第43話
夢
今は夕刻過ぎ。時間的には大体6時ぐらいだろうか……。
ここはヨシノシティの郊外にあるゴロウの家。1人暮らしの男性には珍しく、家の中はきちんと片付いている。
そして、オレンジはゴロウの部屋にあるベッドに寝かされていた。ゴロウはリビングでデルビルとぺラップの世話をしている。
そばにある机の上にはオレンジのポケモンが入ったボールが4つ。そしてリュックと帽子が置かれてある。
カーテンも閉められ、全てが暗闇に帰している部屋の中、ただ1つ不自然な輝きがあった。
リュックから発せられる赤い輝き。いや、正確にいうとリュックの中にある赤い石から発せられているのだ。
その輝きに呼応するかのように、赤雷の体も輝いていた。赤雷は疲れているのか、すやすやと眠っている。
だが、草陰や龍静、爆炎などのポケモンはその輝きに驚いていた。ポケモンたちはあらかじめゴロウが回復していたため、爆炎に疲れは残っていない。
ただ、おきている3匹のポケモン全てが呆然としていた。
赤い石に呼応し、輝いたのは赤雷だけではない。
オレンジからも、微量ながら赤い輝きが放たれていた。
そして、舞台はオレンジが見ている夢へと移ってゆく……。
「…………何処だ?ここ」
オレンジが目を覚ましたのは全てが白い世界だった。上下左右前後、何処を向いても白い色ばかり。
そんな中、存在する自分。自分だけが色付きというのはなんだかおかしなものもあったが、オレンジは立ち上がった。
どうやら天井はもっと高いところに存在するらしい。いや、もしかしたら天井なんて存在しないのかも知れないが。
オレンジはグッと背伸びをした。そして、もう1度あたりを見回す。
と、突然耳にある音が聞こえてきた。バチバチと電撃が飛び交い、ゴォオォォォと炎が燃えているようである。そして、たまに人の声も聞こえた。
「バトル……か?」
誰に問うているのかわからないが、オレンジは音のする方向へと駆けていく。どんどん大きくなる、人の声。
電撃や炎の他に格闘戦も行われているようだ。たまに、何かと何かぶつかり合う音も聞こえてくる。
そして、その激戦が行われている場所が見える位置までオレンジはやってきた。
そこで行われていたのはオレンジの思考回路を一時的にストップさせる。
「あぁ?ざけんじゃねぇよ!人の家に勝手に入っておきながら!」
「お前こそふざけるんじゃない!いい加減にこの子から離れろ!この子はお前のことなんて面倒見ているほど暇じゃあないんだ!」
最初に喋ったのはオレンジ。そして次に喋ったのもオレンジだった。
いや、正確にいえばオレンジの格好をした誰か。最初に喋った方は紅の瞳と髪。次に喋った方はオレンジと見分けがつきにくかったが、髪の毛は黄色かった。帽子に隠れて見えにくかったのだ。
「なんだ……!」
2人が使っているのは全く同じポケモンだった。
ピチュー、ハクリュー、フシギソウ、ヒノアラシ。自分の手持ちと全く同じ。そしてピチューの瞳は赤かった。
全てが全て、同じ動きをしている。片方のハクリューが叩きつけるを発動すればもう片方もそれで迎えうる。
フシギソウが葉っぱカッターを繰り出せばもう片方のフシギソウも葉っぱカッターで応戦。
そんな同じ技の打ち合い。そして、唯一違うのは紅い髪のオレンジと黄色い髪のオレンジの口論のみ。
ただ、そんな2人の口論はなんだか食い違っていた。黄色い髪の方はあの子から離れろと繰り返し、紅い髪の方は否定しつつ、自分の家から出て行けと怒鳴る。
その光景は、あまりにも異様だった。オレンジは思わず身震いし、目の前で行われている戦いから目が放せなかった。
と、その時である。紅い髪のオレンジがこちらを見た。そして、ニヤリと笑う。
「どうやら……体の持ち主が来たみてぇだぜぇ?」
「!!」
黄色い髪のオレンジはその言葉に驚き、そして紅い髪のオレンジと同様にこちらを見る。そして、目が大きく見開かれた。
その後、すぐに叫ぶ。
「君はここにきてはならない!早く立ち去るんだ!」
「ははっ、無駄だっていうことはお前が一番知ってるだろう?イザナギさんよぉ」
イザナギと呼ばれた黄色い髪の男は動揺する。
「くっ……クリムゾン……」
クリムゾン。確かグレンのジムバッジがそんな名前だったはずだ。
オレンジはそんなことを考えながらも、そこに居るイザナギとクリムゾンの2人を凝視した。
一体、誰なのだろう?そして、ここは何処なのだろう?
そんな疑問が、オレンジの頭の中にこだましていた。
「それにだ。こいつが今ここにいんのも、俺が幾度と無く守ってきてやったおかげだろぉ?第一お前だって一度はこいつの体使ってるんだ。何かいえる身分じゃないだろ?」
「だが、あの町ではなぜ力を暴走させた!?その所為で人が2人、犠牲になるところだったんだぞ!?」
あの町……ワカバタウンだろうか。
思えば、あの町を飛び出した理由の託となったのはあの焼け野原を見たからだった。そしてさらにはウツギたちの話まで聞いてしまい、逃げるように飛び出したのだ。
あの焼け野原は……ロスト団などではなく、自らがやったことだったのか……。
オレンジは衝撃を受けた。まさか……自分がそんな事をしていただなんて……これじゃロスト団と同類ではないか。
そんな思いが、オレンジの頭の中を支配していった。
「おいおい、ありゃあの爺さんが悪いんだよ。大体、とどめさされそうになったんだ。ちったぁ感謝してもらいたいくらいだね」
「何を言っている!あれはポケモンバトルだぞ!?それに君はトレーナー同士の公平なバトルに水を指すようなことをしたんだ!許されることではない!」
「ハハっ、何綺麗事いってやがる!てめぇだってそのポケモンバトルに水を差しただろうがよ!それに、そのときのてめぇの顔……ずいぶんと楽しそうだったぜぇ?」
クリムゾンがにやりと笑った。イザナギはそれに一瞬顔をこわばらせる。
「おい、ちょっと待てよ!おまえらが2人で言い争うのはかまわねぇけどな!いったいここがどこなのか、どうなってんのか教えてくんねぇ?」
オレンジが仲裁ともいうべき行動を通り過ぎ、少し怒っている様子で聞く。
イザナギとクリムゾンの2人は一瞬顔をきょとんとさせる。が、クリムゾンはすぐに右手を顔にあてて笑い出した。
「ハッハァッ!ここがどこかだってぇ?
てめぇの夢の中だよ!炎の子!!」
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