
・・・しかし、それから
―６時間後―
パチクリ
エリ「・・・？」
ユージは寝ている。
エリ「ブ・・イ・・・？・・・ブイ？ブブイブイ・・・。（ユー・・ジ？・・・あれ？何かだわ・・・。）」
コクリ、コクリ、ズテッ
ユージ「痛っ、・・・ん？」
ユージは、病院の廊下でスザクやアキラたちに話した。
ユージ「エリが、目を開けた！」
と、言った途端、全員で、病室に向かった。
その頃、５日間に渡って猛威を振るったサイクロンは、消え去っていた。
第２幕　完

しかし、彼らの冒険はまだ終わりではない。
ある森のイーブイ達　第１幕　第１章へ続く


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