第26話
              再戦

 オレンジは育てやで目を覚ました。
 あの後、オレンジは気を失ったようである。起きてすぐにそばにいた育てや夫婦から、そのことを聞かされた。

 オレンジは、あのことを話そうかと思ったが、やめておいた。
 もしそんなことが知れれば、この4の島は大パニックになる。敵が侵入しているのだから。
 しかも島の用心棒、カンナにも知られずに。

 オレンジは育てやの外に出た。
 そばには草陰と龍静がいる。あの赤眼のピチューは、オレンジの頭の上に乗っかっている。
 そういえば、ニックネームを考えてやらねばなるまい。

「赤眼だよな。それで最初に使った技は……雷。
 ……よし!お前は今から赤雷(せきらい)だ!よろしくな!」

 ピチュー、赤雷は元気に鳴いて返した。図鑑で調べたところ、勇敢な性格ではなく、腕白らしい。
 だとしたら、普段おとなしいポケモンがピンチになると性格が変わるというあれであろうか。

 しかし、腕白から勇敢になるなど、聞いたこともない。
 今度マサラに行く機会があったら、マサキに調べてもらわねばなるまい。

「さてと、そろそろ行くかな。」

 実を言うと今日は2の島行きのシーギャロップが出港する日だ。オレンジはこれでシバのもとに戻るつもりだ。
 オレンジは港に向かって歩き始めた。しかし、そこである人物に捕まる。

「オレンジ!私と勝負しなさい!」
「……やだね。」

 そう、アクアである。
 だが、オレンジはそれを一言で返し、そのまま港に向かおうとする。

「待ちなさい!トレーナーなら勝負は避けられないわよ!」
「解ったよ。だから、その音量を下げろ。」

 結局、勝負をする羽目になってしまった。これで2戦目である。

「で、勝負方法は?」
「そうねぇ、フルバトルでどう?」

 フルバトル。だが、これだとオレンジの方が1匹足りないので不利である。
 しかし、オレンジは欠伸をすると、手でOKのサインを作った。つまり、このアクアに有利な勝負を受けるというのである。

「……あんた、私をなめてる?」
「別に。それよか、やるなら早くやろうぜ。」

 オレンジはやっとやる気を出し、ポケモンをボールに戻した。もちろん、赤雷も戻そうと思ったが、赤雷はボールをはねのけ、オレンジの頭の上で楽しんでいる。

「……はぁ、解ったよ。だけど、万が一こいつらがやられたらお前に出てもらうからな。」

 赤雷はコクンと頷いた。
 オレンジはそれを見ると、アクアに向き直り、ボールを構える。

 しかし、アクアは予想外のところにいた。

「へぇ、赤眼のピチューとは珍しいわね。」
「! お、お前いつの間にそんなとこにいるんだよ!」

 そう、アクアはオレンジの目の前にいた。そして、背伸びをして赤雷を観察しているため、オレンジの目に入るのは、その発育した場所である。
 一生懸命隠してはいるものの、実際オレンジはかなり心臓の鼓動が早まっていた。

 観察を終え、やっとアクアが本来の場所に戻ってくれた。
 だが、さすがに研究者の娘なだけある。まだ赤雷に興味を持っているようだ。

「おい!赤雷に見とれるのはいいからさっさとやっぞ!」
「解ったわよ。」

 両者、ボールを構える。
 そして、同時にボールを投げた。

「龍静!行け!」
「ムームー!頼んだわよ!」

 オレンジのボールからは龍静が飛び出した。
 対するアクアのボールからは、豚みたいな鼻を持っている茶色いポケモン。ウリムーが飛び出した。どうやら、名前はムームーと言うらしい。

 明らかにオレンジの不利である。
 だが、草陰に変えたとしても不利である上、赤雷にするともっと不利だ。

「ムームー!粉雪!」

 ムームーから、粉雪が発射される。
 その攻撃はまっすぐ龍静に向かっていく。

「龍静!竜巻!」

 だが、龍静は竜巻を起こした。粉雪は、その竜巻に巻き込まれ、逆にムームーに向かっていく。
 ムームーが竜巻を何とか破ろうと、粉雪を続いて発射するが、その攻撃はむなしく竜巻に飲まれていく。

「龍静!破壊光線!」

 竜巻がもう少しでムームーに届くというところで、龍静は破壊光線を放った。
 破壊光線は竜巻を突き破り、ムームーに直撃した。

 ムームーは吹っ飛ばされ、目を回して倒れた。

「ムームー!
 …………ありがとう。戻って。」

 アクアはムームーを戻し、新たなボールを構えた。
 そして、そのボールを投げる。しかし、そのボールは海の方へと向かって飛んでいった。

「ラスラス!でてきて!」

 ボールからでたのは、1匹のラプラス。
 ラスラスと呼ばれたそのラプラスは、出てくるなり龍静に冷凍ビームを放った。

「! 龍静!龍の怒り!」

 龍静はとっさに龍の怒りを放ち、冷凍ビームと相殺させた。
 そして、相殺と共に起こった煙に隠れ、海に入る。

「ラスラス!全方向に吹雪!」
「龍静!海に潜れ!」

 ラスラスは煙の中、全ての方向に吹雪を放った。
 しかし、龍静は海に潜り、その攻撃を回避する。ただ、被害を受けたといえば……。

「アクア!寒いから攻撃やめさせ……ブエーックシュン!」
「そ、そうね……ラスラス!攻撃をやめて!」

 それと同時に、ラスラスの攻撃はやんだ。
 2人とも何とか無事だったようだ。

 オレンジは気を取り直し、龍静に指示を出す。

「龍静!空に昇って10万ボルト!」

 実はハクリューというポケモンは、人こそ乗せられないが、飛ぶことができる。
 龍静はその性質を利用し、空に飛び上がった。そして、空中で一瞬のうちに電気をため、その電気をラスラスに向かって放った。

 突然の出来事に、ラスラスは対応できず、目を回した。
 アクアはラスラスが海に沈む前に、ボールに戻す。

「さぁ、次の相手は「降参するわ。」

 オレンジと龍静が身構えたとき、アクアが降参を宣言した。

「へ?」
「だから、降参するって言ってるの。
 私も今から1の島に用があるから、シーギャロップに乗らないといけないのよ。そろそろ出港の時間だからね。それじゃ。」

 アクアはそういうと走っていってしまった。

 オレンジはしばらくポカーンとしていたが、すぐに自分も時間がないことに気づくと、港へ走っていった。
 龍静はいつの間にやらボールに入っている。

 ただ、オレンジは気づいていなかった。
 2の島行きのシーギャロップの出港時間。それが、1の島行きよりも早いこと。
 そして、ポケギアの時間がいつの間にか10分ずれていることに。

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