第40話
ゴロウ
「くっ……」
オレンジは、落ち込んでいた。普段落ち込むということがあまりにも少なく、その前例もあまりみたことがないが、いくらなんでもこの落ち込みようは酷すぎる。
足元では、爆炎と赤雷が心配していた。たまにズボンのすそを引っ張って出発を促してみるが、全く反応しない。これには、2匹とも困ってしまった。
「くそっ……俺が、弱いから……」
完全に自虐モードにはいっている。人間というものはこうなるとなかなか回復しない。それは、オレンジにもいえることであった。
赤雷と爆炎も顔を俯かせる。ボールの中では草陰と龍静も顔を俯かせていた。
その時である。オレンジは、不意に声をかけられた。
「あれ?こんなところで何してるんだ?」
「! べ、別にっ!何でも無い!」
オレンジはそういうと、相手の顔も見ずにその場を立ち去った。赤雷と爆炎がその後ろを追いかける。その姿は、どこかさびしげにも見えた。
オレンジに不意に声をかけたのは、明らかに三十路を過ぎたおじさんだった。栗色の瞳に黒い髪。茶色いジャケットとジーンズをはいている。そして、その顔にはかつての面影があった。
「……どこかでみたような……」
そのおじさんは、その後10分ほど頭を抱えた後、思い出した。そう、誰かに似ていると思ったら、レッドに似ているのだ。
服装を真似ている人物は今までにもたくさん見てきたが、あそこまで似ている人物ははじめてである。
そのおじさん、ゴロウは1人あわてると、急いでオレンジを追いかけていった。
その頃オレンジは、バトルを挑まれていた。相手はLと書かれてある団員服を着ている。そう、ロスト団だ。服装に書かれているLは右肩についているものも居れば、左肩についているものもいた。だが、このロスト団は手袋についている。
「くそっ、よりによってこんなときに……」
「どうした?ビビったのか?」
その言葉に、オレンジはカチンときた。どうやら、先程までの元気の無さは吹き飛んだようだ。
そして、爆炎のボールを構える。それに応じるかのように、相手のロスト団もボールを構えた。戦闘開始である。
「行け!爆炎!」
「サンド!ぶちのめせぇ!」
爆炎はボールから出るとともに高く鳴いた。そして、もともと細い目をさらに細くして、相手のサンドを睨みつける。
サンドはそれに臆することなく、睨み返した。そのまま、トレーナーの指示が出るまでにらみ合いは続く。
先に動いたのは、ロスト団のほうだった。
「サンド!丸くなる!」
サンドはその声と共に丸くなった。もともと、体は丸くなる体質なので、簡単に丸まってしまう。
だが、その隙を狙ってオレンジが攻撃した。
「爆炎!体当たり!」
爆炎はサンドに向かって走っていく。サンドは防御力を高めるために今だ丸くなっていた。
もう少しで爆炎の攻撃が当たる。そう思われた瞬間だった。ロスト団の男がにやりと笑う。
「かかったな!サンド!転がれ!」
すると、サンドはそのまま転がり始めた。まるで、その場でずっと転がっていたのかのような威力で。
もちろん、爆炎がこれに当たったら無事では済まされないだろう。
「くそ!爆炎!避けろ!」
オレンジの指示を受けて、爆炎があわててその攻撃を避けようと体勢を立て直す。だが、その時間が無駄だった。
爆炎はサンドの攻撃に当たる。その威力から、爆炎は吹っ飛ばされた。そして、その飛んで行く先には……木があった。
「! 爆炎!」
「ラッタ!あのヒノアラシを助けろ!」
そんな声がどこかからした。その瞬間、オレンジの横を橙色の何かが通り過ぎ、爆炎をキャッチする。
オレンジは、声のしたほうを見た。そこに居たのは、先程オレンジに不意に声をかけたおじさん。即ち、ゴロウであった。
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