第29話
              炎の子

 ファイヤーの鋭い視線に、オレンジは顔をそらすことができなかった。
 そう、いうのならば蛇に睨まれた蛙のような状態だ。
 その状況は1分ほどで終わるが、オレンジにはそれ以上の時間がすぎたように思えた。

『……来たか。炎の子よ。』

 オレンジの体が、もう一度ビクッと震えた。
 ただでさえファイヤーに恐怖心を覚えているというのに、そのファイヤーが喋ったのだ。
 しかもその声がとてつもなく重い。オレンジはプレッシャーのようなものに押しつぶされそうになった。

『どうした? 炎の子。
 お主は、私に用があるのだろう。さぁ、言ってみよ。』

 オレンジは、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、何とか口を開く。

「俺はオレンジ。
 ファイヤー。俺はある人物にここへつれてこられた。この石とお前の関連性がわかると言われて。」

 オレンジが見せたのは、まさしく赤い石。
 気のせいかも知れないが、なんとなく石が輝いているように見える。

『そうだ。私とその石は、大いに関係がある。
 何しろ、その石は私の力を引き出してくれると同時に、私の力を取り込んでいるのだからな。』
「?
 それは、どういうことですか?」

 オレンジは意味が解らなかった。だからこそ、そうやって質問したのだが、ファイヤーはどこか呆れたような表情になる。

『それはな、つまりその石と私は、力をわけあっているのだよ。
 そして、石と私が同じ人間の支配化におかれたとき、その真の力を発揮する。』

 オレンジはどこから取り出したのか、メモ帳にメモしている。
 ファイヤーはそれに気づいているのか、気づいていないのか知らないが、話を続ける。

『そしてだ。石には、私にはできないことができる。
 その力を、持ち主となった人間に分け与えることができるのだ。』

 瞬間、オレンジはペンを落とした。
 思い出されるのは、病室で炎に包まれたこと。そしてディンのガラガラの骨ブーメランを自分を包み込んだ炎が防いだこと。
 あの時、オレンジは知らず知らずのうちに石の力を借りていたのだ。

『どうやら、石の力に心当たりがあるようだな。
 まぁいい。ところで、用件はそれだけか。炎の子よ。』
「いや、もう1つ聞きたいことがある。」

 オレンジは落ちたペンを拾いながら石をリュックに戻した。
 そして、顔をあげる。

「炎の子っていうのはどういうことだ?」
『なんだ。そんなことか。』

 ファイヤーは鼻で笑うと、説明を始めた。

『それはな、まさしくその通りだ。お主は炎の子。
 赤い石に選ばれ、私と会話ができることが炎の子である条件。お前は、それを見事にこなしているではないか。』

 オレンジはそれだけ聞くと納得したのかリュックを拾い、下山を始めた。
 そのとき、ファイヤーの声が響いた。

『それとだ。もし私の助けが必要になったとき、石を持って願え。
 そうすれば、私はいつでも現れる。それと、ジョウトという地方に行ったらエンテイというポケモンによろしく言っておいてくれ。』

 ファイヤーはそれだけいうと、溶岩の中に戻っていった。

「どうだった?」

 それみていたのか、見ていなかったのか知らないが、突然ニシキに話しかけられた。

「別に。ただ、関連性は解ったよ。ありがとな。」

 オレンジはそれだけいうと、もう一度下山を始めた。
 ニシキは一瞬おいていかれたが、「待ってくれよー!」と叫びながらオレンジを追いかけていった。

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