第44話
         マサラ・ワカバ急襲


「!! うわっ!?」




 オレンジは跳ね起きた。周りを見ると、そこは清潔感あふれる部屋で、オレンジはその部屋のベッドに寝かされているのだと気づく。
 そして、ベッドのすぐそばにある物置台に自分の荷物が置いてあるのにも気づいた。それを取ろうとして、オレンジは始めて自分が汗だくなのに気づく。


「……夢……だったのか?」



 鮮明に思い出せるその“夢”の内容。おそらく、一生忘れることなどできないだろう。
 オレンジが考え込んでいると、キィィ……と音がなってベッドの目の前にあるドアが開いた。オレンジが目を向けると、そこにはゴロウが居た。

「眼が覚めたのか……いい夢は見てなかったみたいだけどな」

 ゴロウはそういって笑って見せた。オレンジも苦笑いでそれに返すと、ボールと荷物を手に取り、ベッドから降りた。その際、いつの間にか口が開いていたリュックから赤い石がこぼれる。


 オレンジはそれを取ろうと身をかがめたが、同時にあることに気づいた。





(前よりも……赤くなってる?)



 そんな気がした。




「どうした?その石がどうかしたのか?」
「いや……なんでもないです」



 オレンジはそういうと赤い石をリュックに入れ、ゴロウに促されるまま隣の部屋へと移った。と、オレンジは此処で思いがけない洗礼を受けることとなる。



『モットハヤクオキロ!ネボスケ!』



 そういいながらオレンジの顔に飛びつき、離れようとしないポケモン。
 ぺラップである。


「!? ちょっ、ゴロウさん!?」
「はは、大丈夫だよ。デルビルの方はドーピングが酷すぎてまだ完全じゃないけど、ぺラップは普通のポケモン同様さ」



 それにしては痛い洗礼である。オレンジは一瞬ウツギ博士のところに居るワニノコを思い出し、また苦笑いしてしまった。









 同時刻 マサラタウン








「ななな、なんやねんお前ら!突然上がりこんで図々しい上に他人の研究用具壊すなや!」

 ジョウト弁でそう喋るこの人物、いわずと知れたマサキである。
 そして、マサキが留守を預かる研究所は今、黒尽くめの所々にLと書かれた服を着ている集団に襲われていた。



 ロスト団である。マサキもそのLという文字を見るや否や、オレンジの言葉を思い出してポケットに入れておいたカモネギのボールを手に取った。



「あんたら、ロスト団とかいう連中やな?わいに何の用や?」

「フッ、知っているのなら話が早い」

 おそらくこの中でもリーダー格であろうその男が答えた。逆光で顔は見難く、誰かわからない。


「有名なポケモン評論家であるとともに研究家、そしてコレクターである曽根崎 真幸(そねざき まさき)。俺達は、そのアンタに用があるんだ。なぁに、お前以外には手を出さないさ」


 マサキは冷汗を流しながらボールをさらに強く握った。大丈夫、こちらには頼れるポケモンが4匹いる。上手く行けば、何とか切り抜けることができる。


 そんな考えがマサキにはあった。それで無くとも、こんな奴らについていく気など、マサキには毛頭ない。


「さすがポケモンのことに詳しいだけある。まだ切り抜けられるって思ってるみたいだな、マサキ」




 此処で初めて気づいた。この声……聞き覚えがある。
 だが、マサキはそれを必死に否定した。そんなはずが無い、アイツが、純粋でポケモンのことばかり考えているような正義感たっぷりのアイツが、こんなことしているはずが無い。



「……もう気づいてんだろ?それとも、自分の考えを否定するのはなれないのかよ?マサキ」
「そんな馴れ馴れしくよぶなぁ!」


 マサキは怒鳴った。そして、カモネギの入ったボールを投げ、目の前の男に勝負を挑む。


「あ〜ぁ、無茶するねぇ」




 男が静かにボールを投げると、中から左耳にキズのついたピカチュウが出てきた。



 間違いない……ピカだ




「カモネギ!きにせんでえぇ!自慢の長ネギで、切り裂くんや!」


「ピカ、時間が無いんだ、一発で決めろ」



 カモネギがどんどん近づいてくる。おそらく、間合いにはいったら即座に切り裂く気だろう。


「電気ショック」



 電気タイプの攻撃で最弱の技。マサキは一瞬ふざけているのかと思った。


 だが、考えてみれば当たり前なのだ。自分とアイツ。




 マサキとレッドの実力を比べてみれば。





「カモネギ……!」

 カモネギが倒れていく中、マサキは腹に強い拳を受けた。そして、仰向けに倒れ、意識が薄らいでゆく中、弱弱しい声で呟いた。






「レッド……なんでなんや……」










 同時刻 ワカバタウン




「くっ、マッスグマ、切り裂いて!オオタチは叩きつけるんだ!」


「無駄だといってるでしょう?」




 ウツギも同じく急襲を受けていた。しかも今度は相手の顔がはっきりとわかる。
 その上……たった一人だ。



「クリスタル……くん」



 そう、クリスである。ウツギがオオタチとマッスグマを使っている中、クリスはたった1匹しか使っていなかった。



 小さな紫色の体。金色の髪。そして首から下げられた星のネックレス。ムチュールである。




「ムーぴょん、粉雪」


 クリスがはじめて出した指示だった。ムーぴょんはそれを誠実に再現する。
 2体相手に、粉雪。その数は極少量。いや、たったの2粒だった。



 そして、その2粒がそれぞれ1粒ずつ、オオタチとマッスグマに当たる。







 その瞬間、2匹は崩れ落ちた。



「一緒に来てもらいますよ?ウツギ博士」





 反論しようと口を開いた。が、そこで突然後ろから殴られ、ウツギは気絶する。



「……連れて行くぞ」
「えぇ」


 その正体は……シルバーだった。









 こうして、2人の若き天才はロスト団の手におちたのであった。






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