第32話
               爆炎

『で、なしてそんなとこにおんねや?』

 マサキから普通一番最初にくる質問が出された。
 オレンジは多少の嘘を混ぜながらも、今までのことを話す。ここでグリーンやレッドの話をしたら、まずマサキが色々と言い出すに違いない。「あのレッドがそんなことするはずあらへん!」とかいってきそうである。いや、確実に言ってくる。

『へぇ、まぁええわ。
 とにかく、そのロスト団っちゅう奴らに気をつけろってこっちゃろ?
 まぁ、マサラはいたって平穏やからなぁ。一応きぃつけとくわ。ほな、またな。』

 オレンジが別れの挨拶をする暇もなく、一方的に電話を切られた。
 ウツギ博士が多少呆れ、オレンジは深いため息をついた。
 頭の上で赤雷が眠りこんでいる。正直、かなり重い。

「オレンジ君。ついてきてもらえるかな。」
「は、はぁ。」

 ウツギが気を取り直し、オレンジを誘った。
 多分先ほどいっていたポケモンを渡すのだろう。オレンジにとっては、別にどうでもよかったが。

 ウツギはどんどん研究室の奥へと行く。一番奥の部屋には、テーブルに3つのモンスターボールがのせられていた。

「さ、この中から好きなポケモンを一匹選んでよ。」
「……本当にいいんですか? もらっちゃって?」
「いいんだよ。僕としても、こういう形でしかお詫びできないしね。」

 オレンジはそれ以上問わなかった。
 じっとボールを見つめている。一番左はワニノコ。真ん中はヒノアラシ。右はチコリータだ。
 
 オレンジとしては、ワニノコを選びたくなかった。先ほど噛まれた事も理由にはいっているし、それに、かまれるたびに赤雷の電撃をくらうのがいやだからである。
 チコリータは、草タイプである。だが、オレンジには草陰がいるので、草タイプは要らないだろう。

 オレンジは、真ん中のボールを手にとった。そういえば、草陰のボールも真ん中にあった。

「炎タイプのポケモン。ヒノアラシがいいんだね?」
「はい。いま、手持ちに炎タイプがいないので。」

 オレンジは手で後頭部をかいていた。そして、ボールからヒノアラシを出す。

「よろしくな。ヒノアラシ。」

 ヒノアラシは、1回鳴いた。
 オレンジはポケットから図鑑を出す。そして、ヒノアラシの情報を見る。

『ヒノアラシ ♂
 
 Lv5
 
 使える技:体当たり・鳴き声
 
 HP:21
 攻撃:11
 防御:9
 特攻:10
 特防:8
 素早さ:10
 
 特性:猛火
 
 タイプ:炎
 
 主:オレンジ
 
 がんばりやな性格。
 Lv5の時、ワカバタウンで出会った。』

 がんばりやな性格。それを見たとき、草陰、龍静、赤雷の性格を思い出した。
 草陰はのんき。龍静はおっとり。赤雷は腕白。今思えば、随分と個性的である。
 ヒノアラシはがんばりやな性格。まぁ、個性的といえば個性的だ。

「よしよし。お前のニックネームも決めないとな。」

 そういってオレンジは考え込む。
 しばらくたたないうちに、声に出して名前を呼んだ。

「うん、お前の名前は爆炎だ。
 おまえさ、まだ炎で攻撃できないだろ?だから、いつか大きな炎で攻撃にできるようにさ。
 がんばろうな?」

 ヒノアラシ、爆炎は大きく鳴いた。どうやら、名前が気に入ったようである。

 そのとき、研究所の扉が開き、車椅子に乗った老人が入ってきた。
 老人はどんどん近づいてくる。
 そして、オレンジの目の前で止まった。

「あなたが、オレンジさんですか?」
「はい、そうですが……?」

 老人は何故か、オレンジの名前を知っていた。
 そのとき、ウツギ博士が叫ぶ。どうやら、今の今まで気づいていなかったらしい。

「あ、あなたは……ヤナギさん!」

 ヤナギ。確か、マスク・オブ・アイスと呼ばれていた人物だ。
 つまり、オレンジの父や母の敵である。あの事件のあと、消息をくらませていたらしいが、なぜここに居るのだろうか。

「いかにも、私がヤナギだ。
 オレンジ君。私は、君と勝負がしたい。いいかね?」
「……はい。」

 もとチョウジジムリーダー、冬のヤナギとオレンジとの対戦が、今始まる。

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