第20話
             退院

 オレンジは、アクアと鉢合わせしてしまった。
 ぶつかりそうになったが、何とか身を避けて激突を防ぐ。アクアは呆然と立ち尽くしていたが、オレンジは廊下に転んでしまった。

 そのとき、呆然としていたアクアが、突然険しい形相になる。

「ちょっと!あんたはまだ寝てなきゃいけないんでしょう!?
 何でこんな無茶してるのよ!」
「別にいいじゃねぇか!もう治ったんだし!」

 オレンジは叫びながら起き上がった。
 アクアは左手を腰に上げ、呆れている。

「はぁ、治ったって、何言ってるのよ。あんたはまだ安静に……。」

 アクアは、やっと状況が飲み込めたようだ。
 そう、今現在オレンジは立っている。しかも平然とだ。
 もちろん、苦しそうな顔はしてないし、我慢している様子もない。

「あんた、本当に治ったの?」
「当たり前だろ。だから立ってるんだよ。」

 オレンジは、石のことを話さなかった。
 そんなことを言えば、この研究好きな女から石を取り上げられるに決まっている。

 案の定、アクアは石の存在に気づかずに走り去っていった。

「……どうするよ?草陰。」

 しかし、草陰はボールの中で静かに眠っていた。
 オレンジは少し呆れると、病室に戻り、ベッドに座った。
 そして、リュックの中に赤い石をしまい、ベッドに寝転んだ。





 3時間後。
 病院の入り口に、オレンジは居た。
 リュックをからい、ボールを腰につけ、あくびをしている。

 医師の話によると、信じられない出来事だそうだ。それがたかが子供の物語に出てくる石のおかげだと知ったら、どれくらい飛び上がるだろう。
 そんな話、元から信じないに決まっているが。

「ふぁ〜あ……ん?」

 オレンジはふとある建物が眼に入った。
 そこの看板には、育てやと書いてある。

「育てや?」
「そうじゃ。」

 突然、後ろから声が聞こえた。
 驚いて後ろを向くと、そこには育てや夫婦が居た。オレンジの病室に来ていた老夫婦と同じである。

「まぁ、中に入ったらええ。
 渡したいものがあるんじゃ。」

 オレンジは断ったが、老夫婦がどうしてもと言うし、婆さんの方がささやかな脅しをかけてくるので家の中に入った。

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