第34話
覚醒
「オレンジ君!今度は本気で行かせてもらうよ!」
「望むところだ!」
ヤナギはモンスターボールを投げた。モンスターボールは弧を描くように飛んで行き、地面に当たる。
その瞬間、煙が巻きおこった。白い煙だが、視界が奪われることに間違いはない。
だが、ヤナギはそのチャンスでも攻撃を指示しなかった。煙が晴れるまで待っている。
煙が晴れたとき、そこには茶色い毛に覆われた、2本の牙を持つ、いのししのようなポケモンがいた。イノムーである。
「イノムー!粉雪!」
イノムーは前足を上げた。そして、思いっきり息を吐く。
その息に雪を少々のせ、粉雪として赤雷に放った。
赤雷はよけようとしてもがくが、下半身はまだ麻痺している。
「赤雷!」
オレンジは駆け出し、赤雷を掴んだ。そして、横に思いっきりスライディングする。
「赤雷!大丈夫か!?」
赤雷は目を開けた。
そして、1度頷く。その後、腕力だけでオレンジの腕から抜け出し、地面に立とうとする。が、やはり立つことができない。
赤雷が一生懸命立とうとしている時、後ろで大きな音がした。
振り向くと、そこにはオレンジが倒れている。そのとき、赤雷はあるものが目にはいった。
オレンジの右足が、あまり動いていないのだ。左足は立とうとしているものの、右足が全然動いていない。
赤雷は走って行こうとした。が、下半身はまだ動かない。
赤雷はオレンジを見た。オレンジは右足で跪いている状態だ。
オレンジは顔だけ振り向いた。そして、赤雷に微笑む。
赤雷は、涙が溢れてきた。きっと、自分よりもつらいはずなのに。ポケモンの技を生身の人間がくらったら、絶対につらいはずなのに。
それを我慢して、オレンジは笑っている。赤雷は、大きく鳴いた。そして、一生懸命下半身を動かし、オレンジに近づこうとする。
「赤雷!いいから、あのイノムーを倒すんだ!」
赤雷は、オレンジの声に怯んだ。
そして、オレンジの目を見る。オレンジの目は、まだ諦めていなかった。
オレンジは赤雷に足元を指差す。そこには、バトル場のラインがあった。勝負を始める際に、つけたものである。
「このまま、負けるわけにはいかねえんだ。そうだろ?赤雷。」
赤雷は、頷いた。
そして、多少動くようになってきた下半身を動かし、ヤナギを見る。その後、イノムーを見た。
そのときである。
オレンジの右足が、発火したと同時に、赤雷の右足も、発火した。
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