第39話
『俊足』
「……これで、いいんだよな」
オレンジが、呟いた。見つめる先にあるのはワカバタウン。思い出されるのは、次々とくるロスト団の姿。あのままあそこにいれば、絶対に被害が及ぶ。
それに、先程ヤナギとウツギが話していたことも盗み聞きしてしまった。それを聞き、さらにあそこにいてはいけない気がしたのだ。
「……いくぞ、赤雷」
オレンジに促され、赤雷がオレンジの頭にのる。いい加減やめてほしいのだが、しょうがない。
オレンジは、その道をどんどん進んでいく。次の町はヨシノシティ。だが、できることならその町も通り越して行きたい。
「俺の所為で、たくさんの人間が迷惑するんだ」
オレンジらしくない、そんな言葉だった。赤雷も黙っている。そのまま、何を気にすることもなく、道を歩いていく。
そのうち、ヨシノシティに着いた。だが、オレンジは次の道への最短ルートを進んでいく。この町に、迷惑をかけるわけには行かなかったのだ。だが、そんな願いがかなうはずもない。なぜなら、このジョウトはロスト団が最も活発的に動いている地方だからである。
「ちょっとお待ち、そこの……少年」
瞬間、オレンジは立ち止まった。ボールの中で、龍静と草陰、そして爆炎が警戒心をむき出しにしている。赤雷も、オレンジの頭から下り、声の主と対峙した。
声の主は、1人の女性だった。見た目からして三十路過ぎ。瞳は紫色で、髪は茶髪交じりの黒いショートカット。そして、姿は黒尽くめというよりも少し紫がかった黒い服だ。右肩には、Lの文字がある。
「……ロスト団……!」
「あら?知っていたの?」
その女性は、少しだけ微笑んだ。瞬間、オレンジは悪寒を覚える。この女性、かなり危険だ。まるで、どんなことでも簡単にしでかしてしまいそうな笑み。
それを見た瞬間、オレンジは赤雷をつれて走り出した。いま戦ったら、ヨシノシティに迷惑をかけることになる。どうせ戦うなら、この先の道路で戦った方がいい。
「あら?どこに行くの?」
その女性は、いつの間にかオレンジの前にいた。確かに、さっきは後ろにいたのに……。
オレンジはすぐに振り向き、走り出す。だが、あっという間に女性はオレンジの前に現れる。そう、まるで瞬間移動、テレポートでもつかったかのように。
「無駄よ。私から逃げるのは不可能」
「くそっ!」
オレンジはボールを構えた。相手の女性も、それに応じるかのようにボールを構える。そして、一斉に投げた。
「爆炎!いけぇ!」
「クロバット、いきなさい!」
ボールから飛び出ると同時に、2匹のポケモンは対峙する。一方は背中から炎を出す小さなポケモン。もう一方は、4枚の羽をもつ紫色のポケモンだった。
「爆炎!たいあ……」
「クロバット!翼で打つ!」
瞬間、爆炎は後ろに飛ばされていた。物凄い威力で、眼にもとまらぬ速さで。
「ふふ、私はロスト団3大幹部、俊足のレナ。私の速さにかなう者は存在しないわ!」
「ちっ……」
オレンジが小さく舌打ちした。そして、後ろにいる爆炎に手で指示を出す。それと同時に、赤雷を前に出した。
「赤雷!10万ボルト!」
「クロバット!高速移動!そして影分身!」
赤雷から強力な電流が放たれると同時に、クロバットはめまぐるしい速さで移動を始めた。そして、10万ボルトが当たると思われた瞬間に影分身で攻撃を避ける。
「くそっ!」
「クロバット!とどめの破壊光線!」
クロバットの口に黄色い球体が現れ、どんどん大きくなっていく。破壊光線の前触れだ。
「爆炎!今だ!」
オレンジの声に応じるかのごとく、爆炎はあたり一面に煙幕を撒き散らした。そう、相手の視界を奪うのだ。
「赤雷!爆炎!いくぞ!」
オレンジは、爆炎をボールに戻し、赤雷を担ぐと、一目散に駆け出した。ヨシノシティの北、キキョウシティに向かう道に向かって。
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