第4話
             洗脳

 オレンジがマサラタウンを旅だったころ、レッドは上下左右、床も、壁も、天井も全て鏡だらけの部屋で眼を覚ました。
 どこを見てもそこに居るのは自分。紛れもない自分なのだが、違う。
 本物の自分は誰なのかわかっている。いま、ここに立っている彼自身だ。しかし、鏡に映っているのは自分ではない。では誰なのか。
 その答えもまた、自分であった。

「くそ、気がおかしくなりそうだ。」

 一度、思いっきり殴ってみたが鏡は割れなかった。
 かなり強固なつくりらしい。

 そのとき、天井と床に丸い穴があいた。どちらも中心にあいている。
 その穴から、机と振り子がでてきた。振り子はメトロノームのようなつくりだ。
 レッドは振り子に近づいていた。
 この振り子の一部分である針で鍵を開けられないかと考えたのだろう。

 しかし、それより先に振り子が一定のリズムで音をたてはじめた。
 レッドはその音が頭に響くのを感じ、必死で耳を押さえる。

「やめろ、やめろ、やめ……ロ、ヤメロ……。」

 ただ、必死に耳を押さえながらそう嘆いている。
 しかし、どんなに耳を押さえても音は頭に響いてくる。

(クソ、本当に気がおかしくなりそうだ……クッ!)

 ポケモンは全て敵に奪われた。
 レッドの意識は、もはや朦朧としている。

 そんな時、仲間の顔が頭に浮かんできた。

(グリーン……いつまでも無口でいやな奴だった。
 ブルー……神出鬼没でいつまでも怖い奴だったな。
 イエロー……やさしくて、いつまでも笑顔が耐えなかった。
 シルバー……グリーンと似て無口だけど、結構いい奴だったな。
 クリス……一番まともなやつだったなぁ、そういえば。)

 レッドの意識はもはや消えかけていた。
 しかし、最後に思い浮かべたのはある少年と自分の弟子の顔。

(ゴールド……お前だけは、絶対に生き延びろ。



 オレンジ……お前もだ。絶対に、生きて、くれ……。)

 全てが鏡でできた部屋のなか、レッドの意識は途絶えた。





「やれやれ、やっと気絶したか。」

 レッドが気絶した後、あの青年が中に入ってきた。
 そしてレッドを抱えると、部屋の外に出て行った。

 青年が訪れたのはおそらくこの組織のボスがいるであろう部屋。
 そこには、イスに座っている中高年が1人と、おそらく三十路すぎのおばさんが1人、そしてなんとも気障そうな少年が1人いた。

「ボス、レッドは鏡の部屋で気絶しておりましたので、連れてまいりました。」

 すると、ボスと呼ばれた中高年はイスから立ち上がると青年とレッドを交互に見た。
 そして、にやりと笑うと机の上においてあった喫煙パイプを手に取り、すう。

「ディン。こいつはお前のしたで働かせろ。
 ログ。お前は今からグリーンという奴を鏡の部屋に置きにいけ。後、それが終わったらシルバーという奴もお前がやるんだ。
 レナ。お前が担当するのはこのブルーという女とクリスタルという女だ。
 ディン、イエローはレッドと共にお前のしたで働かせてよい。」

 ディン、ログ、レナと呼ばれた3人は、ボスと思われる中高年の前にひざまずく。
 そして、それぞれ各自の担当の仕事にうつった。





 レッドは気絶した状態のまま、ディンの部屋に連れて行かれた。
 ディンは、気絶したレッドをどうしようかと思ったが、案の定、相手が先に起きてくれた。

「……お前は……確か……!」

 レッドは意識を完全に取り戻すと、ディンに殴りかかろうとした。
 しかし、ディンの一声でその攻撃は不発に終わる。

「止まれ。」

 瞬間、レッドの体は動かなくなった。
 どんなに力を込めても、びくともしない。

「いいか、お前は今から俺の部下だ。
 俺の言うことは何でも聞く。そして、俺に口出しはするな。
 後、ポケモンは返してやるからさっさとこの服に着替えろ。更衣室はあっちだ。」

 レッドはディンから服を受け取ると、すぐに部屋から出て行った。
 もちろん、これはレッドの意思によるものではない。
 レッドの体が勝手に動いているのだ。

 レッドは着替え終わると、ディンの部屋に戻った。

 ディンはそれを確認すると、立ち上がる。

「今からもっとも重要なことを言う。よく聞いておけ。」
「はい。」

 勝手に言葉が出た。
 レッドは意識していないのに、体が勝手に動き、勝手に喋っている。

「お前の命は、今から俺のものだ。」

 瞬間、レッドの瞳から、全ての光が消えうせた。

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