第30話
2度目の災難
空は青空。波も穏やか。
そんななか、オレンジはシーギャロップハイスピード4に乗り込んだ。
今から、2の島へ帰るのである。
「ニシキさん。ありがとな!
アクア!今度あったら、またバトルしようぜ!」
「解ってるわよ。今度は絶対私が勝つんだからね!」
オレンジの頭には赤雷が乗っている。
赤雷はオレンジを真似てか、アクアに手を振っている。アクアの方は、手をグーの形にして前に突き出している。
これではどっちが男でどっちが女なのかわかったものじゃない。
オレンジは、ゆっくりと灯火山の方を向いた。
そして、シーギャロップに乗り込んだ。
2の島へは、シーギャロップで10秒ほどだ。
その10秒間、何もする必要はない。というか、10秒では何もできないだろう。
そう、事前に計画でもしていなければ。
オレンジが船に乗り込んだのとちょうど同じ頃、エンジンルームに何者かが入っていった。
何者かは5秒ほどでエンジンルームを出、にやりと笑った。
『ただいまより、2の島行き、シーギャロップハイスピード4、出港します。』
出港の合図となる放送が聞こえ、シーギャロップが出港した。
残り10秒で2の島に着くわけだが、その10秒という時間を利用して何かする人、というかできる人は極めて少ない。
「♪〜〜〜♪〜〜〜」
オレンジは、適当に鼻歌を歌っていた。
適当に作ったため、決していいものとは言えない。
そのとき、大きな爆発音が鳴り、シーギャロップが停止した。
「! な、なんだ!!?」
オレンジは、とっさに甲板に出た。そして、周りを見回すと、一箇所だけ煙が出ている場所がある。
「赤雷、行くぞ!」
赤雷は、小さくなく。オレンジはそれと同時に走り出した。
オレンジが行き着いたのは、エンジンルーム。中は煙が立ち込めていて、とても息のできるものではなかった。
「くそ……草陰!」
オレンジは草陰を出した。草陰は、出てきた瞬間顔をしかめる。
が、すぐに何かを決心したような顔になると、背中の蕾からどんどん煙を吸い込み始めた。
毒をくらうのでは……という考えも出てくるが、フシギソウは毒タイプも兼ね備えているし、かつてレッドのフッシーは毒タイプも持っているゴースを吸い込んだ事がある。
草陰は煙を大体吸い込むと、一気に外に出した。
そうすることで、部屋の全貌が見える。
そこには、破壊されたエンジンの一部があった。
「……なるほど。誰かがエンジンをぶっ壊したんだな。
まぁ、船は沈む様子はないし、大丈夫だろ。無線を使えばじきに助けも来るだろうし。
…………それよりも、問題は――――――」
オレンジは、ゆっくりと後ろを向いた。
そして、赤雷に弱めの電気ショックを指示する。赤雷はそれを、何もない部分に放った。
「ッ!」
何かが、そこから出てきた。
全身黒尽くめであるが、どこか子供だ。そう、オレンジと同い年ぐらいであろうか。
「へぇ、本当だったんだ。
龍静がさ、ボールの中からそこに何か居るって訴えかけてたんだよね。
そしたら見事にビンゴ。……で、お前誰?」
「あのさ、それ、普通一番最初にくる質問じゃない?」
その子供は、ゆっくりと立ち上がる。
瞳は黄色く、髪は群青だ。だが、1つだけ気になることといえば……。
「お前、ちいせえな。」
「! うるさい!背の高さなんて関係ないだろ!」
結構背が低い。
しかも、どうやら背のことを言われると怒るようだ。
「まぁいいや、僕はログ。 ロスト団3大幹部の1人だよ。
ついでに言うと、アストロやフェイクに君を襲わせたのも僕。」
どうやら、今までの攻撃のうち、2つはコイツの指示らしい。
だが、アストロやフェイクというのはどういうことだろう。オレンジの知っている人の中に、アストロやフェイクといった人物はいない。
レッドとイエローはディンの指示に従って動くだろう。となると、考えられるのはグリーン、ブルー、シルバー、クリスのうちの2人。
そのとき、ログがまた話し出した。
「そういえば、君は知らないんだったね。アストロって言うのはもとのグリーン。フェイクって言うのはもとのシルバーのことだよ。」
そのとき、オレンジの中で何かがつながった。
あの時、クリスが言っていたもとの意味はこれだったのだ。
「なるほど。でも、グリーンさんへの指示は俺への攻撃じゃないんだろ?
本当はトキワシティで有能な人物を見つけ次第さらうことだったんだ。違うか?」
「ふ〜ん、噂どおり、鋭いんだね。でも……。」
ログが、モンスターボールからポケモンを出した。
でてくるなりなにやらパントマイムのようなものを始めた。バリヤードだ。
「バリヤード。また厄介なのがでてきたな。」
オレンジは、とりあえず草陰を戻して龍静を出した。
草陰では毒タイプが入っている分、不利である。
「龍静!竜の息吹!」
龍静の口から、緑色の竜がはかれた。
それはまっすぐバリヤードに向かっていく。だが……。
「! 消えた……?」
バリヤードが、突然消えた。
その瞬間、オレンジは自分が宙に浮いていることに気づく。
「んな……!」
「じゃあねぇ♪」
オレンジは、海に落ちた。龍静も無理矢理ボールに戻される。
だが、意識はあるので龍静を出そうとしたところ、ボールの開閉スイッチが壊されていることに気づいた。
(くそっ。いい加減に……してくれよ……。)
オレンジは、腰につけている空のボールを手にとった。これはポケモンがはいっていなかったためか、開閉スイッチは壊されていない。
オレンジはそのボールに、赤雷を戻した。
(あとは……俺が海面に上がれば……!)
オレンジが何とか海面まであがろうとしたとき、突然息が苦しくなった。
そのまま、大量に息を吐き、オレンジの意識は遠のいていった。
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