第38話
失踪
「しかし、大変なことになりましたね。ヤナギさん」
「えぇ、まさか、16の石の封印がとかれていたとは思わなかった。そればかりか、私達はそのうちの2人と知り合いだ。しかも、2人ともまだ子供と来ている」
そういうと、ヤナギは深いため息をついた。ウツギも、顔を俯かせる。ただでさえ大変な世の中だというのに、更なる厄介ごとがこの世界を襲っているのだ。もちろん、上手くその力を利用すれば平和に役立つだろうが、悪く使えば世界征服だってできてしまうかもしれない。
さらに困ったことに、石に封印されている悪魔は、自らが選んだ者をのっとることができる。そう、先程のオレンジのような状態だ。これは精神状態が不安定なものや、石の力に取り付かれてしまったものがなりやすい。オレンジは、両親が敵側にいるということで精神が不安定になっているのだ。
もちろん、それを抑える方法もある。それが、伝説のポケモンとリンクしているわけだ。例えば、赤い石は炎を操るわけだから、ファイヤー、エンテイ、そしてホウオウと深いつながりを持っている。そして、その3匹のどれかが近くにいるほど乗っ取られにくくなる。
だが、今回の場合、ホウオウはルギアと共に行方不明、さらにファイヤーはナナシマという遠い場所、その上エンテイだって何処にいるのかわからないと来ているのだ。乗っ取られやすいのは当然である。
「でも、あの様子だとトパーズ君はセレビィとほとんどの時間を共にしているようですね」
「あぁ、でなければ、彼はこの時間帯に来たときに我々を襲っていただろう」
そう、トパーズの場合は時間なのだ。時間をつかさどるポケモンは世界中探しても2匹しか存在しない。ジョウト地方のセレビィと、まだ見ぬ未知のポケモンがたくさん生息するシンオウ地方のポケモン、ディアルガだ。しかし、ディアルガは未知のポケモンである。その近くにいるとは考えにくい。そうなると、セレビィと共にいるとしか考えられないのである。
そして、乗っ取られる条件としては場所だけでなく、時間も関係するのだ。一日や二日ぐらいならセレビィやディアルガがいなくても問題はないだろう。だが、3年となるといなかったらどうにもならないのだ。その時間帯についた途端、体を乗っ取られる。
「だが、結局最後は彼らの精神力がものを言うのだ。我々が討論したところで、どうにもならん」
「そうですね」
そういうと、ヤナギとウツギは1つのドアを見た。あのドアの先に、赤い石の所有者がいるのだ。炎の子、そして、未来の紅蓮が。
ヤナギとウツギは顔を見合わせると、そのドアに近づいていった。そして、ゆっくりとドアを開ける。その後、部屋の光景をみて2人は絶句した。
「な、まさか……」
「……脱走?」
部屋の窓は開け放たれ、ベッドは空だった。荷物もない。
そう、オレンジは、研究所から抜け出したのだ。
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